第3話 冒険者になれなかったお話
ここから俺の冒険譚が始まる・・・はずだった。
村に入るまではよかった。
そのあとに冒険者ギルドについて早々、俺は衛兵に捕まった。
そして今は冷たい牢獄にいる。
時は少し前に遡る。
「ごめんなさい。入国許可証をお持ちでない異国の方は冒険者ギルドへの登録ができない決まりなんです」
「なんで入国許可証がないの?無くしちゃった?」
「だから俺は日本人なんだって!」
世の中フィクションの様にはうまくいかない。
俺は現代日本、つまりここじゃない日本から来た。
それ故に入国許可証なんか持っていない。
「またジョーク?流石にそれを擦っても面白くないってー!もっとボキャブラリー増やしたらどう?笑えないわよそんなんじゃアハハ!」
「いや貴女笑ってますけど?」
それよりもこんなことで手間取るとは思わなかった。
この際俺が日本人だということは放っておこう。
それよりも冒険者ギルドに加入することが大事だ。
「あのー、申し訳ないんですけど入国許可証ってどこで申請すればいいんでしょうか?」
「申請・・・ですか?発行ではなく?」
「はい。恥ずかしながら、こことは違う日本から来まして」
俺の言葉に冒険者ギルドで酒を飲んでいたおっちゃん達までもが驚きの余りこちらに視線を向ける。
もしかして何かやっちゃいました?
「貴方・・・もしかして新手の違法入国者?」
「へ?」
流石にあのケモミミ少女も口を押えてこっちを見ている。
しかしそれに気を取られた。
ギルドの窓口のシャッターが閉められる。
そしてギルド内に響き渡る音声は、俺にとっては非常によろしくない内容だった。
「冒険者様、衛兵!ここに違法入国者がいます!捕えて!」
「臨時収入だ!衛兵に後れを取んなよ野郎共!」
「御用だ御用だ!捕えろ!」
当然、日本生まれ日本育ちの俺がそれに抵抗できるわけもない。
俺は圧倒言う間に衛兵に捕えられた。
冒険者に捕えられなかったのはまだマシだったと、牢屋へと連行中の猫の衛兵に言われた。
「よかったなあんた。もし冒険者に捕まってたら奴隷商館行きだったぜ?」
「奴隷制度があるんですか?」
「お前、本当に何も知らないんだな。もしかして脱国してきたのか?」
「だから俺は・・・いや良いです」
捕まった時にこことは違う日本から来たって言ってみたが、どうやら異世界から迷い込んでくるという様な例が全くない、少なくとも馴染みが無い為信じてもらえなかった。
なんて世知辛い世界なんだ!
事実は小説よりも奇なりって、この獣人だらけの日本に転移してきたことだけじゃん!
「基本他国の人間を奴隷にするのは法律で禁じられてるが、犯罪を犯した人間なら話は別だ」
「つまり俺って犯罪者ってことですか?」
「俺も状況しか聞いてないがこことは別の日本から来たとか言ったんだろ?」
「はい」
「最近多いんだよ違法入国者。異世界から来たとかいうやつ」
それって俺の他にも転移してきた日本人が多いってことじゃないのだろうか?
だとしたら俺と同じ様にこの環境を嘆いてる仲間に会えるかもしれない。
しかしこの世界はそんなに都合がよろしくなかった。
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