第4話 チンコと金玉はいりません

『異世界に転生したら、

 寿命は一年にしてほしい』・・・。



〈・・・どういう事でしょうか?〉


 さすが女神様だ。


 俺の非常識な願いを聞き返したりせず、

 理由を尋ねてきた。


「生きるのは疲れるので、

 早く終わってほしいな・・・と」


〈・・・残念ですが、それはできません。

 せめて、25歳くらいまでは生きていただきたいのです〉


「転生というのは、

 赤ん坊からやり直すのですか?」


〈もちろんです。

『衣食住』の保障のためにも、

 なるべく裕福な家の子に産まれるようにしますね〉


「・・・俺は、

 新しい母親から産まれるのですか?」


〈ええ、生き物として自然な事でしょう?〉



「あの、出来ればなのですが・・・」

 俺は、ためらいがちに言った。


「女神様自身の手で、

 俺の新しい身体を創り上げて、

 異世界に降り立たせて頂くわけにはいきませんか?」


〈それは・・・、

 可能ですが・・・〉


「その上で、

『衣食住』の保障もお願いできますか?」


 我ながら、無茶な要求である。


 だが、

 俺には既に親はいたのだ。


 新しい『親』や『家族』などあてがわれても、

 余計なしがらみとしか感じられないだろう。



 ・・・疲れるのは嫌だ。



 女神様は少し考えていたようだが、

 やがて答えた。


〈では、寿命は10年で、

 15歳の身体から始めるのはいかがでしょうか?

 さすがに赤ん坊や子供が身一つで生きるのは無茶でしょうから・・・〉


 異世界では15歳からが成人らしい。


「分かりました。

 それでお願いします」


〈『衣食住』についてですが、

 それを保障する環境の代わりに、

 いくつかの特別な力を与えます〉



 そう言って、

 女神が授けてくれた『恩恵ギフト』・・・。


 そう、

自宅空間ホーム』もそのうちの一つだ。



「ありがとうございます!」


〈あとは、

 学習期間である幼年期を省略するわけですから、

 そのままでは言葉も解らず不便でしょう。

 あらかじめ異世界の言語知識を授けておきますね〉


 女神がそう言った次の瞬間、

 俺の頭の中で、今まで見たことも聞いたこともない言葉の知識が、

 洪水のようにあふれ出す。


 これが、異世界の言語・・・。


「『ありがとうございます・・・!』」

 俺は、異世界の言葉で礼を言った。



〈それと、

 あなたは寿命を縮めた分、その力は凝縮されます。

 早い話、常人をかなり上回る強さがその身に宿ることになりますので〉


 その言葉に、俺は耳を疑った。


「そんな事になるのですか?

 寿命を短くしてもらったのは、

 俺のわがままなのに・・・」


〈ええ、理由の如何いかんにかかわらず、

 何かを減らせば代わりに何かが増える・・・、

 そういうものです〉



「・・・・・・」


 それを聞いて、

 俺は少し考えた。


(何かを減らせば何かが増える・・・)


『家族』の代わりに『恩恵ギフト』が、

『寿命』の代わりに『強さ』が・・・。



「あの、

 他にもいらないものがあるのですが・・・」


〈・・・言ってみなさい〉


 心なしか、

 さすがの女神さまもうんざりしているようだ。


 だが、

 それでも俺は言った。


「まず、チンコと金玉がいりません。

 10年で死ぬわけですから、

 腎臓も1個あれば十分です。

 それと、痛いのは嫌なので、

 痛覚もなくしていただけますか?

 あとは、手入れが大変なので、

 髪と眉毛、まつ毛以外の体毛もなしでお願いします。

 そういえば、尾てい骨はなくてもかまわない骨だったかな・・・。

 それに、乳首とへそもいらないか・・・」


〈・・・・・・〉


 女神様は絶句した。


 いや確かに、

 一般常識からすれば無茶苦茶な希望だとは思うが・・・。


 

 だが、知ったことか。


 俺は、

 とにかく楽に生きたいのだ。


 今コロッと死ねないなら、

 死ねる時まで疲れず過ごしたい・・・。



 ――しばらくして、

 女神様は口を開いてくれた。


〈チン・・・生殖機能を失う代わりに、

 魔法の才能を与えます。


 魔法自体はご自分で学んでいただく事になりますが、

 腎臓の分『浄化』の魔法だけはあらかじめ授けましょう。


 そして痛覚の代わりに、他の感覚が鋭敏になります。


 体毛と尾てい骨、ならびに乳首とへそに関しては・・・、

 そのぶん肌と他の骨に栄養がいくようにしましょう〉



 その後、

 さらに女神様から異世界の大まかな説明を受けて、

 前準備は終わった。


〈どうか良き人生を・・・〉

 最後に女神様がそう言うと、

 俺はまばゆい光に包まれていった。



 ――こうして、

 俺は異世界に転生したのだ。



【残り3599日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 ??は語る・・・。


「・・・『フリーター』とは色々大変なのですね。


 皆様もお疲れ様です。


 そしてできれば・・・、


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