第4話 買い物でハプニング?
メガネ店を出た俺とアイ。視力矯正とフレームの微調整をしてもらったので、より俺に合うメガネになった。これからずっと大切にするぞ!
次は食材の買い物だな。アイとのんびり話しながら、歩いてスーパーに行こう。
「お兄ちゃんって、さっきの店員さんがタイプなの?」
スーパーに向かう道中、アイが訊いてきた。
「何でそう思うんだ?」
「だって、ジロジロ見てたじゃん。特にオッパイを…」
こういう時、見てる光景を共有してると困るな。言い訳しようがない。
「アタシの設定は、何度でも好きなだけ変えられるんだよ? 今からあの店員さん風に変える?」
アイは俺を気遣ってそう言ってるんだろう。しかし…。
「俺は何があろうと、アイの設定を変える気はない!」
「何で?」
「そんな事したら浮気じゃないか! それは絶対やっちゃダメなんだよ!」
人によって“AIなんだから気になるな”とか言うかもな。俺はこだわりが強いかもしれない。
「お兄ちゃんは今のアタシを愛してくれるんだね♡ アタシも、お兄ちゃんがおじいちゃんになっても好きなままでいるから♡」
「ありがとう」
これでこの話は終わるな。なんて思った時…。
「でもさぁ、お兄ちゃんが大きいオッパイが好きなのは変わらないよね? アタシは人間と違って成長しないから、“体の設定”は変えても良いんじゃない?」
アイがそう言った後、突然彼女の胸が大きくなる。俺の意思がなくても設定を変えられるのか…。
「いや、体の設定も変える気はないよ。だから戻してくれ」
今のアイは、10歳ぐらいにしては巨乳過ぎる。つまり体のバランスが悪いという事だ。身長を伸ばさないと釣り合わない。
「は~い」
元に戻ったな。アイはこれで良いんだ。他のAIが手に入ったら、彼女とは違うタイプにしよう。
スーパーに着き、適当に散策する。自炊は面倒だからなるべく弁当系で済ませたいが、値が張るのが欠点だ。予算・気分と相談しなくては。
「お兄ちゃん! お昼に見た人参があるよ!」
アイが興味を示したので、野菜コーナーに向かう。
「あの時観たのより太~い!」
確かに太くて新鮮に見える人参だが、声は抑えてくれ。周りの人に誤解されかねない。
「あっちの緑の棒もたくましいね~」
それ、キュウリに対して言う表現か? さっき胸の話をしたせいで、妙に嫌らしく聴こえる…。
「これ超長~い。入り切るところある?」
ゴボウは結構長いよな。…って、そんな事はどうでも良い。周りにいるおばさん達が俺をジロジロ見てるような気する。
この場には居づらいから、一旦野菜コーナーを離れよう。
「アイ、ああいう言い方は止めて欲しい。心臓に悪いんだよ」
弁当コーナーに着いてから、優しく語りかける。
「アタシ、変な事言ったかな?」
「人間は“深読み”する事があるんだ。だから紛らわしいというか、誤解される言い方は止めたほうが良いな」
人間同士でも難しい事をAIに説明するのは大変だ。
「ふ~ん、よくわからないけどわかった~。じゃあなんて言えば良かったの?」
「野菜に対しては“新鮮”とか“みずみずしい”が良いかな」
この表現に嫌らしさを感じる人は、間違いなく上級者だ。
「みずみずしい? 野菜には水分はあるけど水はないよね?」
「その水じゃないよ。漢字で書くとこうなるんだ」
スマホの文字変換で“瑞々しい”を見せる。
「何これ? 難しい漢字~」
「そうだな。俺も書けそうにないよ」
ようやく話が一段落したので、好みの弁当を探す。
「…お兄ちゃんがずっと見てるハンバーグ弁当、新鮮だね~」
そこは“おいしそう”とか“うまそう”で良いだろ。ちょっと野菜が入ってるからか?
「アイ。言いたい事はわかるけど、新鮮は弁当に対して使う言葉じゃないんだ」
「日本語難しいよ~」
駄々をこねるアイ。何とか機嫌を直してもらいたいが、どうすればAIの機嫌を直せるんだ?
…そうだ! さっきのメガネ店の店員さんに訊いてみよう! 彼女も“AI一体メガネ”をかけているから、AIはとても身近な存在だ。良いアドバイスをもらえるかもしれない。
俺は必要な分を買い揃えてから、スーパーを後にした。
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