坤
坤の章1 最強魔法少女タトーとステーキ弁当
五月十日。
ポツポツと降っていた雨。
それがやんだお昼頃のこと。
二人の膝元には、丸い木の箱が置かれている。
「おいそうなステーキ弁当ね」
「タトーさん、早く食べよう! 」
「そうね! 」
タトーとナナレイが手を合わせたその時。
「
「いただきます! 」
突如、山彦のような声と共にピキーンと時間が止まった。
タトーだけは、時間が止まっていない。
「…………………………………………………………………………………………………………」
しかし、挨拶を終えたタトーは、魔法にかかっように箸を構えて止まる。
五分後。
時間停止の魔法が解けた。
「いただきます! てっ、無い! あたしのステーキ弁当は、どこ? 」
ステーキ弁当が無いことに気づいたナナレイは、切り株の裏やしげみの中を探し続けた。
すると、タトーが大きく左腕を後ろ降った。
「亜空間屋敷! 」
「え!? 」
ナナレイは、しげみから黒い扉の方へ目線を移動させる。
「ステーキ弁当は、三毛猫ノ御屋敷の中よ! 」
「あ、ありがとう。タトーさん! 」
一方、坤鴉峠から下ののお地蔵がある洞穴。
ここに、一人のモンスターが岩の上に座っていた。
黒い猿の体毛と黒い鴉の翼、白い山伏の服を着たモンスターである。
彼女は、ニコニコしながら盗んだステーキ弁当を開けようとしている。
「へへぇぇぇぇぇぇぇん♡ごちそう♡ごちそう♡」
山伏姿のモンスター娘は、木のふたをパカッと開けた。
「はぁ? なんだこれは? 」
何と、入っていたのは焼き魚の骨。
どうやら、ターゲットは弁当を盗むことを察していたようだ。
「くそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……今度こそ、盗んでやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
山伏姿のモンスター娘は、悔し涙を流しながら
一方、三毛猫ノ御屋敷。
囲炉裏がある木造の部屋の中で、タトーとナナレイは本物のステーキ弁当を食べ終えた。
「ごちそさま!! 」
「いやあぁ……ミノタウロスとパーンとプーカと鶏の肉のステーキ、どれも美味しかっよ。また食べてみたいね! 」
「確かに、四種類の肉の食べ比べが出来て美味しかったわ。明日から、限定メニューにしようかしら? 」
「め、メニューにする? 冗談でしょう? 」
「本気よ。アッシグロ牧場に来る前に魔導冷蔵庫を造ったから、一週間は販売出来るわよ」
「……………………」
ナナレイは、お客さんのことが心配になった。
ミノタウロス、パーン、プーカ。
魔法少女であるナナレイにとっては、どれも絶品だ。
しかし、人間の口には合うだろうか?
「タトーさん! 」
「ううん? 」
「ミノタウロス、パーン、プーカ。これらの肉は、本当に人間が食べて大丈夫なの? 」
タトーは、ナナレイの質問に素直に答えた。
「実は、五年前。あたしは、人間の精肉店で働いていたの? 」
「精肉店? 」
「そうよ。そこでは、家畜の肉とモンスターの肉が一緒に売っていたの」
「一緒に? 人間は、お腹を壊さなかったの? 」
「大体は大丈夫だったわ。人間の毒の処理の技術は、魔法少女に負けないくらい優秀なの」
「だから、モンスターと戦っていたのね」
「一応言っておくけれど、あたしがモンスターと戦うのはモンスターと戦いたいからじゃないから」
「はいはい」
昼食を終えたタトーは、黒い扉をガタッと開けた。
すると、目の前に何かが現れた。
「見つけたぞ! 」
「え!? 」
「え!? 」
何と、現れたのは、猿の体毛と鴉の翼がある山伏姿のモンスター娘。
「突然、現れて失礼ね! あなたは、一体誰なの? 」
「あたいは、トキトウゲ。悟りと鴉天狗のハーフ。
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