【御礼1000PV】椿なつめは★で讃える

「こ、これ、わたしが見ちゃっていいのかな!?」


 とか言うわたしですが、『次のエピソード』を押す指は止まりません。それは先輩のスマホの画面が目に入ってしまった事から始まりました。

 

 ここのところ先輩、やけに熱心にスマホとにらめっこしてるな〜とは思っていたんです。そして、繰り返します見えた画面の中に青い四角のマークと『カクヨミ』の文字。わたしもアカウントを持っている、たまに覗く事がある小説投稿サイトでした。

 

 先輩がどんなモノを読んでるのかすっっごく興味があります。でも絶対に先輩は素直に教えてくれないもんな〜。 ······ちょっとえっちなやつとかだったりして、ふふっ♪

  というわけで例えば先輩がふと顔を窓の外に向けてた瞬間、例えば目頭をマッサージしていた瞬間、そんな瞬間瞬間にわたしの目に情報で、先輩が夢中になっている小説の手掛りを集めました。

 

 まずタイトルが長いという事が分かりました。でもこれは最近ずっと流行りみたいなので、この情報だけでは絞り込めません。

 次に分かったのはタイトルの最初の「前世が」という言葉。わたしは『小説を探す』から「前世が」で始まるタイトルの長い小説を検索しました。

 でも、先輩ったら前世モノとか好きなんですかね? ふふふっ♪ まあ、ああ見えてロマンチックなとこありますもんね♪


 さて、検索結果ですが、なんと5000件も出てきてしまいました。うーん、もう少し絞り込みが必要かな。と思いながらスクロールして行くとわたしの目に留まるひとつのタイトルがありました。



『前世が漆だとか言う工芸部の後輩がグイグイ来て、職人なのに不覚にも僕は恋をする。』



 え? わたしの指が止まりました。


「ぜ、前世が漆······工芸部······」


 わたしの口から溢れる、心当たりがありすぎるキーワード。わたしは無意識にそのタイトル名を押しました。

 その小説は突然部室に現れた「前世が漆」とか言う後輩に振り回されながらも、少しずつ心惹かれて行く孤独を抱える男子高生のお話でした。

 ていうか!! 登場人物や出てくる工芸品なんかは名前変えてありますけど、これってわたしと先輩の話じゃないですか!? え、ウソ。先輩が作者さん??


「やだ、わたしこんな言い方したっけ?」


 表現やエピソードに誇張はありましたが、もはや疑いようもなく、それは今や確信に変わっていました。、と。

 そうなってくると気になるのが主人公の男子高生のモノローグです。物語はこの主人公の男子高生の一人称視点で書かれていました。つまり。


「先輩の気持ちが、分かる?」


 わたしは『次のエピソード』を強く押しました。最初こそ迷惑そうな主人公の男子高生でしたが、ヒロインの後輩がお弁当を作ってきた辺りから少しずつ心を開き始めます。


「先輩こんな風に思ってたんだ。ていうかほんとに玉子焼き好きなんだ♪」


 わたしは夢中になってしまいました。そして第二章に入ったところで主人公の男子高生のモノローグにその文字を見つけます。


「かっ、かっ······『可愛い』······」


 主人公が心の中でヒロインの後輩の事をそう、はっきりと言いました。ひ、ひゃ〜うそうそ照れてしまいます!


「こ、これ、わたしが見ちゃっていいのかな!?」


 その後も次々に現れる『いい匂いがする』とか『誰にも渡したくない』とかの文章に、わたしはもうのぼせ上がる寸前です。

 でもひとつ気になるところがありました。それは主人公の男子高生がそーゆー気持ちを言葉にしてヒロインの後輩に言ってあげない事です。

 

 いえいえ、わかるんですよ? 顔真っ赤にして手をつないだり、なんか急に優しかったり、わざと素っ気ないフリしたり。わたし分かってるんです、先輩の気持ち。でもはっきり言って欲しい時もあるじゃないですか、もうっ!!


 ストーリーはまだ完結せず連載中。なんだかんだ言ってわたしは結局、公開されている最後まで読み切ってしまいました。最後のページでわたしは思い切ってレビューを書く事にしました。★はどうしよう······いいや、えいっ!


★★★Excellent!!!

好きって言って!!


とってもドキドキしちゃうお話でした。

小悪魔系ヒロインと少しずつ心惹かれていく主人公のじれじれ展開にイッキ読み必至!

気付いたら感情移入してしまって「早くハッキリ好きって言って!!」とか思っちゃいました。

続きがすっごく気になります。

ハッピーエンドだといいな♪


9月23日 @natu28



「よし、送信っと♪」


 流石に目が疲れてしまってわたしはベッドに横になって目を瞑ります。ふふふっ♪ さあ、このレビューを見て主人公の男子高生の行動は、先輩の行動はどう変わるんでしょうか······。



 ······そのまま眠ってしまったらしいわたしは肩を揺すらてハッと目を開けました。


「起きろ。もうすぐ着くぞ」


「へ? 先輩?」


 そこは電車の中で隣には先輩がいます。え、うそ、夢? そうだ、今日は先輩と博物館に人間国宝展を観に······わたしは慌ててスマホを取り出し『カクヨミ』を開きました。『小説を探す』、『前世が漆』······な、ない、先輩の書いた小説が、ない!!


「ゆ、夢オチなんて〜。物語では悪手です、炎上ものです······」


「寝ぼけてるのか? 降りるぞ」


 先輩は呆れ顔でさっさと電車を降りてしまい、わたしは慌てて後を追いかけます。うう、あんな夢を見るなんて。これも全部先輩がハッキリ言ってくれないからです。全部先輩のせいです。

 こうなったらいいでしょう、覚悟してくださいね♪ 今日こそ先輩にはハッキリ言ってもらいますよ?

 もし先輩が言ってくれたら★みっつあげますからっ♪



─ おしまい ─



【御礼1000PV】

 いつも応援頂き本当にありがとうございます✨

おかげ様で本作「前世が漆···」が1000PV到達いたしました♪······夢じゃないですよね?


 と言うわけで1000PV記念の番外編「椿なつめは★で讃える」はいかがだったでしょうか?


 「前世が漆···」の本編は完結しましたが、今後も番外編や特別編など考えております。

 ご機会ありましたら是非お読み頂けますと幸いです。

 改めましてありがとうございました✨


ぬりや是々

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