第15話
ナオが意図的にやったのだとしたら、巧みにそれを実行したということになる。
もしそうだとすると、侮れない技量ではないかと思えた。
「もうひとつは山中の洞窟に盗賊が逃げ込んだときのことです。拐った村人たちを人質にたてこもったそうで、そのときはキョウチクトウを入口付近で燃やして、その毒性で目眩や嘔吐の状態異常に陥った盗賊を全滅させたと聞きました。」
「それって···人質は大丈夫だったの?」
「あれで人質もほぼ全員が目眩や嘔吐、下痢や腹痛の症状に陥った。ただ命に別状はなかったし、ナオは殺されたり乱暴されるよりはマシだろうとしれっと言っていたな。」
答えたのはまたもやギルドマスターだった。
「それもお咎めはなかったのですか?」
「そんなものは下せない。盗賊を討伐し、人質を全員救出したんだ。やり方は少々乱暴ともいえるが、他に策がなかったと言われれば確かにそうだと言える。しかも彼はソロだからな。それに人質は体を売らせる目的で拐った女性ばかりだった。そこで躊躇していれば、おそらく彼女たちは性的な被害を受けていただろう。」
「そう···ですか。」
確かにその通りだ。
やり方はともかくとして判断は間違っていないのだ。しかも人質の貞操やその後の精神的影響を考えると、迅速かつ適切な判断だったともいえる。
「だからわかるだろう?ナオは盗賊や裏の世界の住人にとっては疎ましい存在だ。彼の正体はあまり公にしてはいけない。」
ナオのことが広く知れ渡るとつけ狙う者は多いだろう。犯罪者にとっては、機会があれば早々に始末しておきたい邪魔者に違いない。
「納得しました。」
「そういうことだから、受付カウンター周辺やギルドの部外者がいる前でナオの話はするな。」
「はい。でも、だからナオさんは普段からあのような演技をされているのですね。」
目立たず腕利きであることがバレないように演技をしているのだろう。
「あれは演技というより半分は素だな。」
「え?」
「出会ったときからそうだったが、商人のような立ち居振る舞いが自然とできるようだ。」
「もともと商人だったとか?」
「どうだろうな。当時は若過ぎる外見とのギャップで違和感が大きかったが、知性や品性などを考えると商人よりもどこかの貴族か王族ではないかと思えたものだ。」
「そういえば、昨日初めて話しましたが年齢以上に落ち着いている方だと思いました。まるで父親の世代と接しているかのような印象があります。」
「昔からいろいろと経験が豊富に思える奴だったからな。」
「いろいろですか?」
「···いろいろだ。」
それはエロエロも含むのだろうかと、ジェミーは余計なことを頭によぎらせた。
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