第16話「怪鳥アリカント」

-南のマプチェの集落-


ダダダッ


ラウタロは駆け足で、父達の元に駆け寄った。


ラウタロ「ナウエルが俺の身代わりになって

大きな鳥に連れ去られてしまった。」


ラウタロの周囲の者達は、驚きの表情を見せた。


ナウエルの父アウカマンは、ラウタロの身体を下から上まで眺めた。


アウカマンは落ち着いた声色でラウタロに尋ねた。


「ところでラウタロ、

お前の身体に付いている、その光る粉の様なものはなんだ?」


ラウタロ「これは・・

その鳥が羽ばたく度に、この粉が降ってきたんだ。」



フタウエ「アリカント。」

フタウエがいつの間にかその場におり、言葉を発した。


!!



クリニャンク「あの伝説の怪鳥がこの地へ。しかし、北の砂漠に住むと聞いていたが。」


フタウエ「左様、じゃが侵略者共が現れて、住処を追われたのやもしれぬ。」


ラウタロは話を聞きながら俯いている。


アウカマン「そう気を落とすな、ラウタロ。

ナウエルは他者と親しくなるのに長けておる。」


ラウタロ「・・・」


アウカマン「たとえそれが、伝説の存在であったとしても、生きてる可能性は充分ある。」



-とある山中-


ナウエルが目を開けると、眼前に鳥が映った。


鳥は叫びながら、ナウエルを嘴でつつこうとしてきた。


鳥の嘴を至近距離で交わし続けるナウエル。


鳥は渾身の速さで、一撃を加えようとした。


ナウエルは一瞬の力の溜めを見逃さず、宙返りにして後方に下がった。


「ちょっと待った!」


ナウエルは、手を突き出し、鳥の身体に目をやった。


ナウエル「もっと光輝く身体をしていたような・・

ひょっとして、あの伝説の・・」


ナウエルは辺りを見渡すと、自分が大きな木の上にいる事を把握した。


どうやらこの鳥の棲家らしい。


そして、金の塊が微かに自分の手元に転がっている事に気付いた。


ナウエルは塊を手に取り、鳥に差し出した。


即座に鳥は金の塊を啄みだした。


ナウエル「君はお腹を空かしているのか??」


鳥は羽をバタつかせ、喜んでいる様であった。


ナウエルは目を凝らしながら、遠くに見える湖に目をやった。

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