第3話タカハシ商会のユーマさん。
こんな辺境の村に商人が月一来るんだ。
そんな日は朝からみんなソワソワしてる。
「うふふ・・。みんな朝から落ち着かないわね〜。」
母さんは台所の窓から街の風景を見ながら、料理の準備をしていく。
辺境村に移ってからかれこれ3ヶ月。元貴族とは思えないくらいに
村に母さんも父さんも溶け込んでる。
二人で農地を耕したり、村民から教わって陶芸をしたり工芸品を作ったりして
農民ライフを満喫している二人。
僕は母さんに教わって刺繍をしたり、掃除を手伝ったり、お料理の準備を手伝ったり、父さんには文字や地理、計算などなどを教わってるんだ。
そして日が暮れるまで友達と遊ぶ。
意外とたくさんやることあるでしょ?
勉強とか休んで友達とすぐに遊びに行きたいなあと思う時があるけど、今日知らないことが明日知るようになるのがなんとなく楽しくって続けてしまうんだ。
月一の村に商人が来る日は勉強とかもお休み。
僕もみんなとソワソワしてしまう。
午後牛の刻。商品を積んだ馬車がやってくる。
「こんにちはー。タカハシ商会です!商品をお届けに来ました。」
「おー!ユーマ殿。お待ちしておりましたぞ!!」
「どうも。村長さん。一月ぶりですねえ・・。」
ユーマさんは大変珍しい格好をしている。
黒髪黒眼というだけでも珍しいのに、スーツという服を着ているんだ。
なんでも暑いとき以外はこのスーツを着ることがタカハシ商会の決まりになってるみたい。
「しかし・・天下のタカハシ商会がわざわざこの村にまできてくれるとは・・。」
「いやいや・・それはこちらこそですよ。これからも我が商会をご贔屓してくださいよ!」
「ああ・・もちろんだとも!!」
村長とユーマさんが喋りながら、ユーマさんが持ってきた商品が積んでいる馬車から荷物を出していく。
「そういえば。ニドさ・・じゃないニドくんいるかな?おーい」
うん?僕を呼んだ?なんだろう??
僕は父さんと母さんを見上げる。二人とも首を傾げながら僕と一緒にユーマさんのところに行く。
「ご機嫌麗しゅう。ミドロス様。アイリーン様。」
「ユーマ殿。私たちはご覧の通り村民なのだ堅苦しい挨拶はやめてくれないか。」
「そうよユーマ様。わたくしの扱いは他の方と一緒にしてちょうだい。私いまの方が性に合ってるのよ。」
「かしこまりました。」
ユーマさんは僕の方に目線を合わして屈んで、いったんだ。
「ニドくんさ。前に来たとき、ポロって言ったよね?うちの村人のクラフト技術高いから、村で作ってる陶器や工芸品、売れたりできないかな?って」
うん??あれ??言ったかな??
「言った言った!!ニド面白いこと言ったなって思ったもん。」
遊び仲間のモリスが会話に入ってきた。
「うん?ぼく。そんなこと言ったの??」
「ああ・・。ミレイもターナーも聞いたよな?」
いつの間にか遊び仲間が全員集まってた。
「うんうん。ニドくん。うちの編みかごを可愛いって言ったじゃん。」
「ニド。言った。俺の親。すごく喜んでた。親父が作る器が好きって言った。」
ミレイの親はこの村の中であみカゴの名手で、ターナーの親は器作りの名手なんだ。
それはわかってるんだけど、僕ユーマさんに売れたりできないかな?って言ったのか??
あ・・これは悪い癖が出てしまった。
僕は父さんと母さんを見て困った感じで見上げると二人はすぐに察知した。
「ユーマくん。うちの子が言ったことがなんかあったのかな?」
父さんが流れを汲んで聞いてくれた。
「そうなんですよ!ニドくんがそう言ったので、俺も気になってこちらの村の商品を持ち帰ったんですよ。俺はあんまり詳しくないのですが、こちらの商品って民藝になるらしくって、この村の商品を商会長が気に入ったんですよ。」
僕はピンときてこなかったが、その話を聞いていた大人たちは一気に歓声を上げた。
「ねえねえ・・。父さん。母さん。なんで大人たちみんなこんなに喜んでるの?」
「あ・・ああ。そうだな。一つ言えるのはニドはこの村に取ってとてもいいことをしたんだよ。」
「そうなの?」
「ああ・・そうさ。タカハシ商会というのはイミドナ王国に本店を構える商会なんだ。イミドナという国はわかるだろ?」
「うん!父さんに教わった。この村からえっと・・リリアンヌの森から反対側に海が見えるまでずーっと行ったところにある国だよね。」
「そうだ。そこの国はバルタン教団が牛耳っていてひどかったのだが、つい最近というかかれこれ5年くらい前から急にこの国の人たちの文化的水準が一気に高くなってね。その立役者がタカハシ・・・商会なんだよ。そこからタカハシ紹介はイミドナ王国を皮切りに、各国に支店を出して大きくなっていったんだ。
うちの国もタカハシ商会の支店があったんだよ。ニドはわからないかもしれないが。」
僕はまだピンときてない。
母さんは呆れ気味に父さんにいった。
「あなたは説明する時は無駄に長いのよ。ニドちゃん。タカハシ商会はこの世界の各国に支店があるから、この商会に商品を売りに出すということはこの世界の各支店に
うちの村の商品が卸されるっていうことなの。」
母さんの言葉を聞いて僕はやっと意味がわかった。
「うわーすごいやすごい!!」
ユーマさんは意味がわかった僕が喜んでるのを見て優しい視線を向けてくれてる・・。
「というわけで、どうでしょうか?こちらの村の商品をブランド化するっていうのは?」
ブランド化という言葉に村長とかピンときていなかったが、父さんと母さんとココ姉ちゃんとミランおじさんはピンときたようだ。
さすが元貴族と元執事と元専属侍女。
「村長。これは実にいいことですよ!」
「うん?そうなのですかな??私はそういうのが疎いもので・・。」
「村長さん。今から村人を集めてください。ブランド化ということに
説明しますから。」
ああ父さんが目をキラキラしてるよ。本当にこういう説明するの好きだよね。
母さんとミランおじさんとココ姉ちゃんはまたかという表情になってるし、
ユーマさんもニコニコしてる。
村長はモリスにいって村人を集めてきてもらったんだ。
貴族から村人になりました!〜ど田舎の村だけど村民、クラフト能力高すぎるから民藝を広めることにする〜 K0壱 @honobonotoao
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