第137話 再び13階層


 13階層から帰還したギルドの雄鶏亭での反省会もお開きになり、いい気分で家に戻った俺たちは2階の廊下で別れて各自の部屋に入った。


 明日からまたダンジョンなので、俺は下着姿になってそのままベッドに潜り込んで魔力操作をしていたら寝入ったようだ。



 翌朝。装備を整え戸締りをした俺たちはギルドに向かった。

 雄鶏亭で朝食を摂りその場で装備を整えた俺たちは渦に入っていった。


 11階層の泉の前まで途中小休止を一度取って到着した。そこでキューブから取り出したウーマに乗り込んで泉を渡り、渡り終わったところでウーマから降り、ウーマはそのままキューブに収納して俺たちは12階層に下りて行った。


 階段下からは罠を避けながら13階層への階段部屋に移動して、そこから300段の階段を下りて行った。


 13階層に下り立ったら、キューブから取り出したウーマに乗って24時間で柱の根元に到着だ。その間ペラは見張りだが俺たちは基本ゆっくりできる。



 階段下でウーマに乗り込み、ウーマを柱に向けて発進させた。時刻は12時30分。

 ウーマが動き出したところで昼食となった。


「やっぱりウーマの中が一番よね」

「何でもそろっていますしね」

「ケイちゃん、食事が終わったらさっそくだけどお風呂に入らない?」

「いいですねー」


 ここのお風呂はもちろん温泉ではないが、いつでもお風呂に入れるわけだから温泉のようなものだし。シャンプーもリンスもボディーソープもあるわけだから女性陣からすれば極楽なのかもしれない。


 食事が終わったところでペラは見張りに立ち、俺たちは食後の後片付けをした。

 そのあと俺はペラのところに行って一緒に前方を見張り、エリカたちは風呂の用意をしてそのまま風呂に入った。


 ……。


「ふー、気持ちよかった」

「エドも入ってきたらどうですか?」

 30分ほどして風呂上がりのエリカとケイちゃんが俺のところにやってきた。

 もう二人の髪も乾いているようでサラサラだ。しかもいい香りが漂ってくるではないか。

 シャンプーとリンスは文明の利器だものなー。


 あまり早くから風呂に入ると疲れが出そうな気がしないでもないけれど、疲れが出たところでどうってことはないのでお言葉に甘えて俺も風呂に入ることにした。


「そういえば、ペラ?」

「何でしょう」

「ペラは風呂に入らなくてだいじょうぶなのか?」

「布で拭くだけで大丈夫です」

「体はそれでいいかもしれないが、髪の毛なんかは洗った方がいいんじゃないか?」

「体毛などは一度体の中に入れて再度出せば清潔になっています」

 なるほど。

「そういえば、ペラはメンテナンスボックスはこに入らないといけないんじゃなかったか?」

「はい。まだ数日は入らなくて大丈夫です」

「でも入ってもいいんだろ?」

「はい」

「俺が風呂から出たら、ペラはメンテナンスボックスはこに入ってこいよ。その間俺が見張りを引き受けるから」

「はい。了解しました」


「ペラ。エドがお風呂に入っている間わたしが見張ってるから、ペラは箱に入ってきていいわよ」

「ありがとうございます」


 見張りはエリカとケイちゃんが立ってくれたので、俺は浴室に入りペラは寝室に歩いて行った。


 洗濯機は稼働中だったので、脱いだ洗濯物はキューブにしまった。


 湯舟から桶でお湯をすくい、かけ湯をして湯舟に入る。


 ふー。美少女エキス入りのお湯で生き返るー!

 

 しばらくエキスを堪能した俺は湯舟から上がって体を洗い髪の毛も洗った。

 気持ちいー。


 ウーマの中は王侯貴族でも手に入らない贅沢空間だ。ダンジョンワーカーに成りたいと思い、こうしてダンジョンワーカーに成った過去の俺をほめてやりたい。


 もう一度エキスを堪能してから湯舟から上がり、体を拭いて服を着て風呂場からでた。

 風呂から出た先のドライヤーで髪の毛から体全体を良く乾かし、見張りに立ってくれていたエリカたちのところに歩いて行った。


「いやー、お風呂最高だな」

「ウーマを家の庭に出しておきたいんだけど、マズいよね」

「騒ぎになるだろうな」

「そうよねー。まあ、この階層にいる分には安心だから。そうだ! いっそのことこの階層に住んでもいいかも? ここを拠点にして用事がある時だけ外に出れば十分じゃない?」

 確かに。柱の中にモンスターはいないようだったし。あの中には果物が豊富だったし。

「案外いいかもしれないな」

「でしょ」

「食料はウーマの中に十分ですしね」

「うん。

 今回はそのつもりで柱の中を調べてみるか?」

「それもいいけど、一度あの階段を上ってみようよ」

「それもそうだな。階段を上っていけば上からあの階層を見ることができるしな」


「そろそろ夕食の用意がしたいから、ペラが出てくるまで二人は見張りしててくれるかい」

「分かった」「はい」


 見張りを二人に任せた俺は台所に立って食事の準備を始めた。

 まずはご飯だ。

 カップで4杯ほどの米を鍋の中で研ぎ、コメの高さから3センチくらいになるようにして水を入れ蓋をしておいた。


 次はスープだ。スープの残りはあるのだがだいぶ少なくなってきているので、時間があることだし新しく作ることにした。

 いつものイモとニンジンとタマネギを調理台の上に取り出し、イモとニンジンを洗って、皮を簡単にむき、ザックリと切って大鍋の中に入れていく。タマネギは薄皮をむいてこちらもザックリと切って大鍋に入れていく。

 そしてキャベツを取り出し、外側の葉っぱをむしって2等分して、それをまたまたざっくり切っていったんボウルに入れておいた

 そのあと俺は食料庫に入ってソーセージを持ってきた。ソーセージにもいろいろ種類があったが、その中から、いい出汁が出るだろうと、くん製したようなソーセージを今回は選んだ。


 ウィンナーソーセージのようにつらなったソーセージをバラバラにして大鍋に投入。水をひたひたになるまで入れて加熱板の上に置き『強』で加熱。


 その辺りでペラが寝室から出てきてエリカたちと見張りを交代した。


 くん製っぽい匂いが鍋から漏れてくる。


 見張りをペラと交代したエリカとケイちゃんが台所にやってきた。

「何? この匂い」

「今回はくん製ソーセージでスープを作ってみたんだ」

「おいしそうな匂いがする物なのね」

「だろ?」


 沸騰し始めたところで灰汁を取り、そこでキャベツを投入。再度沸騰したところで塩を入れて味を調節し、加熱板の火力を『弱』にした。10分もすればでき上るはず。

 次にお米を水に浸して置いておいた鍋を加熱板の上に置いて『弱』加熱。その先は前回と同じように火加減を見ればいいだけ。

 ご飯が炊けるまでに鍋の方は火を落としてキューブに収納しておいた。


 しばらく火の番をしていたらご飯のいい匂いも立ち込めて、蒸らしに入った。

 スープとご飯だけでは寂しいので、ズッキーニとナス、それに豚肉を取り出して野菜炒めを作ることにした。野菜沢山だな。


 まずナスを輪切りにして水を入れたボウルに入れ、灰汁をある程度取る。

 次にズッキーニを輪切りにする。

 最後に豚のブロックを薄切りにして、油を敷いたフライパンに投入。

 豚肉に火が通ったらズッキーニと、水をザルで切ったナスを投入。

 そこで、塩コショウ。

 ヘラでかき混ぜてナスとズッキーニに火が通ったらフライパンから大皿にとって出来上がり。

 うん。これでいいでしょう。


 調理道具を片付け、しばらく休憩して午後6時にみんなを呼んで夕食を始めた。

 見張りのペラも呼んでいるが、ウーマはそのまま移動させている。

 テーブルの上にはご飯、くん製ソーセージの具だくさんスープ、そしてナスとズッキーニの野菜炒め。


「いい匂いがしてたから、早く食べたかったー」

 俺もそうだ。味見していたので味は保証できる。

「それじゃあ「いただきます」」


「このスープ。おいしい!」

「ほんとですねー」

「マスターはすごいです」

 ほめられて伸びる俺だ。どんどんほめてくれ。


「このスープ、エドが考えたの? それともエドのうちでこんなの食べてたの?」

「俺がさっき考えた」

「エド。どんどん料理がうまくなっていくじゃない」

「いやー、それほどでも」

 おだてられても伸びる俺だ。どんどんおだててくれ。


「野菜炒めがまた白麦にピッタリ!」

 エリカの中では米とご飯は白麦のようだ。俺もそれにのっかろう。



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