第59話
特殊部隊と聞くと男性ばかりだと想像する者も多いだろう。
しかし、近年では女性隊員も増えており、それはグリーンベレーも例外ではなかった。
「ええ。」
「もしかして、他にもいるのか?」
他というのはソフィア以外にも同じ所属だった者がいるのかという意味である。
彼女がα-アマニチンを特定したということは、それを毒物として用いた人物が他にいるということだ。
「そういうことになるわね。断定はできないけれど。」
「相手は知り合いか?」
グリーンベレーは数千人が所属する特殊部隊である。
そのうち現役として活動するのはいくつかのグループだけで、あとは米国内の各州や訓練を受けるために各所に散らばっていると聞く。
さらに、PMCと呼ばれる民間軍事会社に所属するOBにあたる者もおり、同じ隊員だからといってすべての顔や名前を把握することは難しい。
「私と同時期にこちらに渡ったメンバーは他に二名。その内のひとりは同じ衛生兵よ。」
「なるほど。」
特殊部隊の衛生兵同士は別のチームに所属することがほとんどだ。しかし、作戦地域や研修などで顔を合わせることは多いはずだった。
「ついでにいえば、彼らは国の外部機関に出向中だったはずなの。だからこちらに来た経緯や時期は私とは異なるわ。」
「君がこちらに送り込まれた理由は?」
「その前に、あなたがこちらに来た経緯、それと何を告げられたのかを聞きたい。」
当然のことだが、あまり信用されていないのだろう。
初めて顔を合わせたのが昨夜ということもあるが、特殊任務を請け負うチームの隊員なら、むしろ相手の素性を勘ぐるのは当然だといえた。
「···今の話は本当なの?」
俺はこちらに来た経緯を詳しく語った。
固定観念や予備知識なしでの彼女の反応を見たかったため、バルドル人の双子については何も話していない。
「本当だ。」
ソフィアはじっと俺の目を直視している。
話し始めてからずっとその状態だったが、俺も何も言わずに見つめ返していた。目は口ほどにものを言うといわれるが、人は脳内でなにかをイメージすると、その内容が目の動きに現れるのである。
参考までに、実際にあった事柄は右脳で、架空の出来事を考えている時は左脳が働く。そこからの連動で利き腕が右手なら嘘をつくときは右上や右横、真実を語るときは左上や左横に視線をやる傾向が強いとされているのだ。因みに、左利きの場合はその逆となる傾向にある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます