十七日目

「高田くん!」

私は、好きな人の体に抱きついている。

「ど、どうしたんですか……?」

橋川さんの恋愛のお話によると、このぐらい積極的な方がいいらしい。

でも、高田くんは困惑したような表情を浮かべている。

「ひひっ、なんでもないよー!」

この行動によって、変わる事実はない。

だから本当に、なんでもない。

だけど、お互いの気持ちには作用する。

高田くんは、困惑。

私は、高揚感と緊張。

この事実だけ見ると、まるで失敗しているように見える。

でも、なぜか嬉しかった。

見えない筈の心の距離が、確実に縮まったから。

「は、離れてください…!」

高田くんの引き攣った顔。

心の距離も縮まっていないご様子。

さっきまでの思いを、さっきの私ごと消したい。

私は、高田くんから離れた。

「今、テンション高くて…… ︎︎えへへ、ごめんね。」

驚いた。

体が離れても、なんでもないことはなかった。

妙な温もりが、高田くんに触れていたところから感じられる。

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