第二十四話 ナンバーワン




 「あーーー!!!!楽しかったなー」





 邦山君が伸びをしながら言う。



 今は夕方の午後5時頃……



 私を含む、トーカ、薫、阿澄スミ鈴衣スズ小春ハル、邦山君、蒼ちゃんの男女混合の8人で海の近くの公園でシャボン玉をして遊んでいた。


 テストの後の放課後でのことだ。






 「本当にはしゃいじゃったねー(笑)」



 阿澄スミも笑いながら同調する。



 「次はハンガーとか使ってもっと大きいシャボン玉作れたらいいよね!!」



 小春ハルが無邪気に言う。



 「分かる分かる!!めっちゃ大きいの作って入ってみたいよな!!」



 トーカも声を上げる……



 「じゃあ、夏休みにまたみんなで遊ぶか?」



 薫がふと提案する。



 「おー?薫にしては珍しい事言いますねー?可愛い♡」



 阿澄スミが茶化し…



 「うるせっ、俺にだって遊び心はあんだよ」


 

 薫はプイッとそっぽを向きながら言う……






 「ユウや蒼ちゃんも楽しそうにしてたよねー(笑)?」





 「!!」



 鈴衣スズが質問してくる。



 「おー、楽しかったわー。伊織はいじり甲斐があって可愛い奴だし」

 「か…!!!……別に可愛くはないから……」

 「ほらほらー?照れんなよー(笑)」

 「茶化してるんだった怒るよ?」

 「怒った顔も面白いから怖くねーんだけどな」

 「はい怒ったー、もう完全に怒ったー、許さない。絶対に許さない」



 そう私は頬を膨らませて蒼ちゃんの頬をつねってやろうと手を伸ばした。



 「やめてよー、伊織は見た目に反して馬鹿力だからつねられると痛いんだよー」

 「私の心を傷つけた罪は重いんだよ?」



 私が触ろうとする手を蒼ちゃんは掻い潜る……




 「イチャイチャしてんなー(笑)」




 トーカが笑いながら私達を見ている……




 「なぁ、トーカ」

 「ん?」



 そんなトーカに邦山君は質問した。



 「あーやってイチャイチャしてるのはなんとも思わないのか?」

 「え?」

 「あー、私も聞こうと思ったけどユウが蒼ちゃんとあんな風に仲良くしてるのは見ていてなんかモヤモヤとかしないの?」





 一応言っとくね…

 私とトーカは付き合っている。





 「え?するよ?」

 

 「「「「「するんだ……」」」」」

 

 「まぁでも、蒼ちゃんがいるからああやって今、ユウは笑えてる訳だから"嬉しい"って気持ちもあるかな」

 



 トーカはそう本当に嬉しそうに笑う……




 「嬉しい?」

 「だってよ?仮に今回蒼ちゃんがいなかったら今回ユウはあんな風に笑ってられたか分からないからよ」



 「「「「「………」」」」」



 「だから蒼ちゃんには感謝もしてるんだよ……ああやってユウに寄り添ってくれてよ!!」



 「「「「「…」」」」」



 「だって、俺が寄り添うのはいつでもできるしな。それに人と関わるのがユウは苦手なんだよ……だから、俺ばっかが助けてフォローしてばっかでもユウの為にはなんないし……蒼ちゃんみたくああやってさりげなくユウが人の輪に入りやすくしてあげるフォローはできないからな……だから、蒼ちゃんが来てくれて良かった」



 「香月君……」



 「それに蒼ちゃんがいたからこうやって誰も気を使わず楽しめたってのもあるだろ?まぁ、強く言っちゃうとユウにみんなが気を遣ってたら少し遠慮した感じになるじゃん?でも蒼ちゃんがいたから自然とユウもみんなの輪の中に入れたりもしたからな」





 そのトーカの言うことを静かに聞いていた5人は……





 「…………トーカ……お前……










 親かよ」



 「え」





 長く語ったトーカに向けて邦山君が言ったその一言が第一声だった。





 













  


 「じゃあまたねー」

 「次は海行こーなー」

 



 私とトーカはみんなと"少し大きな"駅で別れた。


 それぞれ違う方向の電車だからだ。




 けど……





 薫と蒼ちゃんとは一緒の方向なので一緒の電車に乗った。

阿澄スミも一緒の方角だけど"用事"があるらしく別の電車に乗った)







 ガタン…

 ゴトン!!

 




 「…………あ」

 「どうしたトーカ?」



 車内の中で出発した瞬間にトーカがふと声を上げた。



 「そういや俺、学校に忘れ物したわ…」

 「え……何忘れたの?」

 「水筒」

 「次の登校日取りに行けば?」



 薫は呆れながらそう言う。



 「いや、ダメだわ……あー、ごめん取りに行くわ」

 「それじゃあ私も着いてくよ」

 「先帰ってていいんだぞ?」

 「いいよ。私も着いてくよ」

 「いや、でも……」

 



 「…………あ!!!やべぇ……俺、この後途中の駅で降りてイオンで買うものあったわ」



 と蒼ちゃんが突如言い出した。



 え?なんか突然だな……



 「あ、俺はこの後家族で外食の予定があったわ」

 「!!」



 薫も突然そう声を上げた。



 何で………




 ん?





 「てことで俺達はこのまま先に帰らせてもらうわ」

 「ユウは着いていってやれよ」




 と言うことで薫と蒼ちゃんは先に帰っていった……




 あー……





 そう言うことね。













 「いやー、アイツらの空気読み方分かりやすいなー(笑)」




 トーカと私は学校行きの電車に乗っていた。



 その時、トーカがふと笑いながら言った。




 「つまり、"私達二人の時間を作ってくれた"ってことだよね」



 私も笑いながら言う。



 そう、つまりあのまま私が帰っていたら薫と蒼ちゃんと一緒に帰ることになる……


 私もトーカもそこは"まーーっったく気にしてなかった"……



 けど、あの二人は今日の私とトーカの関わりの少なさを見てあえて二人きりの時間を作ってくれようとしたんだろ……



 本当に気を遣わなくて良かったのに。









 「まぁ……折角作ってくれた時間だし?ここからはラブラブと行こっか♡」



 と、トーカが意味ありげにニヤリと笑う……



 「………キモい」



 私はその一言を返した。















 そして最寄り駅で電車を降り、学校への道のりを私とトーカは歩いていた。



 正直、今は午後7時と言うこともあり、学生服姿の人達は見かけない……



 まぁ、気が楽だから良いんだけどね。

 


 「"木っ葉"は今日は楽しめたかな?」

 「思った以上に楽しめたよ………てか、そのあだ名で呼ぶのはやめてよ」



 

 

 "木っ葉"は私の数あるあだ名の一つだ……



 主にトーカや薫が呼ぶ。





 「そっかーー……それは良かったな」

 「蒼ちゃんのおかげでもあると思う……」

 「だよなー……蒼ちゃんって本当に凄い奴だよ」

 「だね。人との接し方が上手だし二人きりで一緒にいても全然何とも思わないし」

 「蒼ちゃんはある意味天才だな」

 「そう思う」



 

 そうやって蒼ちゃんの話題を話ながら私達は学校へ向かって歩く……









 「でもよ」





 ふと、トーカか声音を下げる…




 「どうしたの?」

 






 「ユウは俺と蒼ちゃんとどっちが一緒にいて気楽?」

 






 「」






 トーカがそんなくだらない子供じみた質問をしてきた……









 「…………馬鹿じゃないの?」

 「は?」








 「トーカが"1番"に決まってるでしょ?気持ち悪い質問しないでよ…/////////」

 「」





 私は顔を赤らめながらそう答える……



 そうだ……



 どんなに居心地が良くても…



 どんなに優しくされても…




 どんなに嬉しくても……





 どんなに幸せだと思っても……!!!!









 "【人って夢中なものには目がないって言うけどそれが俺にとってユウちゃんなだけ】"









 私の"ナンバーワン"はトーカしかいないんだよ……






 

 



 そして、





 私達はここから家に帰る道中は赤面しながら無言で帰った。








 完

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とある女子高生の思事《おもいごと》 アレクサンドル @ovaore

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