第16話 Bad end



 シンタロウは予想もしていなかった激戦の中にいた

 共和国の兵がこの屋敷を囲み、出入り口以外にも

 壁を破壊して、次々と屋敷の中に入って来る兵たちに

 シンタロウは休むことも出来ず

 それどころか、考える時間さえも与えれれない

 

(クソーーーなんなんだ、こいつら、次から次に)


 槍が何本もシンタロウに向かって飛んでくる

 まだシンタロウの体に刺さってはいないが

 狭い部屋の中の戦いだ、共和国の方も

 その兵力を生かしきれて、いないが

 それで、シンタロウが有利になっている訳でもない

 何人かの屍を築いた所で大賢者が話しかけてくる


{シンタロウ、そろそろ逃げないかい?}


 共和国兵と戦闘中でそれどころじゃなく

 つい、シンタロウも乱暴に答えてしまう


(嫌だ・・・まだ何もしてないんだから)


{そうだろうけど、もう終わりにしよう・・・引き時だよ}


(もう少しだったんだ、ここで引き下がれる訳ないだろう)


{シンタロウ、十分じゃないが時間とチャンスはあった

 生かしきれなかったのは、君の責任だ・・

 さあ・・・これ以上は私も責任を持てないぞ

 いますぐ逃げるぞ、いいね?}


(駄目だ・・・・あいつらに復讐しないまま、引き下がれない

 ノゾミさんには、解らないんだ、、僕の気持ちなんか

 恵まれてこの世界に産まれたノゾミさんに僕の気持ちが

 解るものか)


 今、言うべき事じゃないだろうし、シンタロウ自身も

 言うつもりは無かったのだが

 共和国兵との戦いの焦りと、ノゾミに攻められ

 つい、口から漏れてしまった

 シンタロウもしまったと思ったが

 1回漏れると、もう抑えることが出来なくなってしまった


(そうだ・・・ノゾミさんは恵まれて生まれた癖に

 僕をいつも馬鹿にしてる・・・僕だってこんな風に産まれたくなかった

 僕だってノゾミさんと同じ能力で産まれていたら)


 シンタロウの苦悩はノゾミには辛いがよく理解できる物だった

 だが・・・その苦悩はノゾミには何も出来ない事もよく解っていた


{わかったよ、シンタロウ・・・好きに生きたまえ・・・

 最後の忠告だ・・・・今すぐに逃げろ}


 その言葉を聞いて、シンタロウもようやく頭が冷えたんだろう

 

(ごめん・・・あの・・・ちょっと口が滑ったて言うか、ノゾミさん・・・・?) 


 だが大賢者は答えない


(はは・・・意地悪しないでよ・・・本当に僕が危なくなったら 

 助けるつもりなんだよね?)


 シンタロウは焦り、目の前にいる兵から、ほんの一瞬だが

 注意がそれてしまった、ほんの一瞬だが

 致命的な一瞬、シンタロウが気付いた時には

 すでに共和国兵の槍が右肩に刺さり

 それを見つめるシンタロウの体に、次々と槍が刺さっていく

 

「ぐあぁああーー僕の体に槍が・・・どんどん刺さっていく」


 相変わらずの、誰かに説明しているような悲鳴を上げ

 シンタロウの意識は、途切れる


 大賢者はこの時まで、迷っていた、いま手を出さないと

 もう、助けるのは不可能になるかもしれない

 共和国だって馬鹿じゃない、いやどちかと言えば有能な

 集団だ、1回逃げられているのに、同じ間違いは侵さないだろう

 

 シンタロウが共和国の兵に運ばれているのを見ながら

 大賢者は迷いを捨てることに、する



 

  

 


 次にシンタロウが意識を取り戻した時

 そこが何処かシンタロウには全然解らなかった

 まったく身動きが取れず、真っ暗で何も見えない


「なんだここ?・・・出せ・・・ここから出してくれ」


 これは棺桶なのか?・・そうシンタロウが、思ったとき

 足元から微かな光が漏れ、、またあの液体が流されてくる

 2回目の経験でシンタロウにも、これから何が起きるのか 

 すぐに予想が出来、恐怖の声をあげ

 泣きながら、大賢者にノゾミに助けを求め始める


(助けて・・また燃やされる・・謝るからごめんなさい

 大賢者・・謝るから、助けて・・・・ノゾミさん謝るから意地悪しないで)


 だが、大賢者もノゾミも、答えてくれなかった


 炎がまたシンタロウの全身を焼き始める

 苦しみにのたうち回りながら、シンタロウは助けを呼び続ける


(お願い・・謝るから・・もう忠告を無視しない・・・言う事を全部聞くから

 助けてよ・・・ノゾミさん・・・)


 ノゾミはやはりシンタロウには甘いのだろう、もう無視すると

 決めていたのに、つい口を出してしまう


{残念だけと・・もう遅いんだよシンタロウ・・ここから助けるのは不可能だ

 ここは地下に埋められた、棺桶の中、可燃物と酸素だけ一方から

 送られるように出来てるし丁寧な事に、火が外に出ない結界のような物まで  

 付けられている}


(そんな・・・そんな・・・何とかしてよ、本当はノゾミさんなら、

 なんとかできるんでしょう?)


{残念だが、もう無理だな}


 突き放したような言葉にシンタロウは、我慢できず

 思いついた罵声をノゾミにだしてしまう


(ふざけるな、、僕がなんでこんな目に合わないといけないんだ

 ノゾミさんのせいだ・・ノゾミさんがちゃんと初めから教えてくれれば

 こんなことにならなかったんだ・・・責任とれよ・・取って僕を助けてよ)


 シンタロウの憎悪の叫びはノゾミには堪えた

 確かに半分は自分のせいだろうと、その責任は確かに取らないといけない


{シンタロウ、君を助けることはもう不可能だ・・

 君がもう苦しみたくないなら・・・私が君を殺し

 君の体を完全に私の物にする・・・・、}


 ノゾミの出した言葉にシンタロウはすぐに反応する

 もう、助からないのなら・・・


(解った、僕を殺して・・・もう苦しみたくない・・・・)


{解ったよ・・・シンタロウ・・・君は、どうしようもない奴だったが

 君との出会いは楽しかったよ・・・さよならだ}


 ノゾミからの別れの言葉にシンタロウの最後の愚痴が出てしまう


(僕だってノゾミさんみたいに産まれていれば、もっと上手くやれたのに

 でも・・・ノゾミさん・・・いろいろありがとう、)


 シンタロウの意識は完全に消え、ノゾミがその体を支配する















 ノゾミは大きく溜息をつくと、側にいる奴隷女に水を注ぐようにコップを差し出す

 なみなみと注がれた水を飲みながら、ノゾミはシンタロウの事を考えてみることにした


 佐々木慎太郎って駄目な男のコピーとして産まれたのが

 シンタロウにとって不幸な事なのはよく理解できる

 だが、シンタロウが産まれて1年近く側で見ていたが、

 シンタロウは、佐々木慎太郎を超えることが出来なかった

 それが一番の不幸なのだろう


「ふう・・・汗もかかず、努力もせず、チャンスが向こうから来るのを待っている

 それが2024年の男の生き方なら、日本の未来は暗いわね

 まあ・・・彼が、特別駄目な男だったのだと思いたいわね」


 今回の召喚はノゾミにとって一番つらい結果に終わってしまった

 もしかしたら次の召喚は無いかもしれない

 これからの歴史・・・シンタロウとの思い出が頭に浮かび

 

 ノゾミはもう一度大きな溜息を付くと一言つぶやく




「Bad end」

************************************************

最後までお読みいただき、ありがとうございました

今回の物語は、今までで一番辛かった

正直な所、書いてても面白くない

まあ、最初に考えたコンセプトが最後までブレず

この終わり方も、最初に考えてた、ままです


コンセプトはよくある、なろう系主人公

ブラック企業の社畜とか陰キャのボッチゲーマ

そんなのがなんで異世界に行ったくらいで

周りに認められて、女の子にモテモテになってハーレムを作れるのか?

話しの中でも書いていますが、この世界でダメなら、異世界に行ってもそいつは駄目だろ

たとえチート能力を貰っても、人間性や元のスペック

コミュニケーション能力に変わりが無いのに

どう考えても、納得がいかない


ですが今回の物語を書き終え、少し考えが変わりました

ダメ人間を、そのまま書いても読者に共感してもらえるような

魅力的なキャラにするのは、難しい

まあ、、そのへんは私の実力不足もありますが


そのへんの反省もしながら

次に作るキャラは、読者の皆様に共感してもらえるような

魅力のあるキャラにするにはどうすればいいか

その事を、考えたいと思います  


長々とお付き合いありがとうございました

次の物語でまたお付き合い、いただければ幸いです            

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