こいびと
俺の恋人の名前は、松村 恋。
そう、中学時代に俺が尻を触った(触ってない)女だ。
彼女は俺にとっては何がどうひっくり返ったって届かない高嶺の花だった。
彼女は俺が虐められてた時、教育委員会に訴えてたそうだ。
それと、俺の父や琉にも。
恋は至って真面目で綺麗で万能な、眩しい程のアイドルだった。
俺は彼女の事を密かに想っていた。
そんな彼女は何故か偏差値三十八の底辺高に進学した。
「私、
クラス中が騒然としてた。
当たり前だ。
彼女は偏差値七十三の
俺は不思議に思った。
でも、理由が分かった。
彼女が当時好きだったのは、琉だった。
琉の偏差値は七十、俺の偏差値は四十三。
彼は友人達と馬鹿やる為だけに優木高に進学することを選んだ男だ。
彼女は琉のどこが良かったんだろう?
と言っても、全てか。
俺は彼とは別の高校に進学した。
──そして今に至る。
「類くん、また下向いてる」
「あ、あぁごめん……」
恋は俺の自慢の恋人だ。
なんて素敵な恋人なんだ。
俺とじゃなくて琉とくっ付けば良かったのに。
今はデートをしている。
彼女とは手も繋いだしやる事もやった。
初体験は付き合って三日目、俺のマンションで。
刺激的だったし、胸も大きかったから満足感があった。
ただ、俺のが平均的な長さしかないから彼女が満足したかは疑問だが。
「るーいくーん? 私とのデート、楽しくなぁい?」
「えっ!? あ、いや、楽しいけど……」
「そっか。それなら安心だ」
恋が微笑む。
今はデートに興じよう。
考え込むのは俺の悪い癖の一つだ。
「ねぇ、恋」
「なぁに?」
「お前、俺のどこが好きなんだ?」
「えー? それ聞くー? 見た目だよ、み・た・め」
「…………えっ?」
今初めて聞いた事だったが、まさか見た目を褒められるなんて思いもしなかった。
俺と琉、どっちが顔が良いかなら百人中百一人が琉を選ぶだろう。
それぐらい顔面偏差値が違うんだから。
双子だからといっても、二卵性双生児だから実質兄弟みたいなものだ。
「逆に類くんは、私のどこが好き?」
「……えーっと、全部かな」
「ちょっ、はずいってー」
恋の顔が紅潮する。
その顔が見られただけでも、俺は満足だ。
あぁ、こんな時間がずっと続けばいいのに。
幼い頃から比べられてきた俺と琉。
まずは見た目から。
次は運動神経。
次は学力。
父は俺が気に入らないらしく、特に俺に暴力を振るってきた。
死にかけた時もあったな。
浴槽に二時間ぐらい顔を沈められた時。
……そう言えば恋は高校時代に強姦されたとかなんとか。
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