第13話「轟く名」 

-南のマプチェの訓練場-


何者かが石に縄をつけた武器を振り回し、投げた。


飛んで行った石は、大岩に命中し、激しい音をたてて大岩の中央を貫通していった。


エルネイ「相変わらずいい腕だな。」



威風堂々とした男の名はエルネイ。

肩幅が広く、彼の雰囲気は誰しもが特別な存在だと肌で感じる程、異質感があった。


マプチェ族のシンボルでもあるバンダナは付けておらず、幾つもの髪の束をたなびかせた独特の出立をしている。



ガルバリノ「お前には負けるよ。

頼んだぞ、我らの未来を。」


石を貫通させた人物は、ガルバリノといい、タイエルと共に「南の二鷲」と呼ばれている。

野生的な長髪の男性で、勇壮な雰囲気のある戦士だった。


石に縄をつけたアメリカ大陸特有の武器(スペイン人などによりボリアドラスと呼ばようになった)の達人だった。



エルネイ「そう言えばあんた。

特別目をかけてる奴がいたよな。」


ガルバリノ「なぜかほっとけなくてな。」


エルネイ「俺がちっちゃい頃はなんも教えてくれなかったのによぉ。」


ガルバリノ「お前は特別だろ。

だいたいお前に何かを教える必要があるのか。」



エルネイ「・・かもな。」



エルネイ「・・けどよぉ。

未来へ導く役目ってのは、俺じゃあないな。」


エルネイのその言葉にガルバリノは神々しい孤独を感じた・・


2人の後方から少女の声が聞こえた。



グアコルダ「お兄ちゃん、アウカマンさんがルカを直してほしいみたい。」



-アウカマンの住居-

「南のニ鷲」も名を馳せていたが、それより以前から特に白兵戦で名を轟かせた人物がいた。


名をアウカマンといい、父は「マプチェの五大樹」筆頭である英傑クリジャンカである。


ナウエルは、戦士として申し分のない血脈を受け継いでいた。



トンカントンカン


長身を生かして、ルカの頂きを修理しているエルネイ。



アウカマン「悪いなエルネイ、手伝ってもらって。」



エルネイがルカを直していると、地元の者でないある一行が通りかかった。


フェニストン「ここが南の地か・・噂どおり猛者揃いには見えるが・・」


灰色のバンダナの寡黙な少年は、心中で呟いた。


マイロンゴ「おい見ろよ。

あのおっさん、テントなんか直してんぞ。」


粋がった感じの巻き毛の少年マイロンゴは、遠目からエルネイを馬鹿にし始めた。


マイロンゴ「でかい図体してんのに、情けねーな。」


マイロンゴ達の背後から、寒気のする複数の声が聞こえきた。



「おい、こいつでちょっと、からかってみろよ。」



マイロンゴ達が振り向くと、瓜二つの人物が2人立っており、マイロンゴに斧を渡してきた。

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