072 tr19, concrete wall/コンクリートの壁

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【AD:2118年, 革命新暦:196年、夏】



胸のドキドキは収まったものの吐き気は収まらず、結局次の日も寝込んでしまった。

心配したのか、夕方ごろユリアが見舞いに来てくれた。


「昨日もいなかったみたいだけど…大丈夫?

 何かまたおかしなことに首突っ込んでない?」

「うん、大丈夫。ありがとう。

 実はね、昨日昼頃に外棟へ忍び込んできたんだ」

「えっ、別棟の隣の?」

「うん、壁みたいになってて、別棟と渡り廊下で繋がって…」

「ちょっとまった!今日はお人形の打ち合わせだったでしょ?

 女の子の人形に胸のオプションはいいけれど、外れたら困っちゃうもんね!」

「あ、ああ、うん、そうだね、まあ部屋に入ってよ」



「…チッ、リプニツカヤめ。勘のいい。

 しかし別棟と言う言葉が聞こえたぞ。

気になる話であるな、グリゴリ、ちょっと内を盗聴するぞ」

「出来ない、やり方が分からない。

 それにオラぁあの女に嫌われている。

「全くお前も融通利かない奴であるな…好き嫌いも関係なかろ。

 扉に耳をつければ聞こえる、ホレ行くぞ」

「ふんが」



「(凸凹コンビが来てたから、お人形さんのお話を被せましょ)」

「(そうだね、本題はまた明日)

 こないだ作ってたお人形さんのオプションははもう案出し出来た?」

「ううん、まだなの。

誰にどんなのあげたらいいか、ちょっと悩んじゃって」

「そっかぁ、誰にあげるかも大事だもんね。

 スーちゃんやトゥリちゃん、14の子も前は沢山いたし、おサルもいっぱいいたから、今の候補生も合わせると大変だ。

 僕もドベちゃんの分を預かりたいから、置く場所ももう決めておかないとねー」

「っ、リザには教えたの?」

「リザにはまだ教えてないよ。どう説明しようかなって、色々考えちゃって」

「そうねぇ、彼女拘りもあるだろうから、一緒にお話ししましょうか」

「そうだね、今度ユリアとリザに相談しようかな」

「うん、今日はもう遅いもんね。おやすみっ!」



「ぬぬぬ、返す返すも…しかし最初の話で別棟と言ってなかったか?

 あやつ、まさか別棟に忍び込んで人形とやらの材料を盗んで来たのではあるまいな…

 はっ、あやつも博士たちに相談に行ってるとか?!

 グリゴリ、さっそくリザ殿に相談だ」

「ふんが」



…危なかった、すっかり気が動転して凸凹コンビの事用心し忘れてた。

でも確かに、頭の中まとめないとダメだな。



そして翌日。

「リザおはよー、席ここ大丈夫?」

「あらシティアイおはよう、良いわよ。

 昨日は珍しく見かけなかったけど、何処か行ってたの?」

「あ、お、おとといの晩食べすぎちゃってさ…はは。

 それより今晩空いてる?」

「体調管理は気をつけなさいよ…今晩ねぇ、なにかするの?」

「いまユリアと一緒に『人形を作ってる』んだけどね、『みんな』の分を作るので大きさどうしようとか色々悩んでてさ。

 もし良かったらリザも一緒の部屋に来てもらって、『相談』に乗ってもらえないかなって」

「…そうね、もうそんな頃合いだものね。

 私もちょうど『相談』したいことがあったの。

 いいわよ、夕食後にユリアの部屋で良いかしら?

 この後授業で会うから、伝えておくわ」

「うん、よろしくー」




「例の件、でしょ?

 大丈夫、今日は終日ドラクルもグリゴリも博士たちの処で特別授業よ。

さっきの話もトンチンカンな解釈してたみたい。

 あの二人も困ったわね、妙にシティアに対抗意識を燃やして尾行までしてるんだから…」

「まーねー、悪いけどリザちゃん、そっちは控えるように伝えてもらえると嬉しいな」

「そうね、それとなくでないとまた暴走しそうだけれど。

 それで14の他の子達の事、何か分かった?」


「うん、ユリアもリザも聞いてほしい。

 結論から言うとね、消息不明になってる候補者の皆が居るところが分かった…と思う。

 自信がないのは、候補者の03,04,07,10,14だけじゃなく、06,08,09,13も居そうなんだ。

 場所は、別棟から渡り廊下の延びてる外棟。


 一昨日14の子達がまた特別棟へ運ばれたでしょ?

 あのタイミングで忍び込んで、建物の中を調べたんだ。

 手前側はただのコンクリートの壁に見えるけど、向こう側は外に繋がる建物になってるみたい。


 入ってすぐ、案内図が見つかって『保留室』って書き込みのあるエリアがあって。

 それで、さっきの番号も書いてあったから、たぶん消息不明になってる子たちはそこにいるんじゃないか、と推測したんだ。

というのも、直接見てはいないんだけど、確かにドベちゃんの声を聞いたもの。

保留室:03っていうのもあったし。


 それから職員たちの会話も聞いたけど、どうもスーちゃんかトゥリちゃんはその保留室に居そう。

 職員たちのうっぷん晴らしみたいな扱いだったけど…

 14の子達はね、最初と二回目が3人、おとといの三回目で2人だったから、まだ2人残ってるはず。

 僕も一昨日連れていかれた14の子達を見たけど、立ってるのがやっとの酷い状態だったよ…」



……しばらく、僕らは沈黙して下を向くしかなかった。

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