13 dei machina《神の機械》
―――ニブルヘイムから来た商人は語る。
「町の外れで白い幽霊を沢山見たんだ。驚いて声を出しちまったら、幽霊たちも逃げちまった。10体は居たかな? あんなの初めて見たよ」
◇ ◇ ◇
ルカ達と別れ、次の村に向かい街道をバイクで駆け抜けていく。
今日は天気が良く空が青い。空は子供の時より蒼くなった気がする。人々の努力とデイマキナのお陰で環境は年々良くなっていた。
「なぁウルド、街道の近くに遺跡群が有るけどパーツ探しはするのか?」
現在、俺達が持っているのはサーバーのブレードが二つだ。彼女
「そうね、まだ人が入っていない遺跡なら寄りたいわ」
「ユミルのパーツはどんな法則で散らばっているんだ?」
俺達が調査隊で遺跡サルベージをした時も把握しているだけで1つしか見つかってない。ジャンクの山から金のネジを探し出すのと同じくらい難しいのではないか……
「中古部品として流通した時もあるし、予備パーツが保存されていた時もある。大きいプラントや研究施設が有った場所に残っている可能性が高いわ」
「当時から良いパーツだったから、大きなデータやハイスペックなコンピュータを作るのに使われた可能性が有るって事か」
「そういうこと♪」
成るほど、まだ人が立ち入っていない、大きなプラントやラボを優先的に探せばいいのか。一人で納得していると珍しい物を見た。
「あら? デイマキナが集まってない?」
調査が終わったであろう遺跡の一角にアンドロイドやロボット達が集まっていた。周りには彼らを無視して環境改善活動をしているデイマキナ達もいる。
何だろう?
「見に行ってみるか?」
「ええ。そうしましょう」
俺達はバイク離れた所に置き、歩いてその集団に近づき後ろから円の中心を覗いてみた。
様々な機種のロボットたちが集まっており見ていて飽きない。個性があって可愛いなぁ……などど呑気に観察していたら可愛くない音がした。
―――ばきっ!
何か壊しているみたいだけど。何が破壊されたか見て俺とウルドは思わず驚き声が漏れた。
「「ええええっ!!!」」
小さな粉砕ロボットが見覚えの有るケース……ユミルのパーツを壊していたのだ。
その脇には更にもう一つある。その一つも破壊を待っているようだった
「え!ウルッ!これ!ちょっ!!!」
もう焦り過ぎて言葉にならない。しかしウルドは周りを見渡すとジャンクの山に落ちていた似たケースを見つけると俺に素早く渡す
「はい!!」
このケースをどうしろと!!!もう仕方ない!
俺はマシンの隣で破壊を待っているケースと、ウルドに手渡されたケースを差し替えた。ロボットは俺が差し出したケースを掴み。ゆっくりと作業台に置く。
―――ばきっ!
俺がすり替えた偽物をロボットは砕いた。危うくユミルのパーツが失われる所だった。俺達は思わず安堵のため息を吐く。
すると、周囲が静かになる。
なんだと思い顔を上げると、ロボット達がこちらを向き首を傾げていた。
「ウルド……まさか……すり替えたのばれたかな???」
「いや、まさか……でもこの場から立ち去りましょう? 早急に」
賛成だ。俺達は立ち上がりこの集団から抜け出した。
すると彼らは俺達を追いかけてくるのだ!!
この集団に追いかけられるのは意外に怖い。
「ウルド!まずい!!こいつら追いかけて来るぞ!?」
「あらまぁ。ケースだけ返してあげましょうか?」
「―――!おう!!」
俺はケースの中からパーツを取り出し、ケースだけ彼らに向けて投げて返したのだ。
地面にポトリと落ちた空のケースを見つけると、またケースを囲み粉砕を眺める会が始まる。
上手く誤魔化せたようだ。
俺達はバイクに乗りこむと素早くそ場を離れた。
15分程走りバイクを止めて俺はぐったりとへたり込む。
心臓のバクバクがやっと落ち着いた。
ウルドはサイドカーでパーカーを脱いで冷却を始めた。そりゃ熱も溜まるよね。
「なんで……デイマキナがユミルのパーツを壊してるんだ?」
「う~ん……あくまで彼らはロボットだから新しく指示が出ているのよ」
「指示!?」
「デイマキナは月裏の創設者が管理しているの。デイマキナの運営開始から今までずっと星の環境改善作業を指示してきたのに……」
おい、今さらっとすごい事言わなかったか??
「えーーーっ?! 月裏研の創設者って英雄派って奴だろ? なんでそいつらが地球の環境改善を……危なくないか? もし反乱何て起きたら!!」
「確かに気に入らないけど……反乱させたかったら、とっくの昔に起きてるわ」
確かにそうだ。デイマキナは俺が生まれる前から活動している。それに人を襲ったという話も聞かない。
「英雄派はこの星と地上の人間に関しては敵意を持ってないから安心して。純粋に環境汚染を改善するために使われるだけでだから。……それなのに一部の機体にパーツを破壊させる指示を出して来たという事は、
ウルドはシートに深く寄りかかると、眩しそうに空を見上げて何とも言えない複雑な表情をした。困っている様な笑っている様な。
「なんか、複雑なんだな」
「そうよ? 糸が絡まってるの。でもパーツを回収できて良かったわ。あればあるだけ助かるもの」
「まぁ、またデイマキナが集まっていたら見てみよう。じゃあ次の村へ向おうか」
「ええ、行ってみましょう」
そうして俺達は次の村へ向かい走り出した。
◇ ◇ ◇
今日、泊まる村に早く付いたので、スムーズに仕事と宿に在りつけた。
夕方畑仕事や荷物を運ぶ仕事を手伝った後、夕食後にランニングをして槍術の練習をしていた。
元々、街に居た時は毎日先生の鍛錬につき合わされていたけど、キャンプで家から離れた時はサボっていた。
だがドナールに吹き飛ばされてから悔しくて、昨日から時間を見つけては再開した。肩の調子も上々だ!
「お疲れ様。何でレンは槍術を覚えたの?」
いつの間に……ウルドは俺の荷物の傍にちょこんとしゃがんで俺を見ていた。
首を傾げた彼女からさらりと若葉色の髪が流れる。水分補給と彼女の問いに答える為、中断した。
「先生が槍の使い手だったんだよ。それに塞ぎ込んでいた時期に先生から進められてね」
先生の元で生活するようになるが、塞ぎ捻くれていた俺に『自分の身と大切な物は自分の手で守れ』と言って一緒に鍛錬するようになった。
治安が特段に悪いわけではないが、覚えておいて損は無い。将来先生の様にひょんな事から傭兵に成るかもしれない。
そう思ってだらだらと習っていた物が……まさか実践に捲き込まれるとは青天の霹靂だった。
二十歳の誕生日に先生が使っていた槍を譲り受けた。伸縮式の槍で、威力が欲しい時は刃にプラズマを纏わせる事が出来る。グン二グルと言って旧世界に開発された武器らしい。
そんな物もらえないとも断ったが、先生は頑固だ。一度言った事は曲げないからありがたく頂戴した。
「なるほど。じゃぁ重火器はどこで訓練を受けたの?」
「銃は調査隊で狩猟するときに必要なスキルだからね。射撃は得意だったし」
「へぇ~。射撃の名手なのね」
そう言って彼女はニヤリと笑うと左手で「バン」と俺を撃つ素振りをして見せた。褒めれられたような気がして、悪い気はしない。
今までは遺跡サルベージしたいのに、引きずられながら狩猟班に組み込まれた事も多く、損な役回りだと思っていたが、この経験が役に立って良かった。
「練習に付き合ってあげたいけど、あまり戦い過ぎるとパーツが摩耗しちゃうからごめんなさい」
「気持ちだけでも嬉しいよ。もっと壊れたら大変だからね。あと30分くらい続けるよ。そして水浴びしたら部屋に戻る」
「分かったわ。部屋で待っているわ」
そう言って彼女は宿へと向かった。
先生に何も言わず出て来てしまった。家は大丈夫だと思う。調査隊はその都度参加登録する制度なので幸い、次の調査の参加にも申し込む前だったから仕事に穴はあけていない。
この旅で12年前の真実を知って過去と向き合おう……そしてまた歩き出せばいい。
俺は何かを守れるようにトレーニングを続け、ウルドが待つ部屋へと帰るのであった。
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