麗子様は好き勝手に生きてやる

古芭白 あきら

幼少の砌

第1話 麗子様は転生しました。

 私は転生者である。

 名前は清涼院麗子。


 いつ死んだのかとんと見当がつかぬ。——と言うわけで、私には三十年ほど生きた前世の記憶がありますよ、と。


 誰っ! 今ヤベー電波女だって言ったヤツ!

 これホントにホントのホントなんだからね。


 けっして妄想癖なんかじゃないわ!……たぶん?


 えっ、そうよね?

 私、違うわよね?


 絶対に電波じゃないわよね?


 だってだって、ちゃんと前世で暮らした記憶があるもの。五歳児に三十年分の妄想なんてできるもんですか。えっ、できないわよね?


 おぼろげだけど、ちゃーんと前世の記憶を思いだせるわ。


 私はね、ほどほどの中流家庭で育ち、ほどほどの中堅大学を出て、ほどほどの中小企業に就職して、ほどほどの人生を歩んできたの。ほらぁ、ちゃんと思い出せるでしょ。


 だけど、そこから記憶が無くって……気がつけば五歳児になってたぁ!?


 まさに体は子供、頭脳は大人ってヤツね。探偵になる気はないけど。なれる能力もないし。


 あーあ、でも私、死んじゃったのかぁ。そっかー。


 ほどほどの相手と結婚して、自分の両親がそうだったように平凡でほどほどに幸せな家庭を築く、そう思っていたのになぁ。結婚したかったなぁ。


 まあ、結婚どころか恋人もいなかったけどね……くすん。


 どーせ独り者の寂しい人生だったわよ!……自分で言ってて悲しくなってきたわ。


 だけど、悪い事ばかりでもないわ。人生捨てたもんじゃない。なんせ転生先の清涼院麗子はとんでもないお嬢様だったのよ。


 清涼院家は清華家せいがけの流れを汲む、由緒正しき華族の血筋。世が世なら私は本物のお姫様だったってわけ。さらに、幾つもの大会社を抱える清涼院グループの総本家で、超絶お金持ちってんだから真正のお嬢様よね。


 それに……むふっ!


 大きな姿見に映る自分の姿に私は思わずニンマリ。

 そこにいるのは人形のように容姿の整った美幼女。


 真っ白な肌に大きな瞳、顔なんて人形みたく恐ろしいくらい整っているし、髪なんてツヤッツヤのサラッサラよ。縦ロールだけど。


 血筋、家柄、財力、全てが揃っている上に、将来ぜったい美人になること請け合いのお嬢様よ。これって人生イージーモードじゃない。ドリルヘアーだけど。


 もう、間違いなく左団扇でイケメン達にチヤホヤされる将来が約束されてるんじゃない?


 だってだって、綺麗な黒髪に大きくパッチリした瞳、整った容姿はまさにフランス人形よ。


 なんて愛らしいのかしら!

 縦ロールドリルだけど……


 だって、しょうがないじゃん!

 お母様が少女趣味なんだから!


 私はお人形みたいに可愛いのよ。だから、お母様が少女趣味で染め上げるのは必然なのよ。だからって髪をドリルまみれにするのは勘弁して欲しかったわ。


 まあいいわ。たとえドリラーになっても、完全無欠のお嬢様なのは間違いないし。


 みんながかしずく地位と名誉、有り余るほどのお金持ち、しかも絶対美少女になれる容姿!


 前世みたくケチケチしていた生活ともオサラバよ。これからは贅沢三昧ができるし、恋愛にだって不自由しないわよ。きっと。


 まさに人生超勝ち組!


 だから、私は決めたの——今世はぜったい恋に青春に面白おかしい人生を謳歌してやる!


 さあ、清涼院麗子として、これから好き勝手に生きてやるわ。

 まあ、超大金持ちのお嬢様なんだから人生超イージーモード。


 こんなのラクショーよね、ラクショー。ふふふっ。


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