第20話ロマンと効率は別なのです
王国クロウディルと帝国ヴェルガリア、400年前から存続しているこの2つの国はクロウディルの方が多少歴史は長い。
王立学院に関してもその時代から続いているらしく、私立の方は100年くらいという話だがそんなに続いている学校というのが前世からはあまり想像できない。
400年前の合同戦はこの時点ではないようだが、このころの合同戦というのは帝国の学院との親善試合みたいなものだったらしい。
この時点での共和国はまだ国というより大きな村のような感じで今も君主制ではない大都市みたいだが、クルス商会設立の40年程度で帝国や王国にはない技術で先進国となりつつある。
とりあえずこの世界でもオーディオプレーヤーとか作ってくれるとありがたいのだが・・・映像投射器が最近流通し出したという話もあるので期待はしている。
「ジオ殿、騎士団の立ち会いに応じて頂き感謝します」
学院に登校した直後理事長に呼び出され何かと思えば、騎士団がジオとの実戦稽古をお願いしたいとの事でこうなっているわけだが。
学院側から学校休んでいいから行ってきてと・・・部活とかの大会で欠席とかもあるからそれとあまり大差はないか。
「いえ・・・そちらの騎士が持っているのはもしかして?」
「はい、映像投射器というものでして共和国が去年開発したとのこと」
割と最近できたものだったらしい、共和国内である程度流通したからこの王都にも輸入されたという所だろうか。
思ってた以上にハンディーカメラの形状をしており、鎧を着た騎士が持っているのが何ともシュール過ぎる・・・
「投射器と聞いてましたが、それは記録もできるので?」
映像に残して参考にしようかと、騎士の1人がそういうと改めて対面した騎士が剣を構える。
「私もあまり対人戦は経験がないので、お手柔らかに」
正直、人に剣を向けられるのには慣れない、ユラの時もそうだが魔物と人とでは勝手が違う・・・斬られるのもそうだがこちらが攻撃して万が一殺めてしまう可能性があると思うと緊張してしまう。
ブォォンッ 「これが話に聞く・・・」
右籠手からシールド、左籠手からブレードを展開し構える。
「参ります!」
バチィィンッ
体感5メートルくらいは離れていたはずだが一息で剣が届いてきたことに少し驚く、鎧を着て尚この速度というのはやはり異世界人の身体能力は高い・・・私の動体視力でも反応できたのは全身鎧の意識操作によるものか、はたまた単純にユラと比べたら遅く感じたかは分からないが。
受け止めた剣を押しのけ左籠手ブレードを右に振り、盾で防がれた所を・・・右籠手のシールドをブレードに切り替え、騎士が攻撃の構えを取る前に剣を弾き飛ばす。
「くっ、何という変則的な・・・!?」
若干、というか武器の形状を変化させる行為は流石に卑怯だったかと心配したが・・・臨機応変の稽古としては刺激になるとのことだ。
そんな感じで結局学院の授業終了時間くらいまで付き合うことになるのだが・・・正直言って学院より疲れての帰宅となった・・・・・・。
自室に入るとプロジェクターのような光が目に入ってくる、ミリーとユラにアイリとリアがその壁に映した風景を眺めてはしゃいでいた・・・まさかの映像投射器である。
「あ、おかえりー見て見て!これ凄いよ!」
「おかえりなさいですわ、城にいる使用人が用意してくれましたの」
流行というのはどの世界でも同じらしい、一度流行り出すと凄い勢いで浸透していくものだな・・・物にもよるだろうが。
とはいえ、前世の私も新型のイヤホンやヘッドホンが気になって調べるから気持ちは分かるけれども。
「なるほど、騎士の人に渡されたこの黒い板はSDカードみたいなものだったのですね」
この世界での再現はまだこれが限界ということなのだろう・・・もしくはあえて制限しているか。
「・・・それは?」「取り換えれるみたいですわ」
ミリーに渡してベッドに座る、リアが近くで食い入るように見ているが目を悪く・・・はならないかと串焼きを齧る。
騎士とジオの戦闘が壁に映し出される、ハンディーカメラでプロジェクターみたいなこともできるのは寧ろ凄い技術なのかもしれない。
「フィオナのこの鎧と剣不思議だよねー、剣術学院でも見たことないよ!」
「・・・なるほど、ミリーさんが言ってた生身との違いがよくわかりますね」
私も言われてみればこうやって自分の姿を見るのは初めてだなと・・・イメージ通りに戦えているようで思わず満足してしまった。
「生身での近接戦はユラとの合同戦でこりごりなのです」
鎧の意識動作のリソースで生身でも使える特殊武器を用意しておこうと試行錯誤してみるのだった。
学院卒業までまだ時間はあるので装備を充実させようと思い、とりあえず短剣の刃先を6本ほど外している。
「フィオナ、以前の刃先を含め7本のこれどうしますの・・・また取っ手だけ使って」
取っ手の部分はこう自律兵器的な使い方の為に改造し、この刃先はチャクラムみたいにすれば大丈夫・・・と思ったがチャクラムってどう携帯するのだったか・・・?
「フィオナって頭は回るのに時々後先考えませんわね・・・」
「・・・それ全部持つのは邪魔にならない?」
近接戦対策で作っていたはずが、装備が重くなり余計戦いにくくなるという悪循環が発生してしまった。
「て、転送で状況に応じて使うのです・・・・・・はっ、リュックに追加アームもいいのでは?」
「だから重くしてどうするんですの・・・」
「・・・そのじりつへいきとはどう使うの?」
イメージして改造短剣を宙に浮かせ全部にブレードを展開してみる、できるか試してなかったが可能のようである・・・操作する間集中してるせいで体を動かすのに処理がしきれないことも分かった。
「本末転倒ですわ、ユラと私でなくともそれを使うときは注意するべきですわね」
使うなと言わないのは優しさなのか諦めなのか、やってみたいものはしょうがない。
だってそのほうがかっこい・・・
「・・・合同戦の時に使っていた炎の槍でいいんじゃない?」
ユラは容赦なく私の心を折りにきたのであった・・・
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