第11話「化け物」

-南のマプチェの地-

ツルクピチュン「獣の四肢を持った化け物か・・想像がつかないな。」


ナウエル「心配すんなって、化け物だろうとなんだろうと俺が倒すからさ。」


おもむろにナウエルが複数の暗器を取り出し、遠くに見える柱についてる的の真ん中に3発とも命中させる。



ツルクピチュン「確かに、君の動きも人のものとは思えないね。」


ナウエル「ヒドイなぁ、僕は化け物なんかじゃないよぉ。

こうやって言葉だって話すんだし。」


ツルクピチュン「ああ君はとっても人間らしいよ。

ただ言葉を話さない人もいる。

何を持って人とするんだろうね。」


ナウエル「できる事が限られてても、色々でき過ぎても化け物扱いされる事もあるしなぁ・・」


リカラエン「ナウエルが今考えてる事は、人の定義うんぬんとは少しズレてるかもね。

化け物なんて言ってくる奴の心境は、大概は単に不安だったり、悔しさを鎮めたり、賞賛したいだけ。」


ナウエル「はあ。

何だかよく分からなくなってきたなぁ。」



ラウタロ「ところで、そいつらも言葉らしきものを話すらしいな。

案外、その化け物も只の人なのかもな。」


リカラエン「只の人ねぇ・・」


ナウエル「さて、まだ午後の集まりまで時間があるな。

ちょっと水浴びしにいかないか?」


ラウタロ「いいな、俺もそうしよう。」


ツルクピチュン「僕は遠慮しとくよ。」


ナウエル「そっか。」


ツルクピチュン「じゃぁね。」


ラウタロ「またな。」


リカラエン「ラウタロ、怪我してくるんじゃないよ。

今日の祭事は特別なんだから。」


ラウタロ「ああ、分かってる。」

 

ナウエル「リカさん、安心してよ!僕がついてるんだから!」



-南マプチェの地-川沿い


ツルクピチュンは、1人川原の傍で座り込んでいた。


ツルクピチュン「得体の知れない侵略者。

ナウエルの様な強さもなければ、ラウタロの様な賢さもない。」


ツルクピチュン「僕には何ができるのだろう。

得意なのは、戦いとは関係ないこの水切りぐらい・・」


ツルクピチュンは石を投げた。


石はどこまでも川を跳ねて進んでいった。


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