第21話動物と魔物は紙一重?

 ここ最近ミリー達の話を聞きながら行きつけの露店の串焼きを食べながらふと思ったことがある。

 これ何の肉なんだろう、と・・・牛肉のような食感と風味にあまり違和感を感じていなかったのだが。

 王都内で家畜の姿を見たことがない事から周辺の村に牧場なりあるのかもしれない、ギルドの依頼も採取等は請け負ったことがあるけれど、村の方に直接行ったことはなかった。

 今日も買いにきてるのだが、露店のおじさんには顔を覚えられていた。

「いつもありがとねフィオナちゃん、でも夕食前に食べてお母さんのご飯入るのかい?」

「串焼きは別腹なのです・・・そういえばこのお肉って何の動物なのです?」

 知らずに食べてたのかい?と口には出してないが表情が物語っている、人は結局美味しければ文句は言わないのだ。

「南東村の放牧ディル牛だよ、こっちの東村の放牧豚もおいしいから食べてごらん」

 1本おまけでもらいその場で食べてみると、うん確かに食感は豚肉だ・・・この世界の畜産関係は前世とそこまで変わらないみたいだが。

「ちなみに魔物って食べれるんです?」

「いや~、人族にはあまり馴染みはないね。獣人族や龍族、魔族の方達には人気だから」

 どうやら食べれないこともないらしい、人族的には珍味といったものだろうか。

「そういや魔物で思い出した、最近東大森林で出るって噂があってね。フィオナちゃんも冒険者なら大森林に行くときは注意した方がいいよ」

「新種の魔物とかです?気をつけるようにするです」

 そういえばギルドの依頼掲示板にも大森林の調査があったような・・・討伐と記載はされていなかったが、その新種を探してるのだろうか。

 帰ってからミリー達に話を振ってみようと家に向かうのだった。


 部屋で映像投射器が付いてるのを見ると、この世界にはないほうがよかったのではと思ってしまう。

 しかしこれも時代の流れなのだろう・・・この世界で生まれてたかだか16年程度ではあるが。

「姉様はまたこの前の映像見てるです?」

「おかえりーフィオナ、この光の剣の戦い方面白くてつい!」

 冒険者になったとはいえ地元で活動してるからか自宅通いみたいになっている。

 個人的な偏見だが冒険者ってこう、世界を旅して回る印象が強いから想像してたのと少し違っていた。

「兄様も騎士団に入ったと聞いてたですが、この時は見かけなかったのです」

「あれ?ママが言ってたけどお兄ちゃんの第二騎士団は帝都に遠征してるって」

 どうやら私達の合同戦の後にはもう帝都に向かっていたらしい、てっきり騎士寮にいるのだと勘違いしていたみたいだ。

 古龍ヴェルガリアの邂逅で色々衝撃が強く、耳に入ってなかったみたいだ。

「帝都も2年後に建国祭が控えておりますから、人員が必要なのかもしれませんわね」

 クロウディル王国と違い霊峰山と魔海との距離も離れており、帝国や共和国は魔海から影響を受けた魔物に油断を許せず・・・各国の騎士団や冒険者の力は最重要である。

「・・・先の事とはいえ建国祭を控えてはいるけど、魔海の警戒を緩め過ぎても・・・それなりに人手は必要なのかも」

 龍人貴族もあくまで帝都への被害が出ない程度に力は貸す程度、力関係での共生でもないから率先しては戦闘に介入はしないと。

 そこら辺はリアとあまり変わりはないようだ、上位龍人は守られる必要もないからあくまで最後の砦のような存在と認識しているようだ。

「故に北の地の魔王国も似たような状態じゃな、人族にちょっかい掛けるほどの余裕もないじゃろう」

「ちなみに魔海の影響で魔物に新種が現れたりはするです?」

 大森林に出るという新種?も気になるが他にも魔物が進化したり未確認の別個体みたいなのもいるかもしれない。

「帝国や共和国側からは結晶種というのが確認されておりますわね、鳥型や狼型の体からベンタルミナが突き出してるような感じらしいですわ」

 王国付近では見かけませんわね、最近はそれもあり触媒結晶が大量に余りだしそれを共和国・・・クルス商会が買い取っているという話らしい。

「最近東大森林で新種?みたいなのが出るとか、串焼き露店のおじさんが言ってたのです」

 出没するとまでは聞いたが、それが何なのかまで聞いてなかったなと・・・もう少し下調べしてから話を振るべきだったかもしれない。

「大森林ですと虫型も多いですわね・・・私(わたくし)、虫型は苦手ですわ」

 ミリーの唯一の弱点は虫みたいだ、まあ私もあまり好きではないのだが・・・山岳地帯は鳥型が食べてるのかあまり数は見かけなかったな。

「大森林に行くの?そうだ!じゃあ私と一緒に行かない?」

 明日学院休みなんでしょ?とアイリが同行してくれるようだ、まだ行くとは言ってなかったのだが・・・乗り気のようだし、たまにはいいか。

 アイリの実力はミリーやユラと同等かそれ以上かもしれないし、そこに同行する私はお守りされてるような感じになりそうな気がしなくも・・・・・・

「・・・私もついていくよ、でもそうなると前衛は私とお姉さんの二人・・・ジオも基本的に近接戦だよね?」

「私は後衛に徹するのです・・・・・・魔導師は本来それが普通だったと思うのです」

 ジオでの近接戦の方が得意ではあるけれども、一応本職は魔導師・・・であると思いたい。


 ここ東村は木材を使った家屋が集まった農村だった、畑や牧場も多く露店で聞いた放牧豚も呑気に草を食べている。

 木材は大森林で採れるだろうからより自然に近い生活を送れるだろう。

 食堂で食事を済ませ、村を抜けて東に向かうと直に大森林が見えてきた。

「・・・ミリーはついてこなかったね、本当に苦手みたい」

 気がつくとユラも呼び捨てになっていたが、ミリーがいつまでもさん付けはしなくてよいと話してたみたいだ・・・私のことはちゃん付けであるが、後で私も呼び捨てでいいと伝えておくか。

「ミリーにも弱点はあったみたいです、理由は察しがつくのです」

 恐らく裏側が駄目なのだろうなと・・・好きな人には悪いが正直私も苦手である。

 大森林とは言っても木々の間はそれなりにあり、剣を振り回すのは容易なもよう・・・早速虫型がアイリとユラによって切り裂かれていく。

 私いらなくない?と思いそうになるが2人の奥に数匹いるのを確認し、腰に引っさげた改造短剣を3本ほど宙に浮かしブレードを展開する。

ブォン ブォン ブォン

 一体はアイリの方に向かっていったが、残りの2体を数回改造短剣が突き抜けていく。

「・・・確かに炎の槍はこういう場所で使うのは危険かも、いい判断だね」

「おお、フィオナそんなこともできるんだ!」

 こんなところで使うと森林火災が起きてしまうであろう、結果的にこの戦法も理解してもらえたようだ。

 と思っていたが遠くに赤い光が見える・・・どうやら燃えているようだ。

「・・・フィオナちゃん炎の槍使った?」

「いえ、使っていないはずなのですが・・・ちょっと行ってみるのです」

 杖に乗って一旦空から位置を確認し、燃えている一画を見つける。

 その周囲を虫型が複数飛び回っていた、結構素早く動いてるので大人しく雷を落とし虫型を一掃する。

 水の槍を大量に打ち込み火災を阻止した後ユラ達の元に戻る。

「虫型が一杯飛んでいたのです、何かいるかもですね」

「飛べるのって便利だね!私も飛べたらなぁ~」

 3人で燃えていた場所に向かうとそこに何か小さいものが見えた。

「・・・これは動物・・・?」

 そこに佇んでいたのは小型犬くらいの大きさの狐のようだった。

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