Chapter 3 : 誤った出会い
右がまさにヒロインに向かう道だと聞いている。
それで私は平然と左に入る。計画通りに。
「こちらです。」
彼はやはり何の疑いもないようだ。
結局、これは私がしたことだが、少し可哀想に感じられるほど純真だ。
そして、このように誤った選択でヒロイン攻略に失敗したらどうなるか気になる。
しばらくしてヒロインは魔物に攻撃を受ける危機に瀕するが、近くを通り過ぎる別の人に救われる。つまり、この男との接点が消えて攻略失敗につながったのだ。
そして、その結果は私が思ったより単純に現れる。
ただ「攻略に失敗した」という言葉だけが表示され、頭の上のクエストマークが消えるだけだ。
その男はその場から姿を消す。まるで何事もなかったかのように。まるで煙のように。
「本当に終わり?」
妙な喜悦感がするのもつかの間で、あまりにも単純で少し虚しく感じられる。
「何だろう… 計画が成功したのにこんなに物足りない気がするのは… 一体何が足りないんだろう?」
私はこの感情をなだめるため、そしてそれなりに満足を得ようと、この下品ないたずらの犠牲者を探しに出る。正しいやり方とは言えないが、ここに来て初めての目標意識だ。
頭の上にクエストマークがついた人を見つけるたびに、似たような方法で接近し、ただ敗北を感じさせる。
私は満足感を得ようとしたが、その度に虚しい感情だけがさらに大きくなる。
しかし、この過程が繰り返されるうちに、すぐに淡々としてしまう。
ひょっとしたら見つかるかと思ってドキドキしたのはいつの間にか昔のことになってしまう。
同じことがずっと繰り返されるだけで、心もただ冷たくなるだけだ。
そのように繰り返される日常に嫌気がさす頃、私は少し特別な主人公に偶然会う。
どこか見慣れた感じがする。似たようなカスタマイズをたくさん見たからかな?まあ、それもその通りだよ。こんなことをどれだけたくさんしたかを考えると、こういうのも当然のことだよ。
「あの…」
「どうしたんですか?」
「ずっと探し回りました。」
そして、その男の行動と言葉は今まで見てきた主人公たちとあまり変わらない。
少し安心した。うん。ただ気のせいだろう。
ただ偶然に過ぎないと思って、これまでやってきた通りに主人公を分かれ道に誘う。
目の前にある分かれ道。
私は彼をちらりと見て、当然左を指さす。
「こちらに行かなければなりません。」
その男は私の言うことを気にせず、ただその場にじっと立っているだけだ。
初めて見る反応に何かおかしいという気がするが、私はただ知らないふりをして右側に足を運ぶ。ただためらうだけだろう。すぐ私の後についてくるだろう。
しかし、彼は私の予想を完全に上回る。
「いや、右の方に行きたいですね。」
「え?」
私は驚いてすぐに聞き返す。
うん。私が聞き間違えたに違いない。右に行きたいと言うはずがない。
しかし、その男は首をかしげて私の手を振り払う。
これまで経験したことのない展開、そして予想すらできなかった展開だ。
私はあまりにも当惑して、どうしてもその男を捕まえることができない。
初めて経験する敗北に何をどうすれば良いか分からない。
なんだ?なんで?僕がなんで敗北したんだ?
すると、画面が黒くなる。
そして目が覚めたのは部屋の中だ。
「ここは… 何がどうなったの?」
しばらくして、部屋に誰かがドアを叩く音がする。
「お姫様、入ってもいいですか?」
聞きなれた声。そうだよ、メイドちゃん。
私は急いで席に戻り、平然とした表情をする。
「入ってきなさい。」
誰かがドアをこっそり開けて部屋の中に入ってくる。
華やかなレースの飾りが目立つメイド服を着ている。
「メイド…」
「え?」
「なんでもない!」
「何かあったのですか?お姫様、表情がよくありません。」
「私は大丈夫。何の問題もない。」
「それならよかったです。」
「ところでどうしたの?」
「紅茶を持ってきました。」
「紅茶?」
「はい。いつもこの時間帯に紅茶を飲みたいとおっしゃって… 別々に準備してくれと頼まれたのを覚えています。」
「そうだね、そうだね。ちょうど飲みたかった。」
私がここに初めて来た時に経験した状況が自然に頭の中に浮かぶ。
ただ同じだとしか思えない。
メイドはやはり慎ましやかに紅茶を注いでいる。
私は疑いに襲われ、まずメイドに話しかけようと勇気を出す。
「私が以前、何か変なことを聞いたことがあったかな?」
「おかしいというのは何のことですか?」
「うーん… 私が誰なのか?ここがどこなのか?そういうの。」
「そんなことはなかったと思います。」
「そうなの?」
「何かあったんですか?」
「いや、何もない。」
「そうなんですか。」
「うん、本当に何もない。」
「わかりました。」
メイドは紅茶を注ぎ、部屋を出る。
私の前に置かれた茶碗。
何か変な気がしてたまらない。
私はすぐに部屋を飛び出し、その男に会った場所に向かう。
頭上にクエストマークがついている。
私は一目でその男だということに気づく。
身の毛がよだつほど同じカスタマイズをしたキャラクター。
まさか本当に同じなのかな?
私が迷っている間に彼が私に話しかける。
「あの…」
「どうしたんですか?」
「ずっと探し回りました。」
そして、別段違いがない方法で展開されては、再び分かれ道に向き合う。
そして私は再び右側にその男を誘導する。今度は必ず成功する。
「ここから右に行かなければなりません。」
しかし、その男は私の言葉を無視して左を再び選択する。
そして画面が暗くなる。
私が目を開けると、またも部屋の中。
「ループなのか?まさか私が負けというのか?」
しばらくして、ドアを叩く音がする。
やはり聞きなれた声とセリフ。
「お姫様、入ってもいいですか?」
「お入りなさい…」
案の定ティーカップを持ったまま部屋に入ってくるメイド。
まさにその瞬間、私はこれがループだということを確信することができた。
低い声でつぶやく。
「メイド…」
彼女は当惑したように首をかしげる。
「え?」
私はにっこり笑いながら彼女を歓迎する。
「おかえり。待っていたよ。」
私は今になってこの世界で私の役割が何なのか、まともに分かった気がする。
「申し訳ありません。少し遅れたようですね。」
「紅茶を持ってきたんだろう?私がいつもこの時間帯に紅茶が飲みたいとお願いしておいたじゃないか?」
「はい…」
「うん。」
私はやはり低い声でつぶやく。
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