第17話 じつは義弟をゲームに誘いまして……

 やはりと云うべきか、晶が引っ越してきてから二日経ったが兄弟仲良く、とは云うべくも非らず、ぎこちない日々が続いていた。

 やはりと云うべきか晶は引き篭もりがちで、顔を合わせても飯の時か用事があって部屋から出ている時ぐらいである。

 今日の朝だって晶とたまたまリビングで出会ったのだが——

「晶、ゲームしようぜ。」

「遠慮しとく。今日の午後は基地研修だし。」

——と、この調子。何処となく距離感が置かれている。現状進展無しである。

「じゃあ一緒に着いて行こうか?」

「大丈夫。前軽く案内してもらったし、甘えたくないから。」

「そっか。なら頑張れ。」

「うん。」

 涼太も一人っ子として育ってきたので、晶が色々と自分でやりたいのはよく分かる。

 だが、折角兄弟になった事だしもっと仲良くしたいものである。

 少々しょんぼりとした気分でゲームを片付けて、そのまま基地に訓練を受けるために出掛けた。


 今日の訓練は実弾を使用しない(つまり全ての攻撃や被害の判定はコンピュータで計算された上でレーダー上に表示されるだけという訓練で、現実にミサイルを撃ったり艦砲射撃をしたりするわけではない。)対艦戦闘訓練であった。しかも相手は親父の乗る『ゆきかぜ』が所属する艦隊である。

 いつもの狭苦しいコスモファルコンのコックピットで操縦桿を握りながら計器が司令部からの強制操作によって対艦戦闘訓練モードに移行していく様を眺める。

 あとは開始命令が下りるだけである。

 ところがピコーンピコーンと秘匿通信が入る。また親父だ。

『涼太よ、調子はどうだい?』

『まあまあって所かな?』

『……そうか。じゃ頑張れ。手加減は一切しないぞ。』

『あゝ…。』

 そのまま通信は切れた。と同時に計器に『訓練開始命令が発出されました。』との表記と百二十秒のカウントダウンが現れた。それと同時にヘッドセットにカウントダウンの音声が司令部からの流れる。今回はひなたちゃんがカウントダウン役である。

 フラップや操縦桿、チャフやフレア等の各機器の調整をして訓練開始まで待つ。

『二十八、二十七、二十六、二十五…』

 最後に装填弾数を確認する。

『五、四、三、二、一、訓練開始。』

 ひなたちゃんの号令とともに、戦闘機隊は三手に分かれる。

 操縦桿を捻ると同時に身体にGが掛かる。いくら慣性制御装置で負荷を軽減しているといっても3G(地球上の重力の三倍相当の力)は平気で掛かる。

 開始時点現在の戦力は以下の通りである。


第十二航空団第三飛行中隊

航空隊主攻(α隊)コスモファルコン八機

 同 補助(β隊)コスモファルコン七機

 同 補助(γ隊)コスモファルコン五機

 同 偵察(δ隊)コスモファルコン偵察仕様二機

計二十二機



エンケラドゥス護衛艦隊第四駆逐隊

かげろう型宇宙駆逐艦ゆきかぜ(旗艦)

     同    はつかぜ

     同    いそかぜ

     同    うらかぜ

     同    たにかぜ

計五隻


 訓練開始時はまだ航空隊と艦隊の距離はそこそこ空いている。今回は急襲訓練ではないので、双方が攻撃迎撃体制に入るための時間を与えられているからだ。

 なので航空隊は予め決めた通り三隊に分かれた。

 一方艦隊の方はレーダーを見ると艦隊を三つに分けているようである。

 『いそかぜ』と『たにかぜ』、『はつかぜ』と『うらかぜ』、そして『ゆきかぜ』単艦。

 それぞれが絶妙な距離を置いて散開する。

 そして航空隊がミサイル射程圏内に入った時、中隊長は吠えた。

『全機攻撃開始!』

 そして涼太がミサイル発射ボタンを押したのと同時に、機のレーダー上に無数の輝点が出現した。

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