071 tr18, chaste flesh/情欲の城
※今回は性描写を含みます、苦手な方はご遠慮ください。
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【AD:2118年, 革命新暦:196年、夏】
ここのところ、ドラクルとグリゴリを捲くのも面倒になってきた。
なんであいつら、僕に執着するんだろうね?
リザともっと仲良くしたいなら、本人と直接話せばいいのに…
僕からだと聞いてくれないから、今度リザにお願いしよう。
別棟の渡り廊下と外棟の監視は、結局単独で行動することにした。
前回・前々回とも目撃されたのはお昼頃だし、周期的にはそろそろだろう。
別棟の上の階は、人がいないときに行ったらあっさり登れるのは確認済み。
特に警戒はしていないみたい。
外棟・別棟どちらも4階建てで渡り廊下自体の長さは50mほど、外棟の西側3階と別棟の東側3階をつないでいる。
渡り廊下には窓があるけれど、外棟の西側は一面壁で窓はない。
屋上はいろんな設備が置いてあるのは別棟から見えたし、渡り廊下の屋根へ上り下りして屋根伝いに走れば、往来は簡単だ。
念のためぼんやりしたPCBからセキュリティカードはくすねておいた。
毎日トレーニングで放置されてる時間帯の、今なら上に潜んでてもバレないはず。
何度目かの潜伏で、遂に当たりを引いたらしい。
「よう、これでもう出荷は3回目かぁ。
1回目は近くでボヤ騒ぎがあって驚いたけど、結局計画は変更なしだったなぁ」
「14グループはあと2回で全員だからな。
他の03や07はどうするんだろうな?」
「調整に難儀してるみたいだな、03は。
07は別用途だって、博士共がこないだ引き取っていったよ」
「かーっ、オレはペドフィリアじゃねーからあのチビ助はちょっとなぁ。
つーかウチの息子がよぉ…」
引き渡しらしき職員たちが会話に気を取られてるうちに、少しづつ窓から内側を覗く。
窓は換気の為か全開だ。
少し先でこちらを背にして14らしき子が二人、焦点の合わない目をしてぼんやりと立っている。
その向こうに職員も二人、こちらは何か端末を覗き込むのに夢中で、こちらに気が付いていない。
セキュリティ全然ダメだろ…
とはいえチャンスだ、窓伝いに扉を抜け、施設の外側へつながる廊下へと身を潜めた。
空調の利いた、ひんやりした廊下だった。
後で抜けることを考え、階段を上へ。
4階に上がるとさらに上へ行ける階段があり、扉は施錠されていなかった。
ここから外に出られそうだ。
こちらの建物はずいぶん広く、廊下も画一的に敷かれているので迷いそう。
外側だけ作ってから内側の用途を考えたんだろうか。
その分標識や案内図があちこちに張ってあるから、きっと職員やここの利用者も間違うことが多いんだろう。
それに1階ごとの高さが僕らの居住棟より高いから、天井と床の間はかなり広い空間がありそう。
そっと階段を降り、4階の案内図を探す。
手近な図面には警備室や研究室、給湯室のほかに、上から紙を貼り『保留室:03』『保留室:04』『保留室:06』『保留室:07』『保留室:08』『保留室:09』『保留室:10』『保留室:13』『保留室:14』と表示されたエリアがあった。
もしかして、これかな。
でもおかしい、僕の知っている番号と法則性が違う。
03,04,07,14の4グループなら今消息不明になってる子のいるところだし、施設に入った頃には06,08,10も見かけたけれど、じゃあ09と13は?逆に数字のない05,11,12はなんだろう?
そもそも保留って、何をしているんだろう…
わっ、階段を上がる足音がする!えーとえーと、屋上の扉前に行く!
…聞き耳を立てると4階で廊下に出たみたい、そーっと鏡を差し出して様子を窺う。
さっきの職員だ。
少し進むと、その職員の走る足音が聞こえた。
ばたばたばたばたっガン!
「またお前か、ほんとに懲りないな!」
「あーあーあー」
「おーい警備、誰かいないか!また03が抜け出したぞー」
えっ僕?来たの初めてだけど、てか誰か来ちゃう?!
「おーまたか、04の部屋に忍び込もうとしやしたかー?」
「ああ、この部屋はもう隣接止めた方がいいんじゃないか」
「まー悪いとも云われてないからそのまんまだったんですがね。
一人に集中すると不満が出るし、そこの04は03嫌がりますからねぇ…」
「調整しても好き嫌いはあるんだな」
「ある程度は残るみたいッスねー」
「ならばアレだ、たしか03は10を嫌ってなかったか。
あと09とか13あたりのデカいのだったら怯むかもしれない」
「だーめだめ、もうどっちもガバガバだから大小の違いじゃ意味ねーんスよ。
それにコイツ両方ついてるから見境なしだし。
けどそうッスね、確かに10を隣にして隔離すればちったぁマシになるか。
後で警備主任に提案しときますわ」
「頼むよ。我々も博士達に提案しておく。
しかし、なぜ未だに鎖にも繋がず放っておくのか理解に苦しむな」
「一応感知式の手錠・足錠はつけてるから、フロアより外に出ることはないっすけどね。
ある程度検体同士で交流を認められてるとはいっても、ちょっとねぇ…
それはそうと研究者様、本日はどいつと交流をご希望で?」
「ぬ、そう露骨に言わないでもらいたいね。
今日は04だ、14はさっき出荷したてであまり顔を見たくない」
「へーへー、見ての通り部屋はいつでも使えますから、03連れて行くんで後はご自由に」
「へっ、だから03追い出すですかい、研究者様もお盛んですなぁ。
おーおーお前もかわいそうになぁ、あっちの詰め所で慰めてやるぜ」
「あーあーあー」
…酷い、なんだここは。
保留室っていうのは、つまり僕ら候補生以外の検体たちを集めておくためのエリアか。
気持ち悪い、今すぐ逃げ出したい。
だけど忍び込める機会はそう多くない。
吐き気を抑えてできる限りフロア・エリアの案内図を手帳に書き留め、屋上から渡り廊下を抜けた。
辺りはもう夕方だった。
これ以上いないのは不審がられるから、一旦部屋に戻ろう…
だめだ、手が震える。
今晩の食事はパス。
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