第135話 帰還


 階段下でウーマの中で1泊し、翌朝朝食を食べ終えた俺たちは装備を整えた階段を上り始めた。


 帰り道のフォーメーションは俺、エリカ、ケイちゃん、ペラの順だ。ウーマはキューブに収納しておいた。


 階段が300段もあると考えるときつそうだが、柱の中の階段を上ることを考えれば大したことないと思えるところが面白いところで、実際上り終わってみてもそれほど疲れていなかった。

「休まないで大丈夫か?」

「「大丈夫」」「はい」


 ペラは罠の位置が分からないので、必ず前の者の立った床石以外を踏まないように言っているので、12階層でも問題なく移動でき、休むことなく11階層への階段部屋に向かって歩き続けた。


 11階層では島に渡した橋が数カ所水没してたが、わざわざ直すことをせずキューブから出したウーマに乗って泉を渡ってしまった。


 渡り終わったところでウーマはキューブに収納しておいき、ペラの今の格好はどう見ても普通ではないので、ペラも一緒に収納しておいた。


 途中小休止を2度ほど挟み渦を越えて俺たちは昼過ぎにギルドに到着した。


 お腹は少々空いていたが、ペラに普通の格好をさせて食事するため、俺たちは渦を抜けたらそのままホールを抜けてギルドを後にし、わが家に帰った。


 家に帰ったところでペラをキューブから出し後はエリカとケイちゃんに任せた。

 俺自身は部屋に戻って装備を外してペラがそれっぽい服を着るのを待っていた。



 10分ほどでエリカが俺を呼ぶ声がしたので部屋を出たら、ペラがちゃんとしたスカート姿で立っていた。

「ギルドに行って軽く食事してから、ペラの登録をしよう。それが済んだらペラの服だ。防具は大丈夫だったんだろ?」

「胸当てとヘルメットはわたしが前使っていたのでいいみたいだったわ。手袋とブーツは新調した方がいいと思う」

「了解」


 家を出てギルドに向かい、雄鶏亭に入ったらいつもの4人席はちゃんと空いていたので4人で席を埋めた。ペラの席は俺の正面だ。これでフルメンバーということなのだろう。と、なんとなく思ってしまった。

 すぐにマスター兼給仕のモールさんが注文を取りにやってきた。


「新人か?」

「今度俺たちの仲間になったペラです」

「ペラと言います。よろしくお願いします」

「ここのマスターのペーター・モールだ。よろしくな。俺のことはモールでもペーターでも好きな方で呼んでくれ。

 しかし、また美人か。美人3人も連れてうらやましい限りだ。まあ頑張れよ」

「「はい」」


 注文した定食と軽いつまみ、それにエールが運ばれてきたところで「「かんぱーい!」」


「今回は大成功だったなー」

「ホントにそうよね。ペラが仲間になったし、ウーマがウーマだし」

『ウーマがウーマだし』というのは言いえて妙だな。

「ここだとお風呂が入れないし、洗濯は大変だし早く潜りたいわよね」

「そうだな。今日はこれから買い物だけど、明日はさっそく潜ろうか?」

「わたしはそれがいい」

「わたしもそれでいいです」

 ペラは遠慮して何も言わなかった。ペラといえども遠慮する必要はないがそもそも遠慮したわけではなくこういったことについての意見がないというのが本当のところなのだろう。



 食事を終えた俺たちはペラの登録をするため窓口に回った。


「エルマンさんこんにちは。登録お願いします」

「そちらの方ですね?」

「はい」

「登録料は銀貨1枚になります」

 出納係の俺が銀貨1枚をカウンターの上に置いた。

「お名まえと生年月日をお願いします」

「名まえはペラです。生年月日は、……」

「343年6月1日です」と、俺が代わって答えておいた。

 ケイちゃんの誕生日の1カ月後の17歳だ。


「ペラさん、つづりはこれで間違いありませんか?」

 書類に書かれた名まえを俺が確かめて「間違いありません」と、俺が答えた。

 エルマンさんその書類を持って奥に行きすぐに戻ってきた。

「わたしの名まえはショーン・エルマンと申します。ギルドの身分証を兼ねるタグができ上るまで当ギルドの説明をいたします」

 エルマンさんがそう言って説明を始めた。

「…。以上が当ギルドの規則です」

 そのあとケイちゃんの時と同じく図書館や寮の説明があり説明は終わった。


 エルマンさんの説明の後、エルマンさんのところに届けられたタグを受け取り、俺たちはエルマンさんに礼を言ってカウンターから離れた。


「それじゃあ、先に防具を見に行こう」

「その前に、ワイバーンを売りましょうよ」

「そうだった」


 今度は買い取りカウンターに回ってゴルトマンさんに、大物があるのでお願いします。と言った。

「新人を連れてるのか」

「ペラと言います。よろしくお願いします」

「俺はここで買い取りを任されているゴルトマンだ。よろしくな。

 それでお前さんたちが大物というからにはそれ相応なんだよな?」

「見ていただければ」

 ということで、ギルドの裏手にある例の倉庫に連れていかれた。


「それじゃあまず1匹出します」

 ペラの投げたレンガで頭を勝ち割られたワイバーンを倉庫の中に取り出した。

「なんじゃー!? こりゃー!」

「ワイバーンじゃないかと。大きすぎたので血抜きはまだですが、首筋を切り裂いて何とかそこを下にすればちゃんと血は抜けると思います」

「はーん。ところで、どこでこれを?」

「13階層で」

「なにー!? まあいい。これは値段が出せないな。何とか明日の昼までには値段を決めておく」

「それが、まだ4匹いるんですが……」

「なにー!?」

「今引き取れないなら、そのうちでもいいですよ」

「済まないがそうしてくれ」

「俺たち明日も潜るつもりなので、次来た時値段とか教えてください」

「分かった」

「それじゃあ、よろしくお願いします」



 倉庫を出た俺たちは、そのままハインツ防具店に向かった。

 そこでペラ用に手袋とブーツ、それに胴着とズボンを買った。胴着とズボンについてはそれぞれ2つずつ買っておいた。手ぶらで十分らしいペラだが、剣帯を用意すればエリカの前の剣とか俺の前の剣を格好だけでも下げられるので、剣帯も買っておいた。

 最後に店の人にダンジョンギルドのタグを首からぶら下げたいので適当な革紐がないか聞いたところサービスしてくれた。


 ハインツ防具店で買った諸々は店を出たところでキューブに収納しておいた。


 次は、ペラの普段着なのでエリカとケイちゃんに任せて、俺は食料品の補充のため商店街に回ることにした。

 とは言っても、ウーマの中にたいていのものはストックされているので、乾物を中心に買う予定だ。

 ウーマの中の台所には加熱板の余裕があるので乾麺を買ってみるつもりだ。うどんになるのかソーメンになるのかスパゲッティになるのか分からないがちょっとシェフとしての本能がうずくのだ。あとはだいぶ少なくなった干し魚。



 乾物屋で目当てのものを買った俺は、そのあと雑貨屋に回ってペラ用にリュックとボロ布を買った。一緒に歩くときペラだけ何も背負っていないとおかしいからな。


 思いついた物を買い終えた俺は家に帰って、ペラ用に先ほど買ったリュックの中に防具なども入れて、エリカたちが返ってくるのを待った。


 大体2時間くらい待っていたら3人が帰ってきた。

 結構な荷物だったようだが、どうやらペラ一人分ではなくエリカもケイちゃんも自分用の普段着を買ったということだった。


 ペラの衣服についてはエリカが立て替えてくれていたのでその分はチームの財布からエリカに返しておいた。


 ペラの部屋は空いていた一部屋にして、俺からは荷物を入れたリュックを渡しておき、エリカたちは今日買ったペラ用の普段着を渡した。これでペラの衣住い、じゅうは整ったはず。


 俺たちは、夕方6時に今回の反省会をするためギルドに向かおうということにして解散した。


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