人類の夢
ともかく。アスティが言うには、もう安全らしい。ボクとアスティに隷属しているのだとか。それはそれで怖いけど、安全なら何も言うまい。
とりあえず、撫でてみる。おお、確かにもふもふだ。誰にも手入れされてないはずなのにこのもふもふ……。とても素晴らしいと思います。
「わあ……。もふもふだ……」
「これはすごい……」
クレハちゃんたちももふもふを撫でて喜んでる。やはりもふもふは偉大だ。
足も、大きいよね。肉球もそれだけ大きいんだろうなあ……。
ふむ……。
「ねえ、ちょっと踏んでくれない? もちろん優しくゆっくりと」
「リオンちゃん!?」
クレハちゃんが正気を疑うような目でボクを見てる。やめて、心が痛くなるからそんな目で見ないで。
でも! でもさ! 大きい肉球を全身で堪能する! 最高じゃないかな!?
「これは……全人類の夢だから……!」
「そ、そうなの……?」
『クレハちゃんがどん引きしてるw』
『適当なこと言うなよリオンちゃんw』
『え、事実では?』
『大きいにくきう……うらやましい……』
『お、おう』
そうそう。全人類の夢だから仕方ないのです。
その場で横になると、もふもふがゆっくりと足を下ろしてきた。そのままぽすんと、ボクの体の上に。おお、すごい、めちゃくちゃ大きいのにちゃんとぷにぷに……。素晴らしい……。
「問題はちょっと臭いってことだけど……」
『そりゃそうだw』
『ペットの犬でもやっぱり臭いはあるからね』
『で、肉球の感想は?』
「さいっこーだね!」
いやあ、生まれてきて良かったとまで思えるね! 言い過ぎかもしれないけど!
もふもふをたっぷりと堪能した後は、次の目的地だ。つまり、ボス部屋。でもこれについては、わりとあっさりたどり着くことができると思う。
理由は、とても単純だ。
「ボクは今、風になってる……!」
「わあ……! すごく速い!」
「これは気持ちいいわね……!」
「そうでしょうそうでしょう!」
ボクたち四人はもふもふの背中に乗って移動中だ。大きいもふもふなだけあって、四人が背中に乗ってもまだまだ余裕。
さすがに落ちないかと不安になったけど、そこはアスティが不思議パワーでどうにかした。具体的には、人間を通さない壁をもふもふの体の横に作っている、らしい。何でもありだ。
こうしてボクたちは安心して走るもふもふを堪能できてるってわけだね! 素晴らしい! 大きいもふもふの背中に乗って風を切る……。これも人類の夢だ!
「人類の夢が動物関係ばかりでいいの?」
「いいのだ!」
「いいんだ……」
『よくないが?』
『何言ってんだ人類の夢だろうがああん!?』
『醜い争いが起きかけてるw』
争いばっかりだね! 仕方ないね、もふもふは偉大だからね!
さらに一時間ほど走り続けて、ボクたちはそこにたどり着いた。地面にぽっかりと開いた穴。ボス部屋になってる洞窟の入口だ。
「案内ありがとう」
ボクがそう言うと、もふもふは一度吠えて走り去ってしまった。
ちなみに。このフロアでボクが呼ぶとすぐに駆けつけてくれるらしい。いつでももふもふを堪能できる。素晴らしい。
さて。そんなことよりも、いよいよボス戦だ。何が出てくるかは……まあ、なんとなく分かる。
「本物の! フェンリルとケルベロスです!」
アスティが示した先にいたのは、さらに大きな犬っぽい魔物が二匹。二匹とも、凶悪な外見だ。口からあふれるよだれは酸にでもなっているのか、床が溶けてる。
うん。
「かわいくない」
「じゃあ処理しちゃいましょう」
そしてあっさりと邪神によって切り捨てられました。知ってた。
『ボス戦強制終了』
『クレハちゃんは慣れてきてるな。苦笑いだ』
『なおバーバラさんの目は死んだ』
『この人でなし!』
「神ですから!」
「威張るな」
むしろ恥だと思えよ。
素材はもちろん回収なんだけど……。クレハちゃんたちでもやっぱりどこが素材になるのか分からないみたい。一般的にはやっぱり牙かな、ということで牙を回収。あとは魔石と。
「このよだれも集められれば武器になりそうだけど……。ばっちぃ」
「酸ですしどっちみち触れないから一緒では?」
「それはまあそうだけど」
そもそも集められないか。アスティに頼めばどうにかしてくれそうだけど、それ以前にそのアスティがどんな敵もどうとでもするだろうから、武器を考える必要がない。
というわけで、素材はこれで完了、ということで。
「それでは、次に向かいましょう! 次は七層です!」
「こんな攻略でいいのかな……?」
「クレハちゃん、考えても仕方ないよ。アスティだもの」
「そっかあ……」
『アスティだもの、で納得される女神様』
『少しは反省して悔い改めて?』
「うるさいですよ!」
いやあ、でも言われて当たり前だと思うよ。
そんなことを言いながら、ボクたちは階段を下りていった。さあ、いよいよ七層だ。どんな場所なんだろうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます