Episode2 - T
■レラ
--紫煙駆動都市エデン・中央区
右上に浮かんだその文字と共に、新たに視界の中の世界が構築されていく。
緑色の葉を付けた木々に、遠目に見える煉瓦等で建てられた建物類。
それに加え、様々な場所から立ち昇る白い煙。
私の目の前には1つの大きな門が存在し、その近くには多くの人が集っていた。
【クエストスタート:『エデンを探索してみよう』、『マイスペースを確認しよう』】
【メインクエストが追加されました。オプションからご確認ください】
「おっと、何やら追加されたようだねぇ」
システムの案内に従い、それらを確認してみると。
本当にただただ散策系のメインクエストが追加されたらしく、これをクリアする事で色々なコンテンツにアクセス可能となるらしい。
一応クリアしなくともスキップ自体は出来るらしいが……良い機会だ。
……この都市に何があるのか知っておいた方が後で迷わないだろうしね。
「さて、それじゃあいっちょ散策に行きますか」
最初の行き先は何となくで決めた方向に。
私は鼻歌を歌いながら歩き出した。
--紫煙駆動都市エデン・管理区
最初に訪れたのは、管理区と呼ばれる区画だ。
この都市には、私が最初に降り立った中央区を含め計5つの区画が存在しているらしく。
その中でもこの管理区は、都市内の管理や整備を行っている区画……らしい。
「うーん、見事に警官っぽいNPCが沢山だ」
プレイヤーの姿は少なく、その代わりにパトロールをしているであろう警官の姿をしたNPCをちょくちょく見かける。
それ以外にも、役所らしき建物や本のマークが描かれた巨大な建物などを発見することが出来る。
「あんまりここにはお世話になりたくは無い、かなぁ。次に行こう」
--紫煙駆動都市エデン・娯楽区
次に私が辿り着いたのは、娯楽区と呼ばれる区画だ。
サーカス団や路上ライブ、それ以外にも映画館のような建物や遊園地らしきものも存在しているのが確認出来た。
……紫煙
移動中、ゲーム内ブラウザを使いこのエデンという都市について調べた所、分かった事が数個ある。
このエデンという都市は
某映画に出てくる移動式の屋敷のように、この都市の何処かに心臓部が存在し、それを動かす事で地上を移動し続けているらしいのだ。
この都市の住民であるNPCは、通常地上へと降りる事が叶わない。
都市ごと移動し続けなければならないほどに地上が危険であるが故に。
「難儀なモノだねぇ」
だからこそ、こういった息抜き用の娯楽が提供される区画が必要なのだろう。
プレイヤーが訪れるかどうかは兎も角として、設定として考えるのであれば当然だ。
この都市にある残りの2区画……治世区、そして生産区もそれに準じたもの。
……ま、関わりが深くなるのは生産区になるのかな。私の場合。
そんな事を考えつつ、私は次の区画へと向け歩き出した。
--紫煙駆動都市エデン・治世区
管理区とは違うものの、ここも都市の管理を行う区画……らしい。
らしいと言うのも、区画に入る前で門前払いを受けてしまったからだ。
「すいません、権限が無い方は通すわけにはいかないのです」
「それは仕方ないね……ちなみに何をする区画かだけ聞いてもいいかな?」
「えぇ、それくらいでしたら。……この先の治世区は、このエデン上の政治を行う区画なのです。その為、多くの行政関係者が仕事をしている関係上……」
「何かあったら困るから通せない。道理だね」
現状押し入る意味も無く、それを行った時のデメリットを考えると潔く退散した方が良いだろう。
そう考えた私は、対応してくれたNPCに礼を言った後に最後の区画……生産区へと向かった。
--紫煙駆動都市エデン・生産区
「成程、ここは想像通りな区画だ」
様々な商店などが立ち並び、今までに訪れた区画の中でも活気に溢れる区画だった。
薬草のようなものを売ってる店から、よく分からない薬品を売っている店。
それ以外にも、金物を売っている店や鍛冶場のような所まで存在している。
「奥に行けば……というよりは、都市外周に近付くと畑だなんだが見えてくる。リスク的には良いのか悪いのか……って感じだね」
……ただ、金物や鍛冶場があるって事は、どっかから鉱石を仕入れてるはず……どこからだろう。
山のようなものは見えないし、都市自体が移動している為に坑道のようなものも存在しない。
そんな中、金属類を扱えると言う事は……何かしら仕入れる方法が存在するのだろう。
「ま、考えても情報が少なすぎるかな」
そこら辺を今考えても仕方がない、というか。
私はこのゲームのストーリーの部分を考察する為にプレイしているわけではないのだ。
あくまでフレーバー程度に知っておくことにしよう。
【『エデンを探索しよう』をクリアしました】
【クリア報酬をインベントリへ付与しました】
「っと、これでクリアか。後はマイスペースとかいうのだけど……それより先に」
私は身体を中央区の方へと向ける。
ここまではあくまで、拠点となる都市を確かめていただけ。
本番はここからだ。
--紫煙駆動都市エデン・中央区
中央区に存在する、巨大な門。
そこには今だに多くのプレイヤー達が集まっていた。
それもそのはずだ。その門にはある役割が存在しているのだから。
「各区画からアクセスしやすいのは助かるねぇ」
中央区にしか存在しないこの門は、所謂転移を行う事が可能なモノ……らしい。
だが、都市の住民はこの門を基本的には使用しない。
「本当にここからダンジョンに行けるのかな」
ダンジョン。
このゲームにおけるモンスターと戦闘を行う為の場所であり、プレイヤー達が最奥を目指す場所。
公式サイトには、最奥に辿り着く事で願いが叶うだとか、この世が平和になるだとか書かれていたものの……とりあえず。
……潜ってみようか、事前情報はゼロに等しいけどね。
武器は貰った紫煙外装と、この
回復アイテムは持っていないが……ファーストアタック、それも小手調べ程度なのだ。あまりガチガチにしても仕方ない。
「よし、善は急げだ」
門へと近付くと、目の前に半透明のウィンドウが出現する。
【注意:この先はダンジョンとなっています】
【モードを選択してください】
「モード……?あぁ、これPvEかPvPvEかの選択か」
とりあえずPvEモードを選択すると、目の前の巨大な門に白いゲートのようなものが出現した。
……周りが反応してないって事は、これ私にしか見えてないのか。
少しだけ深呼吸をした後、私はそのゲートの中へと足を進めた。
--【世界屈折空間】
【【世界屈折空間】へと侵入しました:プレイヤー数1】
【ミニマップが更新されました】
「よし、到着。……到着でいいんだよね?」
ゲートを抜けた先、私が辿り着いたのは……先程とほぼ同じ空間だった。
というのも、出た場所はエデンの中央区とほぼ同じ様相をした場所であった為だ。
「空が赤い……異空間的な場所?にしては敵モブが見当たらないけど……セーフティエリアかな?」
周囲を見渡してみると、私が居たエデンとは多少の違いがあるのが分かった。
まず1つ目の違いとして、中央区以外の区画へとアクセスできない事。
他の区画は目視出来ているのだが、そちらへと向かおうとすると透明な壁が行手を阻むのだ。
そして2つ目の違い。
それは、
「ここにも門があるのか……しかも4つも」
初見の門が4つ存在しているのだ。
それぞれの門は中央区に存在している門よりも小さく、ゲートも既に開いた状態にあった。
しかしながら、門によってゲートの色が違っている。
「えっと……この門は……『【墓荒らしの愛した都市】の門』。成程?」
その内の1つ、赤いゲートの開いている門に近づいてみると、その名称が表示された。
気になって他の……青、緑、黄のゲートが開いている門へと近づいてみると。
青は【峡谷の追跡者】。
緑は【四道化の地下室】。
黄は【霧燃ゆる夜塔】という、別々の名前がついている事が分かった。
「状況だけで考えるに……ここは、それぞれのダンジョンへと繋がる中間エリアとかそういう所なんだろうなぁ」
こればかりはきちんと下調べしていなかった私が悪い。
過ぎた事を悔やんでも仕方ない為、どのダンジョンに挑むか少しだけ考え……私は最初に確認した【墓荒らしの愛した都市】へと挑んでみる事にした。
他のダンジョンも気になるが、別に今挑まねば消えてしまうというわけでもないだろう。
「よし、今度こそダンジョン攻略へ!」
――――――――――
プレイヤー:レラ
・紫煙外装
『外装一式 - 器型一種』
・所有スキル
【煙草製作】
・装備
布の服・上、布の服・下
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