第127話
人通りの少ない路地裏とはいえ、いきなり人を背後から殴って攫うとは大胆な奴らだ。
ただ、その連れ去られた場所が路地の奥から先にある建物であることから納得できた。
路地裏の先は袋小路になっている。
それほど長い路地でもなく、扉の数から考えると何ヶ所かの店舗の裏口があるくらいものだった。
その最奥にある扉に入って行った奴らを見送り、俺は路地を引き返す。
扉の周辺には何の建物かのヒントもなく、あそこで留まっていれば目立って仕方がないからだ。
この路地に用がある者など限られている。
そんなところに見知らぬ男がいれば、それを見た奴らがどのような反応を示すかは容易に想像できるだろう。
不審者として同じように攫われるか、問答無用で痛めつけられて尋問されるかのどちらかだ。
それに奴らの行動から推察すると、この路地に面している建物は関連する店舗か何かだろう。そうでなければ、偶然にも人を攫うところを目撃されてしまう可能性にもっと慎重になって然るべきだ。
ゆっくりと歩みを進めながら路地から出た。
幸いにも、誰かがこちらを注視していることはない。
ふと、奴らを呼びに行った店主の店を見る。
看板の横に他でも見たことがある紋様があった。商人たちが入っている飲食店にも同じものが入っている。同じ系列の店舗ということだろう。
資本やグループが同じということは、この界隈全体が警戒すべき地域の可能性があった。
路地で監視を行なっていた男が迅速に確保されたのは当然の成り行きといえる。
何気ない様子で通りすがりの人間を演じ、周囲の店を窺いながら歩いた。
どの店にも紋様があり、それは複数の種類に分かれている。紋様と業種に相関性があったため、運営している商会ごとにその紋様が違うのだと結論づけた。
ギルドの括りではそれほど多くの紋様は生まれない。
そこまで考えると、やがて紋様のない店が一つもないことに気がついた。
俺の調査とは関連しないかもしれない。しかし、先ほど攫われた男が、そのことで拙い監視をしていた可能性について考えた。
複数の商会が業種業態ごとに店を展開し、支配する地域。
そこに至るまでにゾディ茶の活用や、ミハエルのような役人が傀儡に追いやられる案件数はどれくらいあったのだろうか。
この世の何割かには、自らの欲望のために胸糞の悪い行いを平気でする人間がいる。
あの商人たちも同じ穴のムジナなら、同情の余地なく地獄を見てもらうのも良いだろう。
まあ、おそらくトップが変わろうとも、似たような人間が後を引き継ぐ可能性は大きいのだろうが。
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