第258話 ウーマ改装2、風呂2
昼食時にペラとドーラが帰ってきたので二人にも脱衣室と風呂場を見せてやった。
「ドーラ、どうだ?」
「すごーい。こんなことができたんだ。これならお風呂場の中で着替えが濡れないように気を使わなくて済むね」
「立派なものですね」
「もっと早くこうしとけばよかったんだけど、思いつかなかったんだ」
「じゃあ、その気になれば他のところも変えられるって事?」
「大抵のことはできると思うけど。何か要望でもあるのか?」
「うーん。今は思いつかない」
「何か思いついたら、教えてくれ。たいていのことはできると思うぞ」
「うん。分かった」
昼食を終えて後片付けが終わり、殿下たち用のタオルやバスタオルを予め脱衣室に用意してから、少し時間を置いてエリカとケイちゃんがお風呂を誘いにドリス殿下の家に向かった。
20分ほどでエリカたちが殿下たち4人を連れてウーマに戻ってきた。
「これが、カメの中!?」
殿下の最初のひとこと。
おつきの3人は半分口を開けて
ドーラが最初にウーマの中に入った時と同じ反応にホッコリしてしまった。
「ドーラちゃんもみんなと一緒にお風呂に入りましょう」
「いいのかな?」
「いいに決まってるじゃない」
そういうことでペラをのぞく女性陣7名が脱衣室に入っていった。エリカたちは着替えを手にしていたが殿下たちは膨らんだ袋を持っていた。
俺は落ち着いてソファーに座って、聞き耳を立てていた。
こういうのって何となく興味が湧くでしょ。普通。
ペラは風呂に入る必要がないのでエリカたちと一緒に風呂入らず、俺の正面のソファーに座った。バナナを応接テーブルの上に置いて二人で1本ずつ食べたものの、ペラはどうだったか分からないが、なぜかバナナの味がしなかった。
そして、風呂場方向から何も音が聞こえなかった。おかしい。いくら何でも静かすぎる。もしかして何か変事でも!?
とか言って突入するわけにもいかないので黙ってソファーに座っていた。
考えたら、脱衣室の扉が閉まった瞬間に音が途切れてしまったような。
扉が完全防音になってしまった? 可能性は十分あり、をり、はべり、いまそかりだ。
それでもやはり心配になってきたので、ペラに様子を見てきてもらうことにした。
ペラが脱衣室の扉を開けた瞬間風呂場で反響したようなエリカの笑い声が聞こえてきた。
ペラが扉を閉めた途端に音は消え、すぐにペラが扉を開け閉めして帰ってきた。確かに扉が開いたときに風呂場の方から音がした。
「マスター。特に問題はないようです」
「どうも脱衣室の扉が防音に成ったみたいだな」
そんな仕様変更を望んだわけではないのだが、これはウーマの行き過ぎたサービスなのか?
「そうでしたか。わたしにも向こう側の音が何も聞こえませんでしたから変だとは思っていました。マスター、音が聞こえなくなって残念ですか?」
直球でたずねられて、はい。とても残念です。と、言えるわけないだろ!
俺はペラの問いは無視してもう一本バナナを食べた。今度はバナナの味がした。不思議だ。
風呂から上がったら、のども乾いているだろうから、飲み物とお茶菓子でも用意しておくか。時刻は3時近いし。
と、思ったのだが、人数が全員で9人。食堂のテーブルは6人用。これでは3人あぶれてしまう。となると、殿下のおつきの3人が遠慮するのは目に見えている。
それはそれでかわいそうなので、何とかしたい。
オルクセンを解放したさい、城内の本棟の玄関の扉の先に家具類でバリケードが作られていた。そのバリケードを全部キューブに収納して撤去したのでテーブルや椅子はあるのだが、それらは場違いに凝った作りだったし、無駄に大きい。あれらでは帯に短いどころか
「10人近くになるから、食堂のテーブルが小さいなー」
「マスター。簡単に浴室が改装できたわけですから、食堂も、テーブルなども改装できるのでは?」
「確かに。洗濯機は増えたし、ドライヤーも位置が変わった上に増えてたし。テーブルが大きく成って椅子が増えても問題ない。ただ、テーブルが大きく成ってしまうと食堂部分が狭くなるな」
「ウーマの内側はいくらでも広げられるわけですから、テーブルの大きさに合わせて全体的に横幅を拡大しても問題ないのではありませんか?」
「なるほど。じゃあ、まずはテーブルを5人が向かい合って座る10人用。椅子をあと4つ。
ウーマ、お願いします」
俺たちが見ているとシュレーディンガーの猫も恥ずかしがるかと思って俺だけは目をつむって、10数えた。
目を開けたら、今までのテーブルが縦と言っていいのか横と言っていいのか分からないが一方に伸びて、さらに椅子が4つ増えていた。まさに魔法だ。
予想通り、食堂の幅が狭く感じるようになったので、ウーマの内側を2メートル横に広げてもらった。今回は変化を目にしたんだが、フーっと、視界が揺れたかと思ったら部屋が伸びた。そんな感じだった。
ウーマの中になじみのない殿下たちでは驚かないだろうが、エリカたちは今までのウーマに慣れ親しんでいるからきっと驚くぞー。
俺が見ても広さに違和感あるもの。
30分ほどでみんなが脱衣室から出てきた。洗濯もしたはずなのに思ったより早かった。
その間に俺はお茶をポットに用意しておき、ティーセットをまとめてトレイの上に置き、そのトレイをテーブルの上に置いた。お茶菓子は雑貨屋で仕入れておいた
脱衣室の中で着替えて、髪も体も乾いた状態だが、全員ほほが赤らんでいる。これはこれで非常に雰囲気がある。雰囲気があるだけともいう。
エリカたちの髪の毛はサラサラつやつやなのは見慣れているので驚かないが、ドリス殿下たちの髪の毛もサラサラつやつやになったようだ。俺たちのような成り上がり者にはない気品というかオーラがそこらに漂ってくる。ような気がしないでもない。
最初エリカたちはウーマの変化に気付かなかったようだが、やはり違和感が半端ないのですぐに気が付いたようだ。
「エド。ウーマの中広くなってない?」
「テーブルを大きくしたついでに幅を広げたんだ」
「そんなこともできたんだ。というか、よく考えたらできるのが当たり前だったわね」
「今まで気づかなかったのが不思議なくらいだ。それでテーブルも10人座れるように大きくして椅子も増やしておいた」
「お茶の用意をしておいたから。
殿下たちも、こちらのテーブルにお着きください」
「「はい」」
キューブから取り出したボッドからお茶をカップに注いでいき、それをペラがみんな前に置いていく。
殿下たちも何もないところからいきなり現れたポットには今さらなので驚かなかった。
その後、銘々皿に適当にクッキーを盛ってそれもペラがみんなも前に置いていく。
最後に俺とペラが席に着いて。
「「いただきます」」
案の定、殿下たちが奇妙な顔をしたので『いただきます』の説明をしたら殿下たちも「「いただきます」」と言ってお茶に口を付けた。
そこからはお風呂の話題でテーブルが盛り上がった。
この調子だと、食事も殿下たちと一緒になりそうというか、生活も融合してしまいそうな。まさに疑似ハーレム状態が生れる。
30分ほどそうやって話をしていたところで。
「そろそろ洗濯が終わると思います」
ケイちゃんが席を立ったので殿下たちも席を立って浴室に向かった。
その後、洗濯物が入っているらしい袋を4人が持って出てきた。ケイちゃんは手ぶらだったので、洗濯機は4人の洗濯をしただけのようだ。
「それでは、わたしたちはそろそろおいとまします」
そう言って一度席に着いていた殿下が立ち上がりおつきの3人も立ち上がった。
「今日はありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
それで俺がサイドハッチを開けて殿下たちを送り出した。
「エド、殿下にいつでもお風呂に入りに来てくださいって言ったんだけど、いいよね?」
「もちろんだ」
「それじゃあエドもお風呂に入ってきたら。
冷めちゃってるかもしれないからお湯を入れ替えた方がいいかも」
「熱い湯を足せば大丈夫だから」
エキスを入れ替えるなど言語道断!
「それなら、良いんじゃない」
俺はお言葉に甘えてエキス風呂を堪能するため脱衣室に入った。
そこで裸になって浴室に入り、かけ湯をして湯舟に浸かったら確かに温い。
それでも薄める前のエキス風呂なのでそこで3分ほどじっとしてそれから熱いお湯をガーゴイルから注ぎ、ちょうどいい湯加減になったところでお湯を止め、肩まで浸かってさらにゆっくりした。
「ふー。生き返る」
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