第150話 13階層反対側2
俺たちは12階層とそっくりな階層を通って階段部屋にたどり着き、そこから階段を上り始めた。階段を上る順序は、リンガレング、俺、エリカ、ケイちゃん、ペラの順だ。
もし階段を上った先が11階層と同じなら黒スライムが湧き出てくるかもしれないので、黒スライムの対応をリンガレングに任せるためだ。
いち早く階段を上り終えたリンガレングに続いて階段を上り終えた俺は周囲を観察した。
そこは11階層と同じ泉の真ん中の小島で、階段を上がったその先には宝箱があった。
下から上ってくると宝箱はないという仮説は脆くも崩れ去ったが、仮説なんかより宝箱の方がいいのは確かなので、素直に喜んだ。
それで、肝心の黒スライムだが、それラシイのが湖からこちらに向かって近づいてきている。
それに対してリンガレングは突っ込んでいくでもなくしばらく突っ立ったままだったがいきなり、
『敵性生物を確認。リンガレング、終末回路ロード。……ロード完了。『神の鉄槌』発動!』
リンガレングの頭部の下半分が横に開き、そこから青白い光が小島を囲む泉に向けて発射されリンガレングは位置を代えながらも光を放ち続け光の先端が泉を一周した。
リンガレングの放った青白い光を浴びた泉の水は黒スライムごと凍り付いていき、結局小島を囲むステートリンクができ上ってしまった。
リンガレングの『鉄槌をドーナツ状に発動!』という声が頭に響くと同時にグシャンという大音声が空洞に響き渡り、粉々に砕けるような感じで黒く見えていたスケートリンクに無数の白いヒビが走った。
『終末回路アンロード。……完了。マスター、敵性生物の殲滅完了しました。汚染は起きていません』
声も出ない。とは、このことだ。エリカもケイちゃんも言葉はないようだ。しかし、俺までそれではリーダーとして失格なので、リンガレングをほめておいた。
「リンガレング、よくやった」
『はい』
凍り付いた泉からの冷気で肌寒い中、階段の脇にあった宝箱を開けたところ11階層で手に入れたのと同じく赤と黄色のポーションが縦横12個。合計12ダース、144個ポーションが入っていた。
凍らせたうえで何らかの力を上からかけて泉の氷ごとモンスターを砕いたのだろう。
おそらくモンスターの凍結が緩めば毒ガスが発生するだろから、ポーションを持っているとはいえここからは早めに退散した方がいいだろう。
俺たちは凍った泉を対岸に渡った。氷の上をブーツで歩いたわけだがヒビだらけだった関係で滑ることもなく渡れた。
空洞の先が坑道につながっているのはサクラダ側の11階層と同じだったので、坑道を道なりに進んでいけば階段下の空洞に出られそうだ。
そこから30分弱坑道を歩いて行くと予想通り階段下の空洞があった。
人もいなかったのでそこで小休止を取ることにして装備を緩め水を飲み壁際に座った。
「リンガレングのアレって、いったい何だったの? リンガレングの青白い光で泉が凍ったんだよね?」
もっともな質問だ。
「分からないけれどとんでもない能力をリンガレングが持っていることは分かった。
無敵なんじゃないか? 言っちゃ悪いが俺たちの剣なんかおよびでないレベルだ」
「そうだよね。もしリンガレングが敵になったらエドはたおせる自信がある?」
「もしそうなったら、死ぬしかないだろうな。その代り痛みはないんじゃないか?」
「レメンゲンでも相手になりそうもないものね」
「うん。レメンゲンの力をもってしてもリンガレングは止められないと思う」
「エドが死ぬ間際にリンガレングにレメンゲンを壊してもらうのはどうかな?」
「壊すという意味だと、リンガレングでもレメンゲンは壊せないと思う。俺が死ぬ間際まで覚えていたら試してみてもいいけどな」
「わたしが覚えていてあげるからそこは安心してていいよ」
「じゃあ、頼んだ」
「うん。わたしに任せて」
エリカは今、俺が死ぬまで一緒にいてくれるつもりだと言ってくれたわけだ。ありがとう。
階段の先に10階層の階段前のモンスターがいるとして巨大ガエルだ。ペラが両手の四角手裏剣を放てば巨大ガエルを仕留められると思う。休憩時間中にそのことをペラに教えておいた。
10分ほどの休憩が終わり、装備を整えて俺たちは階段を上っていった。俺の両手にもペラ同様四角手裏剣が一つずつ握られている。もし2発で片が付かなかった時、追加で四角手裏剣をペラに渡すためだ。
今回のフォーメーションは先頭は四角手裏剣のペラ、次は俺、エリカ、ケイちゃん、リンガレングとした。
モンスターがいなかった場合は他のダンジョンワーカーに出くわす可能性があるのですぐにリンガレングをキューブに収納するつもりだ。
60段を上り切る手前から、その先に巨大ガエルが見えた。
ペラは階段をかけ上り、バックアップの俺も駆け上がった。
30メートルほど先でこちらを向いた巨大ガエルに向けてペラが右手に持った四角手裏剣を投げた。
四角手裏剣は文字通り目にもとまらぬ速さで巨大ガエルの眉間に命中し大きな音と一緒に巨大ガエルの額が吹き飛んでしまった。
それだけで巨大ガエルは全く動かなくなったので試しに収納したら収納できてしまった。
宝箱を探したのだが、今回は宝箱はなかった。宝箱の法則性は不明だ。
ないものは仕方ない。
エリカが何か言っているのを聞き流し、ペラに四角手裏剣を補充し、余った手裏剣はキューブに収納しておいた。
ここから先はいつ他のダンジョンワーカーに出会うか分からないので、念のためリンガレングは収納しておき、ここからは俺が先頭になって上り階段を目指して坑道を進んでいった。変な目で見られないようランタンを点灯してリュックに取り付けておいた。
そこから30分。坑道を道なりに進んでいったら階段下の空洞に到着した。
もうここはサクラダダンジョンと同じ構造をしていると考えて良さそうだ。
問題は、このダンジョンの渦を抜け出た先はどこなのかというところだ。
ダンジョンの入り口はヨーネフリッツにはサクラダしかないので、ヨーネフリッツ以外の国ということになる。そんなところにヨーネフリッツ人の俺たちがひょっこり現れていいのか?
とはいえ、ここまできた以上この先を確かめたくなるのは人情だ。幸いなのか分からないがここまでで他のダンジョンワーカーにはあっていない。
そういうことなので俺たちは、目の前の階段を上っていった。
次の階層はサクラダダンジョンで言えば9階層になる。その通りならあと4時間歩けばダンジョンの渦だ。
階段を上り切った先にはモンスターはいなかった。ということは階段前のモンスターはたおされているということで、このダンジョンは未踏のダンジョンではなく、しかも10階層(仮)にダンジョンワーカーは進出しているということだ。そろそろダンジョンワーカーに出会ってもおかしくないと思うのだがどうなんだろう?
階段を上り切り、坑道なりに30分ほど歩いたら予想通り階段下の空洞にたどり着いた。この間も他のダンジョンワーカーには出会わなかった。
次の8階層(仮)を階段下に向けて坑道なりに歩いていたら、ついに他のダンジョンワーカーに出くわした。
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