海エリア再び
海エリア再び、でした。
「アスティ」
「はい」
「さては残りのエリアは雪原と火山?」
「どうして分かったんですか!?」
分からないでか。完全に今までのエリアの繰り返しじゃん。もちろん細部は違うみたいだけどさ。あとは、魔物も。
「リオンちゃん」
「うん?」
「なんかいる」
クレハちゃんに袖を引かれて指差された場所。そこに見えたのは、遠くに見える大きな影。うねうねと動いてる。ヘビか何か、かな?
「アスティ。あれは?」
「量産型リヴァイアサンです」
何言ってんだこいつ。何言ってんだこいつ。いや本当に、え?
『軽々しく行われる伝説生物の量産』
『リヴァイアサンwww何やってんの?』
『量産型のくせに大きすぎでは?』
確かに。とんでもない大きさだ。島ぐらいはあるんじゃないかな。それがザコとして出てくるって……。難易度調整どうなってんの?
「あわわわわ」
「ひええ……」
クレハちゃんとバーバラさんはリヴァイアサンと聞いて完全に怯えてしまってる。異世界でもリヴァイアサンは通用するらしい。ただ、うん……。討伐報告とか、絶対ないんだろうなあ。
「り、リオンちゃん」
「うん。大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ……。それより、その……。もしかしてボスって……」
「もちろん本物リヴァイアサンです!」
『ふぁーwww』
『知ってたwww』
『分かってたけどマジのリヴァイアサンとかどんな大きさになるんだよ』
海底の地面がリヴァイアサンでできてるって言われてもボクはもう驚かないよ。むしろそれぐらいは大きいと思ってる。
「上の海エリアではできなかったので! お魚釣りしましょう! お魚釣り! 楽しいですよ! 豪華な船もご用意しています!」
アスティだけが無駄にテンションが高い。とっても楽しそう。はは、殺意がわくね。
「船ってどんな?」
「こちらです!」
そうして、アスティに案内された先。そこにあったのは、いわゆる豪華客船だった。なんかもう、すごい。めちゃくちゃ大きい船で、プールまである、らしい。
とりあえず言いたい。
「世界観っ!!!」
『そんなものが女神にあるわけないだろうがいい加減にしろ!』
『自重なにそれおいしいの?』
『クレハちゃんとバーバラさんがぽかんとしてるのが何とも言えないw』
ぽかんともするよ。ぶっちゃけボクですらこんな豪華客船を見るのは初めてだよ。というより海沿いに住んでるとかでもない限り、豪華客船を見ることなんてまずないと思う。
「でも釣りには不向きでは?」
「釣り用の小さい船もご用意しました!」
「もう好きにして……」
『そこで諦めるなよリオン!』
『お前が諦めたら誰が邪神を止めるんだ!』
「いやボクがいても止められないんだけど」
『それはそう』
最近はさすがに慣れてきたような、そんな気さえしてくる。慣れたくなんてこれっぽっちもないけど。
ともかく。せっかくだし、船を堪能しよう。なあに、どうせ誰もここには来れないからね! 一般冒険者はフェンリルあたりに勝てるわけがないと思ってるよ!
どこから乗ればいいのかなと思っていたら、アスティによって全員で甲板に転移させられた。セキュリティ面は万全とか、そういう話じゃないと思う。
甲板には大きなプールにたくさんの椅子。みんなで遊べるようにもなっていて、夏はここでプール遊びをしてもいいけど。
「たくさん友達を呼んで遊びたいね。まあその友達がいないんだけどね!」
『あっ……』
『何言ってんだ俺らはお前の友達だろ?』
『みんなで遊ぼう!』
「え、どうしよう、すごく嬉しい」
こいつらいつもボクをいじって楽しんでるだけだと思ってたのに……。いいところがある。なら誰かを実際に呼んであげても……。
『リアルリオンちゃんに会えそう』
『水着姿楽しみ』
『リアル水着リオンちゃん!』
「そんなことだろうと思ったよ!」
いや分かってる。分かってた。こいつらには何も期待してないよ。当たり前だ。どうせ友達なんて……。
「リオンちゃん。友達だよ?」
そう言って、クレハちゃんがボクの手を握ってくれた。
「クレハちゃん。結婚しよう」
「え!?」
『リオンが暴走した!』
『大胆な告白は女の子の特権ってやつですか!?』
『落ち着け! まずはどこで式を挙げるか決めるんだ!』
『もちろん配信で流してくれますよね!?』
「お前らが一番落ち着いてないだろ!」
話が飛躍しすぎだよ! いや変なことを口走ったボクも十分に悪いけど!
クレハちゃんにも迷惑をかけてしまった。謝るためにクレハちゃんを見て……。顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせていた。
「クレハちゃん?」
「な、なんでもない!」
そう言ってクレハちゃんは逃げていってしまった。バーバラさんの後ろに隠れてる。
さすがにボクでも察したよ。これは、あれだね。
「ボク、何かやらかしちゃいました?」
『草』
『悲しいテンプレだなあ』
『自覚があるのはいいことだよ、うん』
もうちょっとちゃんと慰めてほしかったです。
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