第35-2話 運命の番

 翌朝。見慣れない広いベットで目覚めたマイネは、昨日、王宮に戻ったことを思い出す。


 隣には瞼を閉じ寝息をたてるルシャードがいて、毛布の中でマイネの腰を抱いていた。

 二人とも裸のまま寝てしまったようだ。


 ルシャードの顔は、じっと見る。改めて整った顔だと感心してしまった。


「惹かれ合う運命の番」

 マイネが囁くと、ルシャードがぱちっと瞼を開けて胸の中に閉じ込められた。


 ルシャードの鼓動の音が聞こえ、しっとりとした肌から温かい体温が伝わると、どきりと鼓動が鳴る。

 

「起きてたんですか?」

 掠れた声でマイネが訊くと、ルシャードは頷く。


「マイネは俺の運命の番だ」

 ルシャードが耳朶を甘噛みし、マイネは顔を顰めながら、返事を返した。

  

「俺も同じこと考えてました。ルシャード様は運命の番なんじゃないかって。何があっても、結ばれる運命だったんです」


 ルシャードはマイネのうなじに触れる。

 そこには番のあかしとなる噛み跡がついているはずだ。


「跡ついてますか?」

「あぁ」

 ルシャードが印を指でなぞると、マイネはぞくりとして、身体から力が抜ける。


 オメガは番となったアルファにしかフェロモンを発しなくなり、他のアルファとの性行為は困難なほど苦痛をともなう。

 また、獣人のアルファにとって番との絆は特別だった。


「生涯、番はマイネだけだ。出会った頃から、ずっと好きだ」

 ルシャードがマイネの頬を指先でゆっくりと触れる。


 マイネは、その手をしっかりと握りしめた。

「俺もずっと好きです。ルシャード様と番になれて本当に嬉しいです」


 ルシャードと会う前の発情期がこなかったマイネは、誰にも選ばれずに一人で生きて行くと思っていた。

 カスパーを出産した後のマイネは、ルシャードに抱かれた記憶を胸に閉まって、誰も愛することはなく終わると思っていた。


 こんな未来が待っているとは、想像もしていなかった。

 ルシャードと番になれるなんて夢みたいだ。

 

「俺もだ」


 毛布の中で、ルシャードの長い尻尾がマイネの腰をくすぐる。

 黄金の瞳で見つめられてしまうと、目を逸らすことができなかった。






 

 

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