十八日目

「俺、悩みがあるんだよね。」

私と橋川さんの目が合う。

いつも爽やかでかっこいい高田くんが、そんなことを言い出した。

申し訳ないが、少し興味深い。

「私たちに、相談しようよ!」

橋川さんは、元気な声を出した。

「俺、好きな人が出来て。」

照れくささというより、深刻な感じだった。

衝撃。

好きな人に、好きな人が出来たそうです。

「は?」

事情を知っている橋川さんは、気まずそうにしていた。

「隣のクラスなんだけど、授業がはじまる毎に離れることが寂しい。」

高田くんの乙女な一面に、少し微笑ましく思った。

だけど、それ以上に心臓の鼓動が痛い。

「そうなんだ、どうしようもないね……」

空気が、寒色に染まったような気がした。

「え。ごめん、嘘だよ。いい反応してくれると思ったから……」

私と橋川さんは、安堵アンド安堵。

「ごめん。特に、愛月さん。すみません!」

いつもやめてほしいと思ってる敬語も、気にする暇がないほどにほっとした。

「ちょっと、特にってどういうこと……?」

橋川さんと高田くんは、心温まる笑いを見せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る