第14話 「3人」
朝食を食べ終え、皆の食器を重ねて片付けを始めた。
「大丈夫、わたしがやるよ~」
マナトがそのまま食器を洗おうとすると、後ろからミサが声をかけた。
「俺にやらせてほしい」
少し深刻そうに言ったマナトの顔を見て、ミサは二つ返事で"分かった"と返した。
(早く決めないと、みんなを危険にさらわせてしまう...)
洗い物をやりながら、マナトは悩み続けた。
(どうしよう、どうすればいいんだ...)
(俺は何が欲しいんだよ...)
マナトは分からなくなってきた。最強レアスキル『選択者』を獲得したのはいいものの、マナト自身が何が欲しくて選択したいのか、分からなくなってきていた。
マナトは深呼吸して、転生した直後の考えを思い出した。
(転生前、俺は友達が居なかった。理由は俺に魅力がないからだと思ってた。だから、最強のスキルを持つことが出来れば、注目されて友達が出来ると考えていた)
(けど、そんな身勝手な目的で仲間に危険をさらすのは酷すぎるよな...)
「僕は大丈夫ですよ」
そう言いながら、マナトの肩に手を添えるカミヤ
「え!?」
考え事に集中していたマナトは後ろにカミヤが来ていたことに全然気づかなかった。
「実は長老の話聞いてました」
「危険なのは最初っから知っています。けどそれを分かって一緒にいます」
カミヤは真面目な顔でマナトに言う
「あ、ありがとう...」
まさかそんな事言われると予想していなかったマナトは、ぶっきらぼうに返事をしてしまった。
「さっきから同じ皿ずっと洗ってますよ、悩んでるのバレバレです」
「あ、ほんとだ」
手には泡だらけで本体が見えなくなりかけている皿があった。その皿を見て、2人で笑う。
「ちょっと、2人だけ何楽しそうにしているの」
2人の笑い声に誘われて、ミサが不服そうな顔をして駆け寄ってきた。
「ミサも大丈夫だよ」
「え!?」
マナトとカミヤは驚いて、2人とも同時に声を出してしまった。
「ミサだって最初っから気づいてるよ!」
自分だけ仲間外れのように感じてしまったミサは、少し強めの口調で自身の主張をした。
「みんなありがとう」
マナトは初めての感情を味わった。人と心が繋がるのは、こんなにも気持ちのいいことなのかと気づいた。今まで、ずっと1人で生きてきたマナトにとってそれは、何ものにも代え難い心温まる思い出となった。
(俺は世界で1番の幸せ者なのかもしれない)
マナトは本気でそう思った。
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