第122話

ミハエルの警護については、金鷲騎士団から騎士が派遣されていた。


闇ギルドに続けて密告を行い、あの御仁を揺さぶってみたのだ。


結果、本人が直接アプローチしたわけではないが、人を通じて真相が問い合わせられた。


ミハエルは最初のうちは警戒していたが、金鷲騎士団に今なお強い権力を持つあの御仁からのメッセージを聞き、協力関係を結ぶことになる。


ただ、ミハエルの醜聞に関してある程度の調査が行われたようで、その事実から半ば脅しが入ったともいえた。


ミハエルが完全否定すれば有耶無耶になるくらいの仄めかしだったため、本人からすれば逆に信頼に値すると決断したようだ。これが高圧的な申し出であったなら間違いなく躊躇したのだろうが、かつて自分と同じようにゾディ茶で不幸に陥った貴族令嬢の話を聞いていたため、協力関係に消極的になる理由はなかった。


この件であの御仁の柔軟性に触れることができ、ただ利用するだけの人物ではないと気づかせられたのは収穫だろう。逆に言えば、あまり迂闊なことをすると本当に敵に回しかねない人物ということだ。単なる脳筋や頭の固い武闘派なら使い捨ての駒にするところだった。


さて、商人や黒幕の周辺人物から、ミハエルに危害が加えられる可能性はかなり低くなったといえるだろう。


もし手を出そうものなら、間違いなくややこしいことになる。


金鷲騎士団を敵に回すだけではない。


その上にいる厄介な権力者が身内の復讐に燃えているのだ。


彼は王族に圧力を加えてまで奴らの暗躍を明確化し、芋蔓式に末端から首領までをも吊し上げるだろう。


これまでは複層の隠れ蓑を準備し、捜査の手がのびればあまり情報を持たないスケープゴートを使って逃れていた。


しかし、そういった逃げ道は俺が潰して回っている。金鷲騎士団に壊滅させられた闇ギルドもその一部だった。


標的を絞るヒントさえ与えれば、あの御仁には強権がある。俺が有益な情報を提供することで、想定以上の根回しと力を発動してくれるのだ。


これで今回の任務は八割がた解決に向かったといえるだろう。


あとは、ソフィアにとっても重要な要件に着手しなければならない。


はっきり言って、これが一番厄介なのだ。


さて、どうやって終着に持っていくべきかと思案することにする。


詰めが甘いと、ソフィアだけでなく俺やカレンにまで嫌な手がのびてくるかもしれないのだ。


『立つ鳥跡を濁さず』とはよく言ったものだが、ケリをつけるときはキレイで後腐れのない方法が最善なのである。


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