第63話
「よくがんばったな。」
こちらに来てからは俺と似たような境遇で今の立場となったそうだ。
ただ、若い女性であるがゆえに、俺とは比べ物にならない身の危険があっただろう。
「ありがとう。同じような境遇の人と出会えて少しほっとしてる。」
ソフィアの家族構成や交際していた相手のことなどは聞いていない。
そこまで聞くほどの関係か構築できているわけもなく、彼女もまた話していい相手かは見極められていない状況だろう。
「帯同しているメンバーは補佐官たちよ。彼らは散開して聞き込み調査をメインに動いてもらうつもり。」
ソフィアは暗殺事件の調査のため、冒険者ギルド本部より調査に出向いている。
帯同しているのは屈強な男ばかりだと思っていたが、大柄な女性もまじっているそうだ。
ヒューマン二名に獣人が二名。
獣人は虎人と狼人で、共にもともとが大柄な体型をしているとのこと。ローブのフードを目深に被って顔を隠していたため、気づけなかったようだ。
「それで、この街の新参者を洗い出すことになったのは副議長の件でか?」
「それ以前に情報があったのよ。ギルド本部によく顔を出す冒険者が、ヒューマンにしては背が高くガッシリとした体型の女性をこの街で見かけたって。」
この世界のヒューマンの身長は、女性で150センチメートル弱といったところだ。貴族や裕福な家柄の者はそれよりも背が高い傾向にある。
「どのくらいの体格だ?」
「身長170センチメートル、体重はおそらく60キログラム。白人で髪は金色、瞳はブルーアイよ。」
アメリカの白人女性の平均身長は165センチメートルほどだ。ブルーアイは元の世界全体では8パーセント程度しかいない。アメリカの白人ではブラウンアイと同率くらいに多く、ヨーロッパにルーツを持つ者の特徴ともいえる瞳の色である。ただ、瞳の色というのは24種類あるといわれ、明るい色は先祖が北欧やロシアに由来する場合が多かった。
「その女性の特徴に覚えがあるということなのか?」
外見的な特徴でいえばアメリカ人だとは特定できない。まして、こちらの世界で以前と同じ背格好なのかも断定できないのである。
しかし、それだけの特徴でソフィアは強い関心をもっているようだ。
「ええ。向こうで何度か顔を合わせた人物の外見に一致するの。」
「なるほど。それで、もうひとりは男性だが、外見的な特徴はわからないということか?」
ソフィアが最初に俺を見たときに、それがわかっていれば違った反応をしていたはずだった。
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