mission 9 オセロノヒッショウホウナンカシラナイ
あれから何分…いや何時間たったのだろうか。
俺はまだ隕石に押され宇宙を彷徨っていた。
「ねえねえ。隕石くん?君はどこへ行くんだい?」
勿論、誰も答えてくれなかった。俺の人生散々だ。平凡な暮らしを送っていたかと思えば大金背負ったメガネ女が現れてマザコンと組まされて隕石に轢かれて…元凶はあのクソメガネか!
「ヨシ…ヨシズミクン…キ…ますか?」
なんだろう。クソメガネのことを考えていたらクソメガネの声が聞こえてきた気がする…。
「吉住くん!聞こえますか?」
つ、通信機!
「は、はい!」
「急にあなたの発信機が猛スピードで移動を初めていますが何かあったんですか?」
「隕石に惹かれてます!!」
「…そうですか。あなた今ゴーランダ星の近くに居ますよ。」
「へ?」
どうやら隕石の軌道はゴーランダ星の近くを通っていたようだ。
「今すぐ隕石の軌道から離脱してゴーランダに向かってください。」
「そんなこと言われたってどうしようも出来ないんですよ!」
「それについては大丈夫です。もうすぐ−−−」
「アラタぁぁぁあ!!」
なにかが俺の名前を呼びながらこちらへ向かってくる。その何かは隕石にそのまま突っ込み俺に向かって爽やかな笑顔でこう言った。
「無事だったかい?アラタ。」
お前のせいじゃ!マザコン!!!
俺は隕石が砕けた衝撃によって吹き飛ばされた。まあ恐らくは衝撃ではなく突っ込んできたマザコンに吹き飛ばされたが正解だが。
「うおおおお!!」
俺はそのまま猛スピードでゴーランダ星へと飛んで行った。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「やあ。目が覚めたかい?」
俺が目を開けるとそこには見知らぬ青年がいた。
見た目的に地球人の様な見た目で年齢は俺とそんなに変わらなそうだが白い髪に青い目をしていた。
「こ、ここは?」
「君、空から降ってきたんだよ。よく無事ですんだね。ここは僕の家さ。良くなるまで休んでいくといいよ。」
マザコンの能力のおかげか俺の身体に怪我は見当たらないが先程までの万能感は消えていた。恐らくコピー能力の時間切れが訪れ、能力を使った反動で俺の身体は機能が低下しているのだろう。
「あ、ありがとう…ございま−−−」
待て。なんでこいつ言葉が通じるんだ…?地球外生命体の言葉を翻訳してくれる通信機は宇宙服に備え付けられている。俺は今宇宙服を着ていない状態で寝かされていた。この星に酸素がある事にも驚きだが、それ以上にこいつに言葉が通じることの方が不自然である。
「ん?どうかしたかい?」
「いや、なんでもないんだ。助けてくれてありがとう。礼を言うよ…。」
俺にはマザコンの能力ももうない。こいつの正体がわかるまでは迂闊な行動を取らない方が良さそうだ。
「ところで君…。地球人?」
お前が触れてくんのかよ!どう答えるのが正解だ…?
「あ、ああ。そうだよ。」
これが吉と出るか凶とでるか。正直に俺は答えた。
「やっぱり!地球人か…懐かしいな。」
「あんたは地球人なのか?」
「ううん?違うよ。君、名前は?」
「アラタ…吉住アラタ。」
「アラタか。いい名前だね。僕はキエル。」
目の前の青年は自分が地球人ではないと否定し、自らをキエルと名乗った。
「キエル…。ならなんで俺と言葉が交わせるんだ?」
「ああ。それで君は不思議そうな顔をしていたんだね…。」
俺はこいつに言葉が通じることに疑問を抱いたがそれを顔に出したつもりはない。限りなく自然を装ったつもりだった。
「わかるんだよ…。肌の張りや瞳孔の動き、それに息遣いの変化…人間ってわかりやすいからね。」
なんなんだこいつ。そんなとこまで見ていたのか。おそらくこいつは…変態だ。さっき会ったばかりの人間のそんな細かいところまで見ているなんて変態以外の何者でもない。おそらく今も心の中で俺とどんなプレイをするかで妄想し楽しんでいるに違いない。
「君の言葉がわかる理由か…。君たちの事は色々教えられたからね。その時に覚えたんだ。」
教えられた?地球に関する学科でもあんのかな…?
「おや。君の友達がもうすぐここに来るようだ。」
「友達?」
「アラタ!探したよ。大丈夫かい?」
息を切らしてこちらに走ってきたのはマザコンだった。
「大丈夫もなにも全部お前のせいだろうが!この人が助けてくれたからよかったけどな!」
「この人…?誰か居たのかい?」
「え?」
俺が後ろを振り返るとそこにはキエルの姿は既になかった。
なんだったんだあいつ…。
「とにかく僕たちはゴーランダに到着した!早くヒナタと合流しよう!」
「あ、ああ。そうだな。」
考えてもわからないことはある。俺はキエルについて考えるのをやめてマザコンと一緒に先にこの星に向かったヒナタを探すことにした。
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