第45話
「それに関してはこちらの世界で測定できるのよ。」
「君が?」
「いいえ、巫女か聖女と呼ばれる者よ。」
いまいち理解が及ばなかった。
全容が見えないからだろうが、あまりにも抽象的過ぎて自分が何に取り組んできたのか、これからどうすれば良いのかが明確にならない。
「先ほど盟約と言っていたが、あれは誰と誰が交わした盟約なんだ?」
「G8とこちらの世界の盟主よ。」
G8とは日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアの7ヶ国と欧州連合を含めた主要国首脳会議のことだろう。
「盟主?」
「具体的な存在ではないの。はるか以前より地球に干渉している相手だということくらいしかわからない。」
一瞬、言葉を失ってしまった。
自分自身が置かれている立場からすれば、訳がわからないのは今更だ。
しかし、その盟主というのが神なのか国家なのか一個人なのかもわからないというのか。
「···巫女や聖女はどこにいる?」
「それは教えられないわ。」
まだそれほど信用されていないのだろう。
「君たちは統制官か何かか?」
この世界における指揮者だろうか。
少なくとも俺より情報を持っているようだ。
「···残念ながら、あなたと同じ捨て駒よ。」
「それは嫌な役割だな。」
「他人事みたいに言うのね。」
「大した情報を与えられていたわけでもないからな。聞いていた内容以上のことを期待されても知らん。」
実際問題、この世界に少し馴染んでしまっている。
元の世界に帰れるというのであれば少し違った感情を持つのかもしれないが、ほぼ諦めていることだ。
願わくは、娘が幸せに暮らしているかくらいは聞いておきたいくらいだが。
「そう、達観しているのね。」
「向こうの世界と行き来できたりはしないのだろう?」
「ええ、無理ね。」
「情報交換などは?」
「それも手段がないわ。」
なるほど、捨て駒というわけだ。
「君らの目的···任務内容は?」
「こちらで
同志というのは、おそらく7ヶ国から召喚された者のことだろう。少なくとも、あと5名はいると考えられる。
「それで戦力を集い、理外の存在を倒せということか?」
そう言った俺をミューフがじっと見つめてきた。
「その概念が少しおかしいのよ。」
「おかしいとは?」
「極東のどの立場の者がそう言ったのかは知らない。ただ、我々は理外の存在なんて聞かされていないわ。」
「どういうことだ?」
「我々の目的は、こちらの世界で人の負の感情が増大しないよう調整すること。簡単にいえば、司法や治安の役割を影から担えという内容よ。」
「そこはこちらも同じだろう。」
「ええ。でも大前提が間違ってるのよ。」
「大前提?」
「この世界で人の負の感情が増大すれば、厄災として顕在化するのは我々の世界なのよ。」
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