第48話 あるバイト門番からの手紙

 拝啓、親愛なる父さん、母さん、ダーマ、ラーマへ。


 王都に着いて早い事に、一月が経ちました。


 無事に夢だった騎士団に入る事が出来た俺は、充実した日々を送っています。


 頼れる仲間や尊敬できる先輩達に囲まれ、日々、特訓に励む毎日は、辛さよりも楽しさが勝る理想の職場です。


 先日は、馬術向上の為に白馬を飼うことにしました。

 名前は、ゲホゲホと言って、人懐っこい自慢の相棒です。


 そんな愛らしいゲホゲホを、早くみんなにも見せてあげたいです。


 中々、纏まった休みの取れない職場の為、ブレー村に帰る事は難しいけど、この通り、俺は、元気にやってます。


 だから、心配しないで大丈夫です。


 初めての給料だから仕送りも少ないけど、これでなんか美味い物でも食って下さい。


 ロムガルド王国騎士団所属、カーマ・インディーより


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 王都から南に位置するブレー村では、カーマから届いた手紙を嬉しそうに読み上げる家族が居た。


「カーマ、向こうでも頑張ってるみたいね。私は、自分の息子が王都の騎士団に入団したなんて夢みたいよ」


「カーマは、昔から凄かったからな! お前達もカーマみたいに立派に成長するんだぞ!」


「うん! 俺、カーマ兄ちゃんみたいに立派な騎士になるよ!」


「私も!!」


「その調子で頼むぞ! じゃあ、今晩は、カーマが送ってくれたお金で、ご馳走様でも食べに行くか!」


「「賛成!!!」」


 インディー家は、その自慢の息子が嘘を付いている事などつゆ知らず、飼い始めた馬の話をしながら、村で唯一の定食屋に繰り出していった。


 狭い村の中で、出会う人全てに長男の自慢をしていった母親のお陰で、ブレー村の中でカーマ・インディーの評価が一夜にして急上昇している事は、当の本人が知る由も無かった。

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