四話 美少女現る

 爽達六人は魔法学校内にあるエレベーターに乗って上昇中、六人は会話をしていた。


「この建物かなり高いから時間が掛かりそうだな……それにしても受付の女の子凄い可愛かったな……」


「受付の人? あれはロボットなのよ」


「えぇ!? ロボット!? 俺気付かなかった!!」


「人工知能で動いているものよ。気付かなかったの? バカね〜」


「凄い完成度だな……魔法だけじゃないな……驚くものは……」


「私も気付かなかった……!」


「僕も〜」


「そういうロボなどを作る組織がサンゴ町にあるのよ」


「へぇ〜! 俺専用の女の子作って貰おうかな〜……」


「それ本気か!?」


「確かにあなたは全くモテなさそうだからロボットが一生の彼女になりそうね」


「確かに最終手段で俺……ロボットを彼女にするかもしれない……」


 真剣で泣きそうな顔の爽はそう呟いた。


「そう言えば着くまで長いな……いつまで上昇するんだ?」


 潮はサギフエにそう聞いた。


「分からないわ……教室の数は千あるらしいけど……」


「それは多いな……! 爽に渡された紙は476番目の教室って書いてあったから多いなと思ったが半分も無かったとは……」


 数分経ってエレベーターが四十七階に止まり、爽達六人はエレベーターから降りた。六人は476番目の教室に向かって歩き始めた。


「いっぱいいるな……」


 爽は通りすがった教室をチラ見し、教室内の席がほとんど人で埋まっている様子を確認してそう思った。


 数十分後、サギフエ達が入る476番目の教室の前に辿り着いた。


「やっとついた……教室多すぎだ……」


「ここは唯一魔力を宿せる場所だから多いのよ」


 サギフエ達六人は教室に入り、六人固まるようにそれぞれ空いている席に座っていった。


「あっ……お前は」


 爽は隣に座っていた人を見て知り合いだと気付いた。爽の隣に座っていた人は海だった。


「お前らか」


「おっ! 海か!?」


 颯はそう言って海の顔を見た。


「え? この人も転生者なの?」


「こいつも俺達と一緒にこの世界に来たんだサギフエちゃん」


「はぁ〜……一緒に私の家にくればいいのに……私はこの世界に来たばかりの人を無償で助ける仕事をしているのよ。だからあなたも来なさい」


 海はサギフエの言葉を聞いて無視した態度を取った。


「無視!? 失礼ね……絶対私の家に来るのよ……!!」


「やはりサギフエは物凄く家に来させようとするな……」


 潮は心の中でそう呟いた。


 爽達が魔法学校の476番目の教室に入ってから数分が経過した頃、その教室に髪が長めで濃い緑色が特徴の女の子が教室に入って来た。


「あっ! ムベンガ!」


 教室にいた一人が入って来た女の子を見てでかい声を出した。するとその場はざわつき始めた。


「なんだあの女は……有名人か……?」


「あの人は……ムベンガよ。美少女コンテストでグランプリを獲ったって人ね」


「へぇ〜……それはそれは美しいですなぁ〜……」


「見てみなさい。サインを求められてるでしょ」


 ムベンガという名の女の子の周りに人が群がり始めた。


「まじでムベンガ!?」


「本物!? すげー!」


「美少女コンテスト観てた!」


「サインちょうだい!!」


「かわいい!」


 ムベンガは話しかけたりサインを求めたりする者を無視してよけ続けながら歩いていった。


「あの女もロボット並みのスルースキルだな……」


 潮はムベンガの振る舞いを見ながらそう思った。


「全無視フィーバーだな……胸に来るぜ……」


 爽はそう胸に来ていると、潮の前にムベンガが来た。


「ここに座ってもいいですか?」


「あぁいいぞ」


 潮はムベンガの質問にそう答えると、ムベンガは潮の隣に座った。 


「んぎゃー! ムベンガちゃんに話しかけられるとか羨ましすぎるー!」


「美少女グランプリに対して偉そうなのさすが潮……」


 凪は心の中でそう呟いた。


「どんな授業をするのか楽しみだな!」


 先頭に座るムベンガの後ろに座っている颯は振り向いて海達にそう話しかけた。


「颯……静かに待ってなさい」


「……え?」


 教室に入ってから一度も変わって無かったムベンガの表情が驚きの表情に変わった。


「なんだ……?」


 ムベンガの斜め後ろに座っている凪はムベンガの表情が変わった瞬間に気付いた様子だった。


「……あの」


「私か?」


 ムベンガは颯に話しかけて颯の顔を見つめ始めた。


「んぎゃー!! 美少女に見つめられるとかずりぃー!」


「私のことを知っているのですか!? 私は地球からここに来たんです! もしかしてあなたも地球からいらっしゃったんですか!?」


「え……い……いいえ……私は違います……」


 ムベンガは少し動揺した様子で颯の質問に答えた。


「この女……颯と似た人でも会っていたか……?」


 潮はムベンガと颯の会話を聞いてそう思ったその時、教室のドアが開いて20代後半くらいの女性が入ってきた。


「こんにちはーー!」


 教室に入ってきた女性は席に座っている人達に向けて元気に挨拶をし、教室にある黒板の前に立った。


「私の名前はメダカ! 先生だよ! この中に初めてだよって人いる?」


 メダカと名乗った女性は教室にいる人達に向けてそう質問した。


「はい!」


 元気良く返事をした颯は右手を挙げた。


「俺もです先生ーー!!」


 そう返事した爽も、颯同様に元気良く右手を挙げた。


「爽、女の先生だからってはしゃぐのは止めなさい」


「いい? 魔力を宿すにはね! 神様から送られる風を受ければいいんだよ!」


「神様ってワタツミか!?」


「そうだよ! ちょっと待ってね……今電話するから……」


「え……電話だと? 神と普通に電話出来るのか……?」


「神様と電話とかおもしろ……」


 そう凪は呟いた。


「もしもし! 神様!? お願い!!」


「……なんだか出前感覚だな」


「よし! じゃあもう魔力を宿す風を送るから覚悟はいい? 苦しいよ!」


「苦しい?」


 潮はそう呟いた時、教室全体にささやかな風が吹かれ始めた。


「この風は噂によると苦しくて途中で気絶したら魔力宿せずで失敗らしいわ」


「それは魔法を使えるようになる時に苦しみに耐えなければいけないってことか? 耐える時間はいつだ?」


「えっと……確か……十分だったかしら……」


「じゃあみんな頑張って耐えてね!」


 その場にいるメダカ以外の者全員苦しみ始めた。


「うわー! きついー! 加齢臭がー!」


 爽は苦しみながらそう叫んだ。


「爽……そんなことないわよ……神に失礼ねあなた……」


「サギフエちゃんだって鼻つまんでるじゃん!」


 爽にそう言われたサギフエは鼻をつまんでいた。


 十分が経過し、苦しみに耐えて立っていたのは海・爽・颯・凪・サギフエ・ライノ・ムベンガの七人だった。潮を含めた他の者は全員倒れていた。


「潮! 大丈夫か!」


 颯は倒れている潮に詰め寄って呼びかけた。


「潮!? 大丈夫か!? 駄目だったのか!?」


「その倒れている男の子から魔力を感じ始めているから大丈夫だよ!」


「魔力を感じるのか……良かった……! みんな仲良く同時に魔力を宿したいから……!」


 颯は焦っている時になる表情からホッとした時になる表情に変わった。


「なるほど……人の魔力って感じられるんだ……居場所がバレそうだけど隠せるものなのかな……」


「他に倒れている人達は大丈夫なんですか!?」


「大丈夫! 害はないから!」


「良かった……!」


 その時ムベンガは颯を見つめていた。


 数分後、魔法学校のスタッフが476番目の教室に三十人程入って来て、魔力を宿せなかった人を回収する為に一人ずつおんぶして運び始めた。


「結構ハードル高かったのか……」


 凪は気を失って連れてかれる人達を見てそう思った。


「今回駄目だった人もまた挑戦しに来てね〜! 今日また来てもいいから〜!」


 メダカは気絶して運ばれている人達に向かってそう言葉を投げ掛けた。


「先生、気絶している人に言っても聞こえてないわよ……」


 数十分後、476番目の教室にいるのはメダカと魔力を宿した八人だけとなった。


「今回は……八人! 多いね!」


「八人で多いのか……確率低いな……」


「潮! そろそろ起きなさい! 始まるわよ!」


 サギフエは潮を起こそうと潮の顔を何度もビンタした。


「……痛た!!」


 サギフエにビンタされ続けた潮は目覚めた。


「サギフエ! 他に潮の優しい起こし方はなかったのか!?」


「起きたから良いじゃない」


「よし! それじゃあみんな! 先生の近くの机に座って!」


 メダカの声掛けで八人は教卓の近くの席に座っていった。


「この中に転生してきた人はいる? いたら先生が色々教えてあげる!」


「はい!」


 メダカの呼びかけに爽と颯とライノは返事をして手を挙げた。


「じゃあ教えるね! まず普通、人の魔法は二種類しか使えなくて、自然魔法と不自然魔法があるんだよ!」


 メダカは黒板にチョークで自然魔法と不自然魔法の二つの言葉を書いた。


「不自然魔法は一つだけ好きな魔法を覚えられるんだ!!」


「おぉ〜!」


 爽は女性物の下着であるパンティーのイメージを頭の中に浮かべた。


「不自然魔法は人工魔法だとかオリジナル魔法とも言われているよ!」


「不自然魔法とは……言い辛いな……」


 心の中で凪はそう呟いた。


「不自然魔法はどうやったら唱えられるようになるのだ?」


「それはね! 願えばその内出来るようになるんだよ!」


 メダカは持ってるカバンの中からジョッキを取り出し、そのジョッキの中にビールを出現させた。


「おぉ〜!」


「例えば先生はお酒が好きだから不自然魔法をお酒召喚にしたんだ!」


 メダカは魔法で出した酒を一口飲んだ。


「え……今飲む……」


「不自然魔法はスケールがでかいほど習得とするのに時間がかかるんだ! ちなみに先生の酒召喚は……数週間で出来るようになったから参考にねー!」


「なるほど……じゃあパンティーも数週間でいけそうだな!」


「何でも一つだけ自由に出来る代わりにからよ〜く考えてね!」


「そうか……俺は女性が履いているパンティーとかにしようと思ったけど色々後悔しそうだから止めようかな……急にノーパンはかわいそうだし……」


 真剣な表情の爽はそう決意した。


「爽……話の内容と顔が間違ってるわ……」


「え!?」


「じゃあ次は自然魔法について説明するね! 自然魔法も普通は一つの属性しか使えなくて、最初に使えるようになる属性は性格によって人それぞれなんだ!」


 メダカはチョークを持って黒板に『光火土雷風石氷水毒闇』の漢字をそれぞれ書いた。


「この十種の自然魔法の下に性格書くね!」


 メダカは黒板に書いてある光の下に前向き、火の下に好戦的、土の下に穏やか、雷の下に短気、風の下に大雑把、石の下に頑固、氷の下に冷静、水の下に純粋、毒の下に毒気、闇の下に後ろ向きと書いた。


「最初に覚える自然魔法の属性は自身に強く当てはまる性格とかでだいたい決まるんだ!」


「なるほど……じゃあ僕は闇かな……」


「自然魔法を出す時はね、その性格に対応した思いを出していった方が魔力が強いんだよ!」


「そうか……なら雷は短気だから……怒りながら雷を放つ方が普段より強いということか」


「私は最初、光属性だったけど酒飲みたいから水属性に変えたんだ!」


「へぇ〜そうなんですね!」


 爽はメダカに相槌を打った。


「ちなみに自然魔法の属性は魔法都市サザエで変更出来る施設があるのよ」


「へぇ〜……それはいいな」


 爽はサギフエの説明にそう反応した。


「あとね! いやがらせ防止に神が最初に決まる自然魔法の属性を変更したりしてるんだよ!」


「いやがらせ防止か……過去に色々揉めたのだろうな」


「だから最初に毒気が目立つ人への毒とか短気が目立つ人が雷のにすることはあまり無いらしいよ!」


「なるほどな」


「……私の属性はなんだろうか」


 颯はそう呟いた。


「颯か……颯は風だろうか?」


「私は大雑把でも困っている人を助けられればそれで良い!」


「お前ポジティブだなぁ……光か?」


「あなたは……熱苦しさを感じるから火属性とかありそうね」


「う〜ん……」


 突如苦しそうに声を出したムベンガは両手で頭を抑えていた。


「大丈夫か!? 頭痛か?」


 颯はムベンガに声をかけた。


「頭は痛くないです……あの……気にしないで下さい……」


 ムベンガは頭を右手で抑えながら颯に向かってそう伝えた。


「無茶はしないで休んだ方が良いと思うよ……!」


「大丈夫です先生……」


「あぁ……大丈夫かなぁ……ムベンガちゃん……」


「じゃあ……次はこの世界の色んなスポットや場所を教えてあげるね!」

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