背負いし者たち
第10話「脅威」
静寂に包まれた世界には、パチパチという焚き火の音が響き渡っていた。
そこには1人の男が座し、対面に丸太の山があった。
男は山の頂にある一本の丸太を穏やかな目で見つめていた。
まるで男はその一本の丸太の断面と顔合わせて、語り合っているかの様だった。
やがて焚き火の音が途切れた・・
刹那、男は近くにある斧を手に取り、完全な暗闇の中で丸太に切り掛かる。
バリバリと木が割れる音が響き渡った。
そうかと思えば、男は後退し背後にある弓を手にする。
幾つもの矢を番え、一気に複数の矢を丸太に当てていく。
無数の矢が丸太を削ぐ様な音を奏でている。
間髪入れずに今度は、側にあった槍を手に取り、残像が幾つも映る程の突きを放つ。
丸太はガツガツと穿たれてる音と、木片がパラパラと落ちる音を発していた。
怒涛の様な瞬間がピタリと止まると、再び焚き火の音が聞こえてきた。
炎が大きくなり、丸太が映し出される。
そこには木彫りの神々しい蛇が出来上がっていた。
辺りは静寂に包まれ、炎に照らされた蛇だけがユラユラ揺らめいていた。
男は蛇を眺めながら、蛇が出来上がる様を後ろで眺めていた男に話しかけた。
エルネイ「ガルバリノか。」
ガルバリノ「邪魔したか。」
エルネイ「いや・・何かあったんだな?」
ガルバリノ「ああ、どうやら北とやりあった奴らがまたくるらしい。」
エルネイ「いよいよか。」
-ペルー南部-
アルバラド「ゴホ、ゴホ。
ピサロ派のバルディビアが、あの地にサンティアゴなる街を作ったらしいな。」
カスティニャダ「ああ。」
アルバラド「あの地にどんな期待をしておるのだ?」
カスティニャダ「さあな。
実際お上に送ったあんたの報告書で、誰も興味を示さなくなったのにな。」
アルバラド「無論だ。兵の消耗が激しすぎる。
おまけに大した収穫もない。」
カスティニャダ「インカと違って金がある気配もないしな。
ん?何か忘れているような・・」
アルバラド「ゴホ、ゴホ・・赤字も甚だしい。」
カスティニャダ「ちなみに、バルディディビアについて行こうって奴はほとんどいなかったらしい。」
アルバラド「我らのご老人様がピサロと揉めて、あの地に希望を求めた。
が、あれが運の尽きだったかもしれんな。」
カスティニャダ「かもな。
結局覇権争いに破れ、あんたのボスも殺されちまったしな。」
アルバラド「ワシももう長くない。
とは言え、死刑になったご老人様よりはましか・・
マプチェ・・あいつらはワシらの死神よ。」
-南のマプチェの地-
ナウエル「タイエルはよく生き延びることが出来たね。」
リカラエン「死から遠い男と呼ばれてるぐらいだからな。」
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