第31話 自己紹介

 ハジメの部屋。

 四人が座れる椅子いすは、もちろんない。椅子いすに座っているのは、部屋のあるじであるハジメだけ。

 ほかのさんにんは、ベッドに座っていた。順番は、死神しにがみちゃん、マツ、ナオキの順。

「聞かないほうがいい感じか?」

「何がですか?」

 これは聞かないほうがいい、と思ったハジメ。三人が仲良くなっていた理由を聞くことにする。

「じゃあ、なんで三人で玄関げんかんの前にいたんだ?」

「まず、アタシとしにが……青井あおいユイがいたのよ」

 マツは、あからさまに言いよどんでいた。ハジメの顔がゆがむ。一言だけ絞り出した。

「ほう」

「そこに、オレがやってきただけだ。簡単な話だろう?」

自己紹介じこしょうかいをしただけですよ」

「いい機会だわ。もういちど。アタシは伽藍堂がらんどうマツ。18さいよ」

「えっ」

 ハジメはおおげさに驚いた。年齢が自分と同じか上だと思っていたからだ。お姉さんと呼びたくなるほどの貫禄かんろくがある。その名前もあいまって、年齢が上に見えていた。

「わたしは、青井あおいユイです。同じく、こっちでは18さいです」

 もう少し年齢が下かと思っていた。だが、ハジメは黙っていた。頭につけている白い髪飾りや髪形、かわいらしい服装から判断していた。ふと、ある疑問が口に出た。

「こっちでは?」

「あ。気にしないでください」

 口元を押さえた死神しにがみちゃん。マツは、やれやれといった様子で小さく首を横に振っていた。

「オレは九頭竜くずりゅうナオキ。22さいだ」

 堅苦しくない服装の男は、メガネの位置を直した。

「そうだったんですね。ぼくは、20さいです」

「若いですね。ハジメさん」

「そうね」

「え?」

「おい。名前も言えよ」

「あ。宝田たからだハジメです。よ、よろしくお願いします」

 なぜか、ちぢこまって頭を下げたハジメ。

 ほかのさんにんが笑った。


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