075 bonus04, rakshak/保護者

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【AD:2118年, 革命新暦:196年、冬】



何だよ畜生、もう冬じゃねーか!

ケシの種まきの時期ギリ超えちまったよ…独房なんかに押し込みやがって。

シスのやつ細かい作業させないと喰っちゃ寝しかしねえし、また何かやること考えなきゃな…

一応、また場所探しと種まきしとくか。


しかし女子連中が何やら小物づくりで盛り上がってんなぁ。

独房入ってた時にシティアが持ってきたあれ、ユリアはなかなかうまく使ってた。

本当は混ざりたいんだけど…なんかこの仲間内で女だってバレるの危険な気がするんだよな。

そもそもあんまり交流持ってないけど。

でも異世界に転移したら、ちょっとくらい化粧してアクセサリーくらいつけたいね。


でもまずはシスを食わせてやれるようにしないと。

アイツも可哀想なやつなんだよ。

施設で10才になる前までエラくいじめられて、キレて暴れたら他の連中全部殺しちまったんだ。

1グループ1名は原則らしいから殺処分こそされなかったけど、お陰でDDTからも腫物扱い、職員からはいじめられだ。

俺はグループで一番身体が小さかったせいでやっぱりいじめられてて、復讐で他の連中に殺鼠剤食わせたうえでケンカしてやった。

奴らそれが元で皆脱落したからザマァなんだけど、結局その後生きてるのか死んでるのかは知らねぇ。


そんで引っ越しで初めて会った日、ピンと来たね。お互い。

同類だって。

そりゃ体の大きさは全員の中で最小と最大だけど、魂は同じ形をしてるはず。


俺もシスもこんな扱いをしてきた施設側の目論見なんざ、これっぽっちも叶えてやるつもりはねぇ。

授業だってなるべくサボったし、職員や他の候補生にも関わらないようにしてきた。

二人でいつも居れば、悪いことだって半分こだ。

アイツは腹いっぱい食べて寝れば、それで満足だったからな。


それが更に疑念を持ったのは3年前、皆がアベル様なんて崇めてる02の奴が麻薬を使ってるのを見た時だ。

しかも自分に使うんじゃない、他の連中…当時は選抜者と呼ばれてた奴らを何人も部屋に引き入れて、クスリを使わせて性行為に耽ってやがった。

いやあれは只の行為じゃない、なんかヤバい儀式かなんかだろ…

あいつ自身も怖いし、こんな行為を野放しにしてるここの団体も怖い、職員連中も腐ってやがる。

知ってるんだぜ、その儀式の後清掃の連中がクスリのおこぼれで遊んでやがったの。

なあロミオ?


なんだか腹が立ってしょうがなかったから、奴らの薬をくすねてやった。

自分らで使うつもりはねぇ、だが職員連中との取引に使えるはずだ。

そう思いつき、その麻薬が何なのか、原料は何か、どうやって作るのかを調べた。


その麻薬はヘロイン。白い粉末だから、たぶん純度は高い。


施設内の庭を探したら、近所で栽培してるのか風で流れてきたらしいケシの群生を見つけた。

シスと協力してありったけの分泌液をかき集め、自己流で精製してみた。

出来たのは、アヘンだった。

更に加工すればモルヒネ経由でヘロインになるが、俺たちの知識と設備じゃ不可能。

そこで、アヘンを以て職員を探し、交渉した。

ロミオってやつ下っ端なのかよっぽど飢えてたのか、食いつきは良かった。

育児でDDTやってたのにしくじったのか一般職員に混じって施設をうろうろしてやがった。


ロミオとの取引で入手したかったのは情報だ。

イニシエーションとかいう、怪しい施術の内容と全貌。

それに俺らを作った狙いと最新情報。


イニシエーションは事前説明と大した違いはなかった。

脳に情報を書き込み、効率的に記憶をインストールする。

近所の農奴や転生者?を使って実験を繰り返し、今の方法に落ち着いたそうだ。

俺らはずいぶん優遇されているらしく、頭蓋骨は開閉せずに外部から脳味噌を電磁誘導?し、同時に映像で視覚野を刺激して定着率を上げるとか、よくわからん。


わからんが、何をしたいのかは分かった。

要は異世界で役立つ言葉や技術を使えるように脳をいじるんだろ?

なら、俺らに役立つモンをやってもらおうじゃねえか。

予定より遅れたがイニシエーションも始まったばかりだし、使ってやるよ。

肉体的な改造は後で不具合が出る可能性もあるし、主に精神・神経系統だな。

聞いた話、俺らは寿命だけなら100年を超えるらしい。

なら、メンテしないで使えるに越したこたぁないんだ。特に自分らの身体なんだからな。


向こうでやることについて、新情報は無かった。

本当に魔石とやらが欲しいんだな。

ただ印象として、手段のために目的を選ばなかった気はする。

異世界よりこの世界でやりたい放題やりたかったんだろう、おそらく所長がな。


ヤバいのは最新情報だ。

最近、別棟経由で施設の外へ行ってるやつがいるらしい。

いつの間にかいなくなった連中の周辺を嗅ぎまわってるとか、いないとか。

末端まで知られてるってことは、幹部連中はもう何らかの手を打ってるだろう。

幸いアヘンの件がバレるほどロミオも無能じゃないようだから、来年も取引できるよう栽培頑張らなくちゃな。

面倒だから誰か代わりにやってくれりゃいいんだけど。

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