第65話
「そう、そのスタンスで協力するのね。」
ソフィアがギルドを出た後に、カレンと情報を共有することになった。
「本部からの補佐官も数名いることだからな。向こうからの要望や新しい情報があれば協力する。わざわざ行動を共にして、自分の今後の職務をやりにくくする必要はないだろう。」
「そうね。だったら、あなたにお願いしたいことがあるのだけれど。」
「誰かマークすべき対象がいるのか?」
ギルドとして素行の疑わしい冒険者がいる場合、こんな風に情報が共有されたりする。
ただの噂であったり受付嬢が感じる違和感程度のことも多いのだが、そういった噂や勘というものは馬鹿にできない。
「いいえ。新人冒険者のフォローをお願いしたいのよ。」
「新人?」
「ええ。」
俺は執行官であることを隠している。
ソロで活動し、大した功績をあげていない冴えない冒険者という位置づけなのだ。
そんな男が新人冒険者のフォローというのは、いささか問題がある気がする。
当然のことだが、カレンもその程度のことは気づいているはずだ。
「その新人冒険者はどんな奴なんだ?」
特別な配慮が必要な人物。
それくらいしか思い当たらなかった。
「領主の三男と次女よ。」
「···それは受けないとマズイのか?」
貴族の息子や娘などロクなイメージがない。
わがままでプライドが高いだけならまだ良い方で、すぐに親の権威を傘に着るような奴が大半である。
それは固定観念などではなく、俺の経験論だといえた。特に上位貴族である方が顕著である。
「極端にレアなケースよ。そのふたりは正義感が強くて庶民と対等な目線で話ができるわ。」
「もしかして庶子なのか?」
庶子というのはいわゆる妾腹である。
正室ではなく側室や妾が産んだ子どもで、爵位継承権が著しく低いか、ないことが多い。
「ええ。それと、母親は商家出身で、ふたりも物心がついた頃からそちらの家で暮していたみたい。」
「訳ありということか。」
「少しね。」
あまり貴族のゴタゴタに巻き込まれたくはなかった。
ただ、俺がそういった思考を持つことをカレンはわかっているのである。
何か複雑な事情があるようにしか思えなかった。
「もしかして、毒を盛られたという副議長が関係していたりしないよな?」
何気なく頭の中で結びついてしまったことを口にした。
もしそうなら、かなり面倒なことになる予感がする。
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