第一部 5章(魔王編) -吸血鬼と夏の遠征-
第67話 人望を憂いて
――魔王城へ向かうメンバーの選出は、貴方にお任せします。明日の夜までに、その面々の報告をお願いします。
――ああ、それから……遠征へは二十人ほどで向かうのがいいと思います。それ以上の兵力を貸し出すのは、現在の状況では少々難しいですね。
……あのさァ。
そういうの、性格悪いと思うんだよね。君に選ばせてあげてるんだよ的な。私は善意の塊ですよ的な?
俺がそれを望んでるように見えるかってンだよォ!!
副局長アドラスのボケカスゴラァッ!!
「やっぱ性格ワリィッ……」
わざわざ部屋にまで呼びつけやがって。アドラスとピーアの個室へと繋がる共同生活スペースから廊下へと出て、俺は悪態を堪え切れなかった。
「大体、この俺サマに。……声を掛けられるような知り合いが二十人もいるワケねェだろうがッ」
自分で言ってて悲しくなってくるけどさァ!
「いや、まあ元気出せよ。俺も声かけとくからさ……」
逆に、今回は妙に俺に配慮した様子のアルフレートにも違和感がある。
「……なんだよお前、何か企んでんのか?」
「何もねえよ。ただ、強いて言うなら……俺も同行させてほしいってのはあるが……」
思わず、目を
「え、お前……魔王城遠征に行きたいのかよ? でも、お前には≪ヴァリアー≫での立場があるんじゃねェのか」
今まで見てきて思ったんだが、雰囲気的にヒガサよりも更に偉いんだろ?
いや、彼女は既にヴァリアーを追われた身。今となっては地位なんてないんだけどさ……。
アルフレートは肩をすくめた。
「あぁー……。ウン……まぁ、色々あんだよ。問題ねえ、つーかむしろ都合がいい」
「よく解んねェけど、遠出オッケーってことなら、まあ好きについてきてくれよ」
そう、ついてきてくれ……なんだよな。
理由は教えてもらえなかったが、フェリス・マリアンネは俺をご所望だ。というより、魔王サマとやらが俺を招きたがっているのだと。ジェノもそれを違和感ないという様子で聞いていた。
吸血鬼である俺を指定して、わざわざ魔王城に招く理由って……何だ?
優秀すぎる人材の引き抜き……とか? 無いか。
正直、俺にそこまでの価値があるとは思えない。
「とりあえず、レンドウ。お前の知り合いを列挙してみろよ」
「あぁ? ……あァ、すまん。そうすっか」
ええっと……指折りを交えながら、人物を思い描いていく。こういうのって同じ奴の名前を何回も上げちまいそうになるんだよな。いや、ネタとかじゃなく。
「アル、レイス、リバイア、カーリー、ダクト、
「正直、子供三人は来てくれる保証ねェし……自信なくすわ……」
「……………………」
「いや何か言ってくれ!」
無言で冷や汗流すのやめろよ! もっと頑張って解決策考えて!
フレーフレー! アルフレート!!
すると……何かを決心したのか、フレフレート……じゃない、アルフレートは俺から視線を反らしつつ言う。
「仕方ないな、俺に任せておけ……人数的な部分だけなら、まるっと解決してやる」
「何でこっちを見ない!? 人数だけ揃っても不安しか残らないんだけどォ!?」
――響き渡った俺の声に、副局長アドラスが扉の向こうで辟易としているだろうかとか……そんなこと考える余裕も無かったね。はは。
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