第二部「凪宮きょうだい」

 学生の本分が『勉強』だというのなら、その休養として『休日』があることが学生にとっての幸せなひと時と云えるだろう。

 もちろんそれには僕も同意だ。

 勉強が嫌いというわけではないが、それでも疲労が溜まるのが人間というもの――そしてそれに休養を求めるのもまた道理だ。


 僕が通っている雅ヶ丘みやびがおか高等学校は、いわゆる進学校というやつらしく偏差値も60付近とそこそこ高い。

 更に言えばこの学校は、勉強に対しての教育理念が優先されている。

 まぁ普通の学校よりもレベルが高いというやつだ。……気になることがあるとすれば、私立校なために学費が高いことぐらいだろうか。


 しかしそんな心配も、あの過保護な親のお陰であっさりと解消されてしまった。

 そのお陰で現に僕は、公立ではなく私立に通わせてもらっている。本当、感謝するほかないな。


 そして今日は、貴重な休みの日。

 のんびりと過ごし、快適に過ごすため、やることは全て決まっている。

 ……そのはずだった。昨日までは。



  ◆



「…………」


 カーテンの隙間から朝日が射し込む。それに加えて、


 ピピピピピピピ…………と、激しく部屋の中に木霊する目覚ましのアラーム。

 ……煩いなぁ……。


 いつまで経っても聞き慣れない目覚ましの音に、僕は再度布団に潜る。

 最早止めることさえも面倒くさい。誰か代わりに止めて欲しい……そう思えるほどに身体が怠い。いや、もうそれはやる気の問題かもしれないが。


 ともかく、僕は今、動く気になれないのである。


「んんぅ……」


 寝がえりを打つ。最早、起きる気ゼロである。


 そんな僕の部屋の扉が開き、そこから誰かが部屋に入ってきた。

 そしてその人物は、僕に代わって喧しい目覚ましを止めてくれた。


 ……誰だ?


 まず有力候補は妹だ。部屋が隣だし、止まないアラームに耳を煩くさせてやってきたのかもしれない。が、だとしたら開口一番に文句がくるはずだ。なら違うな。


 次は、今日家に来る予定になっていた奴――ということは、一之瀬がもう来たのか?

 さすがに早すぎる気がする。まだ朝日も完全に昇りきっていないご様子だし。

 ……じゃあ、他に誰が?



「――こーら。いつまで寝てるつもりなんだ?」


「………………んん」



 部屋に入ってきた野郎の声だろうか。……この声、間違いなく2人じゃない。

 それにこの声……あんまり聞きたくないと神経が疼いて収まらない。

 こんな衝動にさせられるのは――僕の知る限り、ただ1人だけ。


「いい加減にしないと、無理矢理起こしちゃうぞ?」


 そっと……耳元で囁かれたその声に、僕の意識は一気に覚醒した。この声……まさかあいつか!? 全身が震え上がる。


 そんな僕の心情を知る由もない声の主は「じゃあ、起こしてやるよ」と言って、僕の「待った」も聞かずに……――


 瞬間の出来事だった。


 反射的に僕はすぐさま飛び起き、元凶に腹蹴りを思いっきり喰らわした。


 壁に“どてっ”と大きな音を立てながらも、その人物は腰を「いてて……」と摩りながら静かに起き上がった。


「いきなり何すんだよ……酷いじゃないか」


「酷いのはどっちだ!! 後、いきなり何すんだよもこっちの台詞だ、バカ兄貴!!」


 滅多に上げない僕の罵声ばせい

 あげる相手など星の数もいない僕にとって、それだけこの相手は貴重だということになる。いや……そんな貴重さも要らないが。


 相手は僕よりも断然背が高くモデル体型、煌びやかな容姿にシュッとした顔立ち。とても同じ親から産まれた人間だと思いたくない。


「バカとはなんだバカとは」


「事実を言ったまでのことだ。他人の部屋に入るなと何度言わせる気だ!」


「どうして弟の部屋に入ってはいけないんだ? お兄ちゃん悲しいぞー」


やかましい! とっとと寮に帰れ!」


「わざわざ休みの日になんで男っ気臭い大学に戻らないといけないのさ。全く、完全に騙された」


「確認しない兄貴が悪いんだろ。お陰で我が家は平和だったけどな」


「それに――全ては可愛い俺だけの弟に会うため……!!」


「それを喧しいっていうんだよ!」


 僕の3つ上ので、秀才と呼ばれている理学部首席入学を果たした――凪宮恭介きょうすけだ。


 そして……これは僕達“きょうだい”の間柄と、幼馴染の一之瀬しか知らないこと。何を隠そう、この秀才と呼ばれた天才様は――異常なほどのブラコンだ。


 妹ではなく何故に僕!?──と思ったこともあったが、矛先が妹に行ったら余計に110番への通報まっしぐらだっただろう。否、それは現在も同じか。


 そうして、僕と兄貴の間で口論が起きている最中、隣の部屋から廊下にかけて、バタバタとわざとらしく大きな音を立てて近づいてくる足音が聞こえた。

 やがてそれは僕の部屋の前で止まり、扉を勢いよく開け放った。


 扉の先には、まだパジャマ姿の僕より少し小さい身長で、結んだばかりらしいポニーテールの少女が仁王立ちしていた。


「――恭介兄ちゃん! 朝から煩いし、無駄に晴兄を困らせないの!」


 可愛げがあるが鋭い目つきで兄貴を睨むのは、僕の1つ下の――凪宮優衣ゆいだ。

 今年受験生であり、このバカ兄貴をセーブできる歯止め役だ。……苦労をかけるな、妹よ。


「そんなつれないこと言うなよ、優衣。それとも、自分にも構ってほしいという自己アピールなのか?」


「どこまで脳みそ腐ってんのよ、バカ兄」


「そう言うなって! ……そうなんだろ?」


「もししてきたらセクハラで訴えるから!」


「酷いな! ただの兄妹きょうだいのスキンシップだろー?」


「んなスキンシップがあってたまるかこの変態」


「……もう。この兄妹、なんでこんなにもお兄ちゃんに対して冷たいんだろ。昔なんて――『おにいちゃーん!』って言いながら俺の後ろをひよこみたいにくっついってきてたっていうのにさー……」


「「黙れ変態」」


 落ち込む兄貴に追い打ちを仕掛けるが如く、僕と優衣は同時にそう吐き捨てて、そのままリビングへと降りる。

 これが僕達の日常。

 凪宮“きょうだい”の、いつも通りの光景だ。



  ◆



 リビングの壁に掛かる時計を確認すると、まだ朝の7時だった。

 ……なんだよ、変な時間に起こされたな。最悪の朝のスタートを切ったようだ。


 妹――優衣はテレビを点けると、そのままソファーへと腰かける。

 凪宮家の朝ご飯担当は僕だ。というのも、普段は僕と優衣しかこの家には居ないし、今優衣いもうとは受験生だ。あまり家事を強制させて時間を割かせるわけにはいかないしな。


 それに、僕が受験生だった去年、家事をやってくれたのは優衣だった。

 だったら僕もそうするべきだろう。


「あ、そうだ。さっきはありがとな、優衣」


「ん〜? 晴兄は気にしないでいいよ。それに、あの兄さんの様子じゃどうせ腹蹴りかなんかは喰らわせてたんでしょ?」


「その最中だったな」


「なら、私が助けに入ってもしょうがないでしょ!」


 優衣はにしし、と苦笑いを浮かべテレビの画面へと視線を戻した。


 相変わら陽気な妹だ。成績でも文句の付けどころがないし、僕と違って人との会話能力やコミュニケーション能力も優れている。

 志望校の判定は、早くもA判定を貰えたらしい。

 勝手な言い分かもしれないが、よく出来た妹だと思う。


 僕は少し不格好ではあるが、Tシャツの上にエプロンを着け、朝食の準備に取り掛かる。

 どこかのアホ兄貴のせいで着替えられなかったからな。

 妹なんて寝間着状態だし。……着替えてこいっての。


 すると、タイミングが悪いことにインターホンが鳴り響く。

 こんな朝早くに誰だ? 新聞の勧誘ならお断りだが。


「あ、私出るよ」


「おぉー、頼む」


 率先して動いてくれる、やはりよく出来た妹だ。

 優衣は駆け足だが跳ねながら玄関へと向かう。ガチャ、と扉を開けた音がする。


「はーい――って、あれ。おはようございます!」


「――ん、いる?」


「えぇ、いますよ。丁度朝ご飯の準備してる」


「そう。お邪魔するわね?」


「どうぞどうぞ〜!」


 なんか軽い世間話みたいなノリだったな……というか、会話的に聞き覚えがあるため、顔を見なくとも誰が来たのかすぐにわかった。


 優衣に招かれながら一緒にリビングへと入ってきたのは、一之瀬渚だった。

 一之瀬は「おはよう」と僕に向けて挨拶してきたので僕も「おはよう」と返す。


 挨拶は日本人の常識だからな。

 それにしたって、こんな朝早くから勉強する気だったのか? こちとらまだ朝食すら済ませてないんだが。


「違うわよ。言ったでしょ? 今日泊まるって!」


「えっ!? 渚さん、今日ウチ泊まるの? 晴兄から何も聞いてないよ?」


「……あぁー。そういえばそんな流れになってたな。悪い、完全に忘れてた」


「ちょ! 晴兄、抜けすぎ……」


 優衣は呆れ気味にため息を吐き、一之瀬は僕の今の発言に――「嘘でしょ……?」と少しショック気味な表情をしている。暫く放置しとくか。


 けど、忘れるのも無理はない。

 基本優衣は家に帰ってくるなり部屋に直行してしまうため、夕飯が出来るまで部屋から出てこないし、話すタイミングが出来る頃には家事に全集中しなくてはいけない。


 よって――この話をする暇が昨日の一夜だけでは出来なかったのだ。……とはいえ、少し軽めに物事を捉えてしまったかもな。


「まったく……晴兄って本当にひ弱なんだから。それぐらい、いつでも話せたでしょ?」


「……善処します」


 だが所詮は言い訳。しっかり者の優衣には通用しないらしい。

 兄妹だというのに、なんだこの差は……。

 まるで僕が幼い末っ子みたいな扱いなのは、今に始まったことではないとはいえさすがに傷つくぞ。


 そんなこんなと時は過ぎ、やがて階段の方から誰かが降りてくる音がした。

 僕、妹、一之瀬と。この家にメンバーはリビングに集まっている。

 今この家でそれが可能なのは、1人だけ――恭介兄さんだけだ。何だ。まだショックを受けてるのかと思っていたが、予想以上に復活早かったな。


「――いい匂い~。ハルー、今日の朝ご飯って――……」


「………………あら」


 恭介兄さんは降りてきた付近で立ち止まり、ある一点を睨みつける。

 一之瀬もそれに反応するように、互いの顔が睨みあっているように思えた。


 そう、この2人は昔から――超が付くほど、仲が悪い。


 僕が好きな一之瀬は、重度のブラコンである兄貴に強い敵対心を燃やしている。まぁがわかったのは、つい1ヵ月前なんだけどな。

 犬猿の仲とは、まさにこの2人のことを指すんだろう。


「……あらら。また始まっちゃうよ?」


「面倒くさい」


「またそういうこと言う……」


「そういう優衣も面倒だろ。顔に書いてある」


「お、よくお分かりで」


「放っておけばいつか沈下するからいいだろ」


「ま、それもそだね」


 僕は出来上がったサラダをお皿に盛りつけて、テーブルの上へと置く。

 優衣はソファーの上から降りキッチンへと移動して、僕の手伝いをしてくれた。


 朝ぐらいは手伝うと言って利かず、仕方なく朝は手伝う許可をあげた。

 そうしたら――出来上がるまで待っている、という習慣が出来てしまったらしい。ってか、勉強しろよ。


 一方で、この幼馴染とバカ兄貴はというと……互いに数分間睨み合い、軽蔑し合い、罵倒し合っていた。……朝ご飯中に聞きたくもない。

 喧嘩するならどっかの空き地でも行ってこいと、本気でそう思った。



  ◆



「ねぇ。これってどうやって解くの?」


「それ……は、まずそのカッコの中身を前にかけて――」


 その後、僕は一之瀬と約束通り勉強をしていた。場所はリビング。僕の部屋でもよかったのだが「あ、あんたの部屋、本だらけだからいい!」とやや強めに断られた。まぁあの部屋は自室ではあるのだがある意味書庫と化してるんだよな。さすがに整理しないとまずいか。


 先程から勉強していて思うことが1つ――一之瀬は、わからないところにメモを書き足していた。本当、ここまで有能な幼馴染がリアルにいるとはと関心する。


 教科書の内容をメモすることはよくある話だが、一之瀬は違う。

 その場で聞いたこと、解いた方法なんかをひたすらにメモしているのだ。入念だな。……いや、これが普通、なのか?

 それから暫く経ち、シャーペンを乱暴に放置する音がした。


「んん~~……」


 肩を回したり、腕を伸ばしたりとリラックスしているようだ。

 勉強を始めて約2時間と少し――かくいう僕もさすがにぶっ通しで教えるのは疲れるな……。


 ともあれ、僕は“教えていた身”なために“勉強していた”一之瀬よりかは疲れていない。それに加えこいつの吸収力にも助かっている。まだ授業で扱ったばかりの内容なため、呑み込みが早い。


 更に言えば一之瀬は努力家だ。

 学校では『才色兼備』とモテはやされている彼女だが、容姿端麗な人間だからといえど必ずしも『頭脳明晰』なんて肩書きがあると思ったら大間違いだ。


 一之瀬の秀才っぷりは、誰にも劣らない努力故の結果だ。

 それこそ立派な『才能』であると称えることが出来るだろう。


 逆に言うと、頭脳明晰なのはどうやら僕の方……らしい。僕自身ではそんな自覚はまったくなくて、寧ろこいつの努力の前には頭も上がらない気がするけど。


「……一旦休憩挟むか?」


「そうだね。さすがに疲れたぁぁ~~……。ありがとね、教えてもらって」


「別にいいよ。教えるのもタメになるし」


 ――教え合いは双方のためになる。あながち間違ってないんだなと思った僕である。


 そんなことも知らないのかって?

 ふっふ。生憎だったな。こちとら過去15年間“ぼっち”やってきた身なんだよ。こんなことをわざわざ他人と検証したことなんて無い!

 …………自分で言ってて何だか悲しくなってきたな。


「どうかしたの? 明後日の方向なんか向いて」


「いや……。少し自分の人生について振り返ってみたらどうにも自分自身が悲しい人生を歩んできたんだと思っただけだ」


「? ……本当に大丈夫?」


 心配してくれるのはありがたいことだが、心配されることは即ち、心をえぐるんだよ。

 だから頼む……そっとしておいてくれ、一之瀬。


 半分自暴自棄になりかけていた僕の耳に、ドタドタと急いで階段を駆け降りてくる音が聞こえた。

 更なる嵐の予感が過ぎるがそんな不安を貫通するが如く、その人物はリビングにすぐさま顔を覗かせた。


「――渚さーん! 今、暇ですか?」


 騒がしい暴走馬の正体は妹の優衣だった。


「えぇ。どうしたの? 何か相談でもあるの?」


「あ、はい。ちょっとわからないところがあって……ここの問7なんですけど」


「ノート見せて?」


 優衣は一之瀬にノートを差し出す。

 そっか、一之瀬は優衣の専属家庭教師とやらをしてるんだったな。


 バイトだとかそういうのではなく、単なる一之瀬のボランティアらしい。しかし一之瀬が家庭教師をしてくれたお陰で優衣の頭の回転速度は増している。余程教えるのが上手いんだろうな。クラスの人達にも評判良いみたいだし。

 その代名詞として、一之瀬のノートは特にスゴいと有名だ。


 今も優衣のノートに自分の色ペンで次々とメモを残していっている。

 これは、一之瀬がよく使っている方法で、ノートを取るときに、色数を多くしないこととメモ欄を残すことを徹底しているらしい。

 一之瀬のノートが見やすい要因はそこからきているとか。


 ……まぁこれは、クラスメイトがこそこそと話をしていたのが偶然耳に入って知った情報にすぎないが。僕にクラスの人達と仲良く話すスキルなんて無い。……うわぁ……また悲しくなってきた。


「それで、そこはさっきの公式を当てはめれば」


「……解けた! スゴい! ありがとうございます! わざわざ書き込みまでしてもらって」


「別にそれぐらい構わないよ。丁度一息ついてたところだったからね」


「えっ、休憩中だったの?」


「まぁな。誰かさんが2時間休みもせずにぶっ通しで進めるもんだからさ」


「……悪かったわね」


 優衣への態度と全然違う件について。


 妹と兄の扱いに対する親の贔屓ひいきとかと一緒に見えてくる……。


 ウチの両親は基本そんなことはしないが、それでも家庭内にはそれぞれ事情が付き物だ。そういう状況が無いわけじゃない。参考文献とかないからわからないけど。


「……そういえばお昼ご飯は?」


「まだだよ。言ったろ? 誰かさんのせいで長引いたって」


「一々祭り上げないでくれる?」


「うーーん……。それじゃあ、晴兄と渚さんで買いに行ってきてよ。私その間にここで宿題やっちゃうから!」


「……はっ? 何で?」


「夕飯のおかず、もう残ってないの。おかずいらないっていうなら別に行かなくてもいいけど?」


「夕飯作るの僕なんだけど……。わかった、わかったよ。行かせて頂きますよ。でも何で一之瀬まで一緒に行かせようとする? 勉強するなら残してくぞ、お前のカテキョなんだし」


 疑問に思ったことを口に出すと、優衣が「うぅ~ん」と困った表情を浮かべた。

 ……何だ? そんなに言えないことでも企んでるのか?

 と、そんな疑問も束の間――優衣は迷わずにこう言った。


「だって晴兄と渚さん、まだ休憩中だったんでしょ? なら丁度いいじゃない、息抜きが出来るわけだし。せっかく妹が気を遣ってるんだから察してよね!」


「何故僕が怒られる……」


 とばっちりを受けている気がする僕を横目に、一之瀬は挙手する。


「そ、そんな気遣わなくてもいいよ? 本当に休憩がてらって感じで教えてただけだし無理はしてないから。それに……ハル君と一緒は、ちょっと……」


 ここは『ちょっと、なんだよぉ~』とか言ってツッコミたいだろうが、生憎と僕はそんな平成時代のチャラ男じゃない。ましてやキャラでもないし。


 頬を真っ赤にする一之瀬は、チラッと僕の方を見るもののすぐに逸らした。

 何だ? と疑惑したが、こんなのはさっきから何度も繰り返している。いい加減にしろ。


「……渚さん、少しいいですか?」


「えっ!? う、うん……」


 若干驚いた表情を見せた一之瀬だったが、有無を言わせない優衣の態度に負け、連れられてリビングを後にする。


 これはいわゆる『ガールズトーク』というやつなんだろうか。ならばボーイである僕は大人しくフェードアウトするとしよう。


 2人が戻って来るまでの間、僕はテーブルの上に置かれたラノベを手に取り読み始める。まだ読み終えていないラノベがあって助かった。これでガールズトークから逃れることが出来る。


 ……それにしても、話とは何だろうか。少し気になるな。

 ――一方、優衣と一之瀬はというと……、


「(どうしてあそこで「一緒に行く!」って言わないんですかっ! あの鈍感な晴兄が私の配慮の意図なんか汲み取るわけないし。……そんなに嫌ですか? 兄と一緒にいるのは)」


「(そ、そんなこと……は、ない……けど。でも、私服姿でそれもこんな真昼間から一緒に買い物に行くだなんて……。へ、変に身構えちゃうよ! 優衣ちゃんの心遣いは嬉しいけど、でも……――)」


「あぁぁぁぁぁ――!! まどろっこしい!!」


「(ゆ、優衣ちゃん……! そんな大声出したらハル君に気づかれちゃうから……!)」




 ……何か今、廊下の方で叫び声みたいなのが聞こえたんだが。えっ? あいつら、普通のガールズトークしてるんじゃないの?

 そう疑問には思いつつも、割り込むのは野暮だと思い、読書を再開した。




「(あのですね……私は2人の間に『恋人』という関係性を作りたいんです!)」


「(こ、ここここ、こい、びと……!?)」


「(ただでさえ鈍感な晴兄が渚さんのことを意識するとしたら、もうその関係に進むための手順を踏んでいくしか道は残されていないんですよ!)」


「(ゆ、優衣、ちゃん……!?)」


「(それにですよ。最近、あの鈍感兄貴は学校ではちょっとした噂の的になってるんですよね? なら、今のうちに晴兄に“意識する”ことを教え込まなくちゃいけないんですよ。私の言ってること、わかりますよね?)」


「(……はい。というか優衣ちゃん、結構詳しいっぽいけど……も、もしかして、既にそういう経験が!?)」


「(何アホなこと言ってるんですか。これぐらいの知識、今どき非リア充でも知ってますよ。……でもこれでよくわかりました。如何に2人がニブチンなのかが)」


「(に、ニブ……)」


「(それにしても、ウチの兄さんはこれだけの恋愛感情を向けられながら、よくもまぁ気づかないものですね。告白はしたんですよね?)」


「(う、うん……。し、したけど、あっさりフラれた……)」


「(さすが晴兄ですね……)」




 ――へっくしゅん!!


 僕はラノベから意識を逸らし、小さくくしゃみをしてしまう。

 くしゃみが出るのは『風邪の予兆』か『噂の的にされている』かのどちらかだ。


 特に寒気などは感じられないし、だとしたら後者だろうか? ……もしそうだとしたら、悪口を言われてるようにしか考えられん。




「(けど、まだ諦めてないんですよね?)」


「(もちろんだよ! 片想い歴がそんなにあっさりと切り崩されるわけないじゃない!)」


「(なら、迷う余地はないですね。少なくともここ最近の晴兄は、いつも渚さんのことを考えてるようでしたよ?)」


「~~~~~~~~っ!!」


「(……深く入れ過ぎたかな。と、とにかく、確実に意識はしていたはずです。春休みのときの晴兄を見てたらわかります)」


「(そう……だったの?)」


「(――そこで、です! あの鈍感兄貴でも意識せざるを得ない状況を作ってやろうかと思ってるんですが)」


「(そ、そんなこと、出来るの……?)」


「(あの人、一応ラブコメものとか読むの好きらしいので、どんなシチュエーションかがすぐにわかる――そんな場を作ればいいんです!)」


「(……ラブコメ?)」


「(あぁー、一般小説派ですもんね。まぁ、恋愛小説のようなものだと考えてください)」


「(れ、恋愛ものを……あの、ハル君が!?)」




 時は軽く10分は経過した。


 随分長いな、あの2人がそこまで入り込むほどのガールズトークって何なんだ?

 そんなことを考えながら読み進めているのは、ラブコメものだった。最近ではラブコメブームが来ているらしく、売り上げにも貢献している作品になる。


 推理系やファンタジーものとは違った面白さがあるんだよな。

 現実にありそうで無さそうな設定――そう割り切っているからこそ、僕はこのジャンルを読めているのかもしれない。


 いや、違う。

 もしかすると、自分と重ね合わせているのかもしれない。断った僕自身が思うのはお門違いかもしれないが、本当にそう思っていたのだ。

 ただ……ラブコメの主人公のように、物語という決められたレールの上を走るように、現実は上手くならないことばかりということは思い知っている。


「――お待たせー!」


 物思いに耽っていた僕に元気ある声が届く。妹だ、間違えるはずがない。


 どうやら無事にガールズトークという名の『密会』が終わりを告げたらしい。あんな悲鳴を聞いて、とてもじゃないがガールズトークなんて呼べない……。


「晴兄! 買い物なんだけど、やっぱ渚さんと一緒に行ってきて?」


「変えるつもりなかっただろ。あの長々とした密会は一体何だったんだよ……」


「それはそれ、これはこれ。それに何が密会よ。ガールズトークとお呼び!」


「何がガールズトークだ。んで、晩飯は何がいいんだよ。それわかんないと買うものも買えなくなるんだが」


 僕はソファーから立ち上がりそのままキッチンへ。冷蔵庫を開けようとした途端、


「別に私からのリクエストはないから適当でいいよ?」


 冷蔵庫を開けた時間を無駄にされた発言が返ってきた。


 けど、完全に無駄だったわけでもない。――先程まで物思いに耽っていた感覚を正常に戻すための、いいクールダウンになる。

 こんな“意識してました”全開オーラであることを知られれば、一之瀬のことだ。調子に乗るに決まっている。


 ……それに何を隠そう、今の僕が1ヵ月前の僕と違うということをあいつが気づいてしまう恐れがある。そんなデリケートな代物は即刻処分しなくてはならない。


「それに、だね~」


 じゃあ何がいいのかと訊ねようと振り返ると、そこには頬を真っ赤に染めた一之瀬が立ち尽くしていた。よく見ると、耳朶までもが真っ赤だ。一体何があったし……。


 するとその疑問の答え合わせをするかのように、優衣は僕の「待った」も聞かずして言葉を発した。


「――お二人には、これより買い物という名の“デート”に行って頂きますので!」


 約5秒、世界の時は止まった。

 そして次の瞬間、時は動き出す。


「はい――っ!?」


「ってなわけなんで、いってらっしゃ~い!」


 人の言い分なんて全く聞く気がないらしく、優衣は颯爽とリビングから去っていった。


 ――リーズンプリーズ!! 異議を申し立てる!!


 妹の後を追おうとする僕だったが、その進行を拒むようにして一之瀬が服の裾を掴んできた。……まだ顔真っ赤っかだけど。


「……早いとこ、か、買い物……行こ?」


「……仕方ないか」


 一之瀬の顔を見て察しないほど僕は鈍感じゃない。

 これは、妹による『策略』だ。

 悪知恵が働くのは結構なことだが、それをこんな形ではなく人を助ける意味で使いなさいよまったく……。


 そう思いつつも、不本意ながら優衣の策略に乗ることにした。ただ、買い物に行くだけだけどな。

 ……後、ついでにお昼ご飯も一緒に。

 行く前、駆け降りてきた優衣からの追加注文を受け取って。



  ◆



 この世には2種類の人間がいる。

 陽キャと陰キャ――つまり、扱き使う者と扱き使われる者だ。


 現在の時刻はお昼を回ったばかり。そして今、僕は一之瀬と共に近くのスーパーにまでおつかいをさせられている。それも、陽キャの妹の策略により。


 兄である僕を扱き使うとは……人使いが荒い妹だ。と思いつつも着実にスーパーへ向かっているあたり、僕も嫌ではないらしい。

 そして真隣を歩いている一之瀬の頬は、家を出る前より火照っていた。まだお昼だというのに何だこの仕打ち……。


 僕がため息を吐く中、一之瀬はイマイチ浮かない表情をしている。原因は十中八九――優衣の仕業だろう。一体何を吹き込まれたのか、この幼馴染は。


「……どうしたんだよ」


「……えっ、な、何が?」


「その明らかな動揺を隠してから返せよ。……さっきから浮かない顔してるけど」


「そ、そう!?」


 だから動揺隠せって。もう「悟ってくれ」と言ってるようなものだな。

 隠しきれていないのに気づいていないのか、一之瀬はそっと前髪を弄り始める。


「なぁ。優衣に何を唆されたんだ? どうせ碌でもないこと提案されたんだろうけど」


「………………」


「どうした?」


「……い、言いたくない、です」


 このまま黙秘権を行使したいようだ。

 まぁ日本にそんな権利がある以上、深追いするなんて野暮なことはするつもりないけども。


 それにしても……一之瀬がここまで動揺するのも珍しいな。ある意味貴重なものを見られた気分だ。


「……まぁいっか。とりあえず早く行くぞ。昼時のスーパーって込むんだよ」


「し、知ってるよ!」


 少しは気分が晴れたのだろうか、先程よりトーンの上がった声で返事をした。


 僕と一之瀬は隣同士、隣接して歩いている。

 単なるおつかいのためにお互いラフな格好をしているが、傍から見ればこれはいわゆる“デート”と呼べるやつのことで、男女が並んで歩いているだけで勘違いされることもしばしば。


 現に僕と一之瀬も、スーパーに辿り着くまでに何度か小耳に挟んだ。


「――カップルかな?」「――なんかいいね! ああいうの!」「――可愛いぃ! 今どきの高校生って初々しいよねぇ!」と言われ続けた。


 時にはこそこそと話している人達もいたが、僕には聞こえていた。

 そして案の定、現在隣で立っている一之瀬は、予想通り耳朶まで真っ赤に染まっていた。



  ◆



 帰り道――結局荷物持ちをすることになった僕である。いやまぁそこまで重くないからいいんだけども。これで『1週間分ね!』とか注文来ててこれだったらマジで萎えるところだったぞ。


「随分買っちゃったね」


「4人分ならこんなもんだろ。普段兄貴いないからどんなもんかわからないし、その辺はどうしようもない。それに、もし余ったらウチの兄が残ったの食べてくれるし」


「廃品回収みたいな言い方ね」


「いや、寧ろ残飯処理係的なあれだろ」


「……やっぱ、扱い雑ね」


「とか言って、本当は特に悪い気はしないんだろ?」


「当然。寧ろピッタリだと思えるほどよ」


 ……やっぱり僕より兄貴への扱いの方が酷いと思うんだが、それはそれでまぁいいか。


「そういえば、夕飯は誰が作るの?」


「誰って……僕以外の誰が作るっていうんだよ」


 先程も言った通り、妹はあんなでも受験生だ。勉強への取り組み方は僕以上だし、その邪魔になることだけはしたくない。

 それに、去年のお礼も兼ねてるしな。


「……えっ?」


 急に一之瀬が意外そうな目で見てくる。

 ……何だその『信じられない』と訴えてきそうな目は。男子が料理をしたら何かまずいことでもあるのかよ。そう考えるとバカにされてる気分だ。


 だが、一之瀬の反応から察するにそういうことではなさそうだ。

 ……そういや僕、こいつに手作りご飯とか作ったことなかったな。学校では基本的にこいつが部室にやって来るまでに食べ終えるし、手作り弁当なんて滅多に食べないから確かに驚くか。


 ――反応に関しては少し反論したいところではあるがっ!


「そっか……そっかー」


「な、何だよ」


「は、ハル君が作るっていうなら、私も……やりたい!」


「私も……ってことは、お前が作ってくれるのか?」


「い、一緒がいい! 抜け駆け禁止!」


「お、おう……」


 もちろん最初から任せる気にはなっていなかった。単純に冗談のつもりで言ってみただけなのだが、予想以上に強く反論されたな。


 一之瀬は文武両道だけあって、こいつが作る料理は本当に美味しい。まさに主婦の味というやつに似ている。


 いくら幼馴染とはいえ、“学園一の美少女”が手掛けた料理を食べたことがあるとか、そんな事実を知られたら軽く軽蔑され兼ねない。

 もちろんそれはクラスの男子だけではなく、学校全体を敵にするのと同じこと。

 ……本当、空気とは面倒くさいものだ。


 その日の夜は――断ることも出来ないほどの圧力に押され、結局僕と一之瀬で夕飯を作るという羽目になってしまった。


 お昼ご飯は軽くパスタを茹でて味付けをし、ほうれん草とベーコンを混ぜた野菜スパゲティを作ることになってしまった。――

 頼んでもいないのに、やると利かないので任せることにしたのだ。


 無駄にスペック高いよな。本当、これで頭脳明晰だったら本物の『完璧超人』だっただろう。いや……今でも十分完璧超人か。


「ハル君。そこの食材取ってくれる?」


「いいけど。どれだ?」


「そうね。ベーコンで」


「ほい」


「……ありがとう」


 スーパーから帰ってきて早々、一之瀬はスパゲティを作り始め、僕はその光景を読書しながら見守っていた。これしかすることがないのだから仕方がない。


 一之瀬は水を浸したフライパンの中で茹でられているパスタの麺をかき混ぜる。

 ……相変わらず美味しそうな料理作りやがって。

 元々は僕が考えついたメニューだが、聞いただけで再現するのだから末恐ろしい。


 これだから――僕はこいつのことをどうしても意識してしまう。

 けど多分……これは、一之瀬が抱く恋愛感情とはまた違う、まったくの別物だと思う。とてもじゃないが、これを恋心とは呼べない。


 ……何だろうな。

 好奇心とは少し違った……別の何かかも。


「――はいっ! 出来上がったから、これ運んでくれる?」


「お、おう」


 考え事をしているうちにどうやら出来てしまったらしい。仕事の早い奴だ。


「兄貴ー、優衣ー。昼ご飯の準備出来たぞー」


 まるで子どもを呼ぶかのような心境が湧いたが、その言葉は“家族の輪”を表すことでもあると思う。


 ……今更何を言い訳にしてるのやら。

 あいつとだって――とっくに“幼馴染の輪”があるくせに。


 やがて降りてきた2人と一緒に食卓を囲む。その間に、またもや一之瀬と兄貴が小競り合いを始めたのは割愛する。


 そして、一之瀬が作ったパスタが美味しすぎて少し感動したのは、本人には内緒だ。



  ◆



「……いつまでやるんだ、勉強」


「気を抜いたら負けるからね。どっかの誰かさんに!」


「……だからって」


 あれからあっという間に時は過ぎ、夜ご飯の支度をする時間になっていた。


 時刻は18時と少し。

 帰り道の約束通り、僕は一之瀬と共同作業という形で晩ご飯を作っているわけなのだが……その間にも、一之瀬は『休む』ことを惜しまなかった。


 先程までもずーっと一之瀬の勉強を見ていたので読書どころじゃなかったし、まさかここまで勉強すると……一体誰が想像出来ただろうか?

 それだけ集中しているのであればまたの機会にも出来たのに。約束は破らないよな。


 台所に立ちながらも立てられた教科書をチラチラ見ながら頭を働かせる様は、もうさすがとしか言いようがない。

 ……やっぱり、こういう光景を見ると思い知らされる。


 ここに並んで立ったときの、カースト上位者と根暗ぼっちの差がはっきりと具現化されていていたたまれない……。

「どうしたの?」なんて、いつもなら優しいはずの気遣いもこの状況では野暮だった。

 すまないと思ってるよ……多分。


 やがて出来上がった晩ご飯を、今度は僕、一之瀬、優衣の3人で囲んで食べる。


 兄貴は「ちょっとやらなきゃならない仕事があってな。ごめんよぉ~、大好きなお兄ちゃんが側にいなくて寂しいかもしれないけど、後でいっぱい慰めてやるからな?」と、うざったらしい長めの文章と共に僕を抱き寄せてきた。


 ……やっぱり早急に病院に連れて行った方がいいんだろうか。


 食べ終えた後、優衣は自室へと戻っていった。きっと勉強の続きをするか、ベッドで寝転がるかのどちらかだろうな。


「風呂、先に入るか?」


「そうね。あいつの後だけは入りたくないし、前に入るわ。汚い風呂には浸かりたいと思わないもの!」


「言うと思ったよ」


 やっぱり僕より一之瀬の方が扱い雑だろ。


「……ハル君、先に入ったらどう? 私はあいつ以外だったらいいし」


「じゃあ、お言葉に甘えるかな。お前は僕の後ででもいいか?」


「……す、好きにしてよ」


 兄貴のように何かしら反論してくるのかと思ったのだが、どうやらそういったことは無さそうだ。意外とあっさり引いてくれた。


 しかし。何故あんなにも兄貴を拒絶するのか甚だ疑問だ。何が気に入らなくてあんなにもめるのやら。僕は疑問に思いつつも風呂場へと向かう。


 優衣は部屋に籠ったし、兄貴は大学の課題で手詰まり中。

 それに加えて、一之瀬は僕の後。

 ……あれ? 必然的に僕が最初じゃん。くじを引くまでもなく結果は明らかだった。


「はぁ……」


 脱衣所にて僕は重苦しいため息を吐く。


 特別意識しているわけではない。ただの昔馴染みで、隣にいるのが当たり前なだけ。

 今までの交流だって変えたつもりは特にない。


 ……だというのに、どうしてこんなにも一之瀬のことが頭から抜けないのだろう。


 春休み――全てはあの告白から始まった。

 きっとあれのせいで、僕の認識がずれ始めているに違いない。嘘でも、そう思いたい。


 これは……単なる好奇心だ。欲求だ。

 これは決してあいつが言うような『恋心』じゃない――。


 そもそもだ。僕はクラスの全員をまとめられるようなカリスマ性なんて持ち合わせていない。精々クラス内の影に溶け込む“根暗ぼっち”のはずだ。名前に『晴』なんて付いているが所詮は名前でしかない。僕は名前のように光り輝いているわけじゃない。


 ……あぁあ!! ダメだ……こんなこと、すぐに忘れよう。

 悩んでいたってどうしようもない。

 結局のところは僕の気持ち次第なのだろう? ――なら、決まっている。


 僕に、一之瀬のことを好きになる資格も、それを言うような度胸もないっ!


 シャワーを全身に浴びながら、僕はそう改めて決意した。

 こんな有耶無耶うやむやな気持ちのまま、僕の決意を曲げることは許さない。


「……上がったぞ」


 それから数十分してから風呂場を出る。


 髪をドライヤーで乾かした後、僕はリビングへと足を踏み入れる。そこには、机に向かって勉強している一之瀬がいた。


 ……こいつ、いつも勉強してないと死ぬ呪いでもあるのだろうか。

 でも――こんな皮肉めいたことを言えるのも、全てはこいつのことを誰よりも知っているからで――。


「あ、うん――っぶふ!?」


「えっ……なに?」


 一之瀬が僕の方へと振り向いた瞬間、飲んでいた飲み物を全て吹き出したのだ。その後咳き込む彼女の背中を摩ると、何故か真っ赤な顔をされながら眉間にしわのよった表情で言われた。


「ど、どうして裸なのよ!?」


「どうしてって……そりゃあ、さっきまで風呂に入ってたんだし当たり前だろ?」


「そういうことじゃない!! た、確かに、いつも家族にしか見られてないからそんな反応なのかもしれないけど、普通はありえないのよ!? 何で裸でリビングに来たりなんかしたのよ!! 私への嫌がらせ!? それはそれで嬉し……――って、そうじゃなくて――け、健康の毒よ!!」


 今の僕はバスタオルを腰に巻き、タオルを首に掛けただけの状態だ。確かに、ほぼ全裸だと言われても仕方がない。


 ……まぁ、迂闊うかつなことをしてしまった僕にも理はあるわけだけど。それよりもさっき、僕のこの姿を見て『嬉しい』って言いかけなかったか?

 こいつ……こんなにド変態だったっけ……。


「な、何よ、その目は」


「いや。……人って色々と個性があるのを再確認させられたっていうか、認識させられたっていうか……」


「何よそれ……。というか、どうして裸で……?」


 犯罪者を見るような目はいい加減にやめてほしいんだけど。お前、一応こんな僕に告白したっていう事実をお忘れで?


「どうしてって、そりゃあお前を呼ぶためと……牛乳を飲むため?」


「……ふ~ん。……へぇ~~、風呂上りに牛乳、ねぇ~?」


 急に怪しげな笑みを浮かべた一之瀬。

 ……あ、これはまずい。変なネタを与えてしまったかもしれない。

 一之瀬がこんな表情を浮かべるときは十中八九――人を小馬鹿にするときだ。


「風呂上がりに牛乳……そんなに身長が平均並みなの気にしてるの~?」


「……うっさいなー! そんなの僕の勝手だろうが」


 僕の身長は高校生男子の平均ぐらい。身長が高いどこかのアホに嫉妬することもあるほどにコンプレックスなのである。


「まぁそうね。確かにハル君の勝手だけど、私としては伸びない方が助かるのに……」


「……えっ?」


「~~~~~っ!! や、やっぱり今の無し!! お、お風呂入ってきます!!」


 慌てた様子で僕の横を通って行き、お風呂場へと向かう一之瀬の頬は真紅の色へと変化を遂げていた。

 ……自爆でもしたのか?

 聞き間違いであってほしいんだけど、今の発言。少しだけ、ほんの少しだけだが……胸が絞めつけられた感覚がした。



  ◆



「……とりあえず着替えるか」


 このまま裸でリビングに突っ立っているとまた一之瀬に何を言われても不思議じゃない。


 それに、幼馴染と云えども相手は女子。

 それぐらいの配慮をしてやらないと通報されるのはこっちだからな。


 僕達“きょうだい”の部屋は2階にある。それぞれに部屋があるため、滅多なことがない限り部屋からは出てこない。


 部屋へと続く扉を開けると、そこには――数え切れないほどの大量の本が山積みにされ、本棚にはこれ以上入らないほどラノベがぎっしりと詰まっている。


 僕はこの通りのラノベオタクだし、妹はそもそも受験生なために部屋を出ないし、1番上の秀才様はそもそも家にいない。

 ……何だろう、この家系。結構悲惨な現状が飛び交っている気がする。


「はぁぁあ……。ダメだ、目眩がする……」


 ため息を吐いた僕はそのままベッドへと背中から倒れる。


 本棚に抽選で当たった直筆サイン入りの色紙などが入ったショーケース、それから所狭しと置いてある本の山……それは、本来寝るはずに使うベッドの上にさえも侵食されていた。……当事者は、僕なんだけど。


 タンスから適当に寝間着を取り出して着替え、僕は再び横になった。

 いつもであれば、着替え終えたら脱衣所に戻ってバスタオルを洗濯しなくてはいけないのだが、今日に限ってはそうもいかない。

 何しろ、あの“学園一の美少女”が我が家のお風呂を利用しているのだから――。


 うっかり脱衣所で出会ってしまっては言い逃れは不可能。いくら温厚な彼女でも、犯罪紛いのことをしでかした男を逃すわけがない。

 そうなってしまっては運の尽き――僕は男子として在らぬ失態を犯すことになるのだ。


 それだけは避けなくてはいけない……! 何があってもだ!


 ……だが、いつまでも湿ったタオルを放置していてはカビが生える。

 考えては排除し、考えては薙ぎ払い……さっきからそれの繰り返し。


 ……我慢だ我慢。たった数十分の我慢だ。

 一之瀬渚という幼馴染で『黒歴史』を作るなど冗談じゃない。


「……仕方ない。本でも読むか」


 ベッドの上に散らかるラノベを手に取り、中から栞を取り出して読み始めた。


「…………………」


 ……静かだ。ものすごく、静かだ。


 僕以外誰もこの部屋にいない。当たり前のはずのその事実に、何故か落ち着きを感じないのだ。……どうしてだ?


 1人でいつもこの部屋にいる。

 特別寂しいと感じたことはない。


 ……なのに、どうしてこうも落ち着かないのだろうか。


「はぁ……全然集中出来ん。……どうしたんだよ、僕」


 いつもと変わらない日々を過ごしたはずだ。何の変わり映えもしない、ただいつもの、普通でありふれた休日を。


 その瞬間――脳裏に浮かんだのは僕がよく知るあいつだけ――僕の幼馴染である『一之瀬渚』の存在だった。


 ……なるほど。そういうことか。

 あいつは今日、1日中ウチに居たんだ。いつもよりも長く、いつもより身近に。


 不甲斐なかった。

 こんな、たった1人の幼馴染が居ただけで、こんなにも落ち着かなくなるなんて過去の僕からしたらありえないことだ。こんなの……僕には初めての感情だった。


 本をパタン、と閉じてそのまま手から離す。

 ベッドに完全に身を預け、このまま寝てしまいたいと思った。


 そうすれば気持ちの整理がつくかもしれない。今僕は何を考え、何を思ったのか。それを考えたかったのだ。

 一之瀬渚という、に対して感じた気持ちを整理するために――。


「……そっか。……そうだったんだ」


 ――ようやくわかった。

 自分があいつに対しての気持ちも、どんな感情を抱いているのかも。

 僕は……あいつが、一之瀬渚が……好きなんだ。


「……でも、あんま実感がないな」


 だけど、整理はついても心の中の感情がはっきりとしなかった。


 一之瀬に抱く気持ちは本物なのだろう。だが、果たしてこれが友情としての気持ちなのか、それともあいつと同じような気持ちなのか――僕にははっきりとわからない。


 たとえ意識していたとしても、あいつを落とすことは男子を敵に回すということ。

 ……とてもじゃないが、あいつに「好きだ」と言える度胸ない。


 それと、もう1つ理由がある。

 一之瀬に僕の気持ちを伝えるための前提として、僕があいつを幼馴染以上に見ていなければ、それは友情としての『好き』と一緒ということだ。


 だからまずは、はっきりさせる。

 それまではあいつとは付き合えない。それも……僕の気持ちが変わらない限り――。


 僕は天井へと手を伸ばす。


「……大空に向かって飛んでゆきたい」


「な、何やってんの……?」


 すると、僕の部屋の扉が開き、そこから一之瀬が顔を覗かせた。

 一之瀬は僕と違い、予め寝間着を持って行ったのだろう。普段は見ない彼女のパジャマ姿に、私服や制服とはまた違った可愛さがあると思った。


 でも……心臓がうるさくなることはなかった。


「……別に。……少し、考え事してただけだ」


「考え事? ハル君にしては珍しいこと言うね。何かまずいことでも……というか、さっきのこと、まだ気にしてる? そ、その……あれは、私も悪かったし……」


 髪を弄りながら一之瀬は僕に謝ってくる。

 まだ完璧に乾ききっていないのか、彼女の髪から伝う雫がとても魅力的に見えた。


「いや、あれは不可抗力だから」


「……まぁそもそもとして、ハル君が、あ、あんな格好してくるからいけないんでしょ? 少しは社会性ってものを学んだ方がいいんじゃないの? あそこに私が居ること、知ってる風な口ぶりだったもの」


「……すみませんでした」


 確かにリビングに彼女が居ることを、僕は知っていた。


 勉強するだろうなと考えたとき、思い当たるのは妹の部屋かリビングのみだった。僕の部屋はご覧のとおりの有様だし、優衣は個人で勉強しているはず。

 そうなると、もうリビングしか選択肢は残されていないというわけだ。


 でも結局謝罪をするべきなのは僕なんだよな。すみませんでした。

 ……あれ? 今気づいた。何でこいつがここにいるんだ?


「お前、優衣の部屋で寝るんじゃなかったのか?」


「……っ!! ……そ、そう、だったんだけどぉ……――」


「何だ? はっきり言えよ」


「~~~っ、うぅぅ……!」


 一之瀬は顔を真っ赤に染め上げ、まるで僕が彼女を言葉攻めしているかのようなシチュエーションになってしまった。全然、そんなことないけど。

 すると……、


「――そこからは私からお話しよう!」


 部屋の扉から、ではなく一之瀬の背後から“ひょこっ”と顔を覗かせたのは僕の妹――凪宮優衣だった。

 そしてそんな妹の顔は……


「晴兄の気持ちはよくわかる。当初はその予定だったんだろうけど、私はそれを認めないよ! 今どき女子同士で寝て何が楽しいのよ!」


「……ガールズトーク」


「古い!! 古いんだよ発想が!!」


 何だか妹に「青春の何たるかがわかってないんだから!」と遠回しに言われてるみたいですっごく良心が痛い……。


「確かにね、夜通し好きな子について語り合うとか古典的だし、めっちゃ映えると思うよ? ……けどね。渚さんに関してはそれは必要ないの! 何しろ最上位カーストなわけだし。その辺は晴兄の方が詳しいでしょ?」


「まぁ……うん」


「つまり! 渚さんに足りていないのは実践力なのよ! 異性同士で一緒にいるっていうことに不慣れなのは晴兄も同じでしょ?」


 ……どうしてだろうか。

 この妹のこんな自信満々な気迫を見ていると、とてつもなく嫌な予感がする……。



「――なので晴兄! 今日は晴兄の部屋で渚さんと!」




 ………………アイキャントアンダースタンド。




「ってなわけで、後はよろしくね?」


「よ、よろしくって――」


 全く状況が読み取れないんですけど!? 状況説明を要求したい僕ではあるが、そう易々と話してくれるほどこの妹は容易くない。

 呼び止める暇もなく、優衣は僕に有無を言わせることもせずに部屋の扉を閉めた。


 ……つまり、僕と一之瀬は今、同じ部屋にいるわけだ。


「……何でこうなったし」


「そ、そんなこと、私に言われたって……」


 嘘だな。

 さっきの様子を見るに優衣がここまで大きな行動を起こしたのは、一之瀬が絶対に関与しているはず。でないと、あいつはあそこまで懸命に好きな人間を放り出したりしない。


 ……となれば、ただ事情を知るこいつから情報を吐かせるのが先決。

 ――まぁそんな簡単に暴露してくれる相手なら、僕はここまで手を焼いたりしない。


 それに、優衣の言うことにも一理ある気がする。

 一之瀬には異性との交際関係は一切ない。過去のことを含めてもだ。長年こいつの側に居たのだから当然知っている。

 そしてそれは、僕にも当てはまることだ。

 自分の気持ちに嘘をつけないような条件を作り出すのに、ピッタリな状況だしな。


「……まぁいっか。どうせ泊まるのも一晩だけだし、ここで寝るか?」


「えっ……。ど、どこで寝ろって言うのよ」


「どこって……この部屋の惨状を見たなら1つしかないだろ。ベッドだけだ」


「~~~~~~っ!?」


 一之瀬は一瞬で顔色を真っ赤に染め上げた。ゆで卵かよ、こいつは。

 冷めたら熱くなって、熱くなったら冷えて……本当に忙しい奴だなまったく。


 好きな相手とはいえ、一度は自分のことを振った男。

 一緒の部屋で寝泊まりするというのは、僕の想像以上に嫌なことなのかもしれない。


「……わかった。僕はリビングで寝るからここ好きに……――」


「――嫌だ!!」


 部屋からさっさと退散しようとしたとき。僕の進行は食い止められる。


 男子高校生の平均身長並みしかないが自分よりも高い相手を……一之瀬は僕の寝間着の裾をぐいっと引っ張った。

 ぱたん、と腕に体重がかかる。

 顔を腕に埋める彼女の瞳には、少しばかり涙が溜まっていた。


「……え、な、なに?」


「……ダメ」


 泣いている姿を直に見るのも久しぶりだ。

 決して狙っているわけではないだろうが、僕にはとても痛い攻撃だった。


 ……この、卑怯者が。

 一之瀬が掴む腕を僕は優しく触れる。


「……どうせ優衣の策略なんだろ? 僕の部屋で寝ることも、あいつの勝手な――」


「――そうじゃない! ……そう、じゃないの。…………違くて。これは、優衣ちゃんが私のためにしてくれたことで……」


 わかっていた回答が聞けたのは……いいんだが。このシチュエーションは止まることなく、更に加速していった。


 目から零れる数滴の涙を、彼女はぬぐうことなく僕に弁解を求めていた。

 ……ちょっと、これはさすがに抵抗出来ん。一之瀬のような美少女を泣かせることは、僕が……というより、クラスメイトが許さない。


 もしこの状況が露呈するようなことがあれば、僕は社会的に窮地に立たされる。

 一之瀬に限ってすることでもないとは思うが、噂というのはデットヒートするものだし、それ相応の万全は整えていく必要がある。


 だからこそ僕に――逃げ道は存在しない。

 ……仕方ない。それが、僕の運命だ。


「はいはい。泣くな泣くな。僕でよかったら一緒に寝るから……その、僕のいる前で……そんなに泣くな」


 ため息を吐いた後、一之瀬の頭に手を乗せて、優しく撫でる。


 あまりこういうのは得意じゃない。そもそも、僕は人の世話をするのに向いていない性格の持ち主だしな。

 本当はもう少し彼女が安心出来るような台詞を言ってやるのがいいのだろうが、残念ながら、これくらいしか言えない。


 僕はこの女の恋人ではない――ただのお隣さんで、幼馴染なんだ。おまけにラノベマニアというレッテル付き。過去15年間、彼女と同じように恋人を作ったことがない僕にとっては、読書で培ったことしか経験として活かせない。


 せめて――こいつが安心出来るように抱き締めてやることしか、僕には出来ないんだ。


「――は、は、は、は――ハル、ハル……くんっ!?」


「何だよその慌てようは。居心地悪いのか?」


「そそそそ、そういうわけじゃ――!! だだだだ、だって、し、仕方ないじゃん!! こんなこと急にされたら!! ……き、期待しちゃう、からっ……」


 一之瀬はそう言いながらも僕の腕の中でブルブルと身体を震えさせる。抱き締めている今だからこそ、よくわかる。

 ……こういうところは、昔と何も変わってない。


「お前ってさ、昔から1人って環境が嫌だよな。何で?」


「な、何でって……。そ、そりゃあ……誰もいないって、認識させられるから」


「泣くほどにか?」


「な、泣いたのはハル君のせいだもん! バーカ!」


「ったく……」


 もし――こいつに僕以外に好きな人が出来たとして、そして付き合うことになったとしても。僕以上に、こいつを知る者はいない。あっちがどれだけ経験豊富であろうと、僕と過ごした15年間を埋めることは不可能なのだから。


 幼馴染としての、ちょっとした独占欲。

 娘を見守る父親って、こんな心境になるんだろうか。別に僕が父親ってわけじゃないけど。


 けれど、もし、埋めるような相手が現れたら――。

 ……そんなことされたら、さすがに傷つくな。

 ちょっと……心が痛い。


「も、もういいだろ? と、とっとと寝よう――」


「………………っと」


「えっ?」


「もっと! ……だ、抱き締めて、ください」


 こんな……こんな絶世の美女に、僕は惚れられている。

 それはもっと誇りに思ってもいいことなんだろうけど、僕にはそんなこと出来るわけがない。


 だってそうだろう?

 周りからあれだけの好意を持たれているというのに、一体どういう人生を歩めば僕のような“根暗ぼっち”に惚れるんだ?


 けど――こんな顔を、こんな真っ赤になった可愛すぎる顔を、僕以外の誰かに見られることが、一瞬でも『ヤダな』と思ってしまった。


 一之瀬渚を……独占出来ている気がした。


「……後少しだけな」


「……うん」


 涙はすっかり目元から消え、代わりに目元には腫れた跡が残った。

 いつもよりも近くにいるのに騒がしくなくて、妙に大人しい彼女に、困惑したものの……、


 ――嫌な気はまったくしなかった。



  ◆



「おはよう、ハル君!」


「……おはよう」


 翌朝――僕の目の前に姿を見せた一之瀬は、昨日の寝る前とは打って変わって、いつもの元気な彼女に戻っていた。


 結局、何故泣いたのかは本人にしかわからない。言及するつもりもないしな。

 僕達は昨日の夜、今どきの幼馴染とは思えない行為に耽ってしまった。単に抱き締めただけなのだが。


 それに気づいたのは驚くなかれ……こいつが寝ついた後のことだった。――遅っ!!


「今日は私が朝ご飯作るね!」


「……そっか。助かる」


 何故か少しぎこちなさが残っている。

 その原因は言わずもがな、昨日の出来事が原因である。


 ……だがそれを気にしているのはどうやら僕だけのようだ。僕より先に起きたのか、既に着替え終えている一之瀬は昨日のことがまるで無かったように上機嫌だし。

 やはりこいつは、謎だらけだ。


「あ、そうだ。明日みんなで試しにお菓子作りするんだけど。……よかったらハル君、私が作ったの食べてくれたり、する?」


「別にいいが、みんなで食べないのか?」


「いいの! 愛想振り撒いてたら出来た知り合いだから。ハル君優先!」


 ……今すっごい悪意を感じる言い方をしてた気がするんだけど。

 ともあれ、それが一之瀬渚なのだから、仕方がない。


「あ、それともう1つ!」


「何だよ。まだ何かあるのか?」


「昨日のあれ、カッコよかったよ!」


「……嫌味か」


 置き土産でも残すようにして部屋から出ていく一之瀬。

 それを後ろから見守った僕は、起きたばかりだというのに今日1番のため息を吐いた。


「……謎すぎる」


 今日も今日とて、僕は一之瀬に翻弄されるんだろうな……最早、諦めるしかない。

 そう思わずにはいられない僕であった。

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