第3話

「だれ?」


メルちゃんはぼくに気づくといった。

鉄のような無機質な声で。


「おなじクラス?」


メルちゃんは貯水槽にいた。

貯水槽の影にとけこんでいた。


「それは?」


メルちゃんはぼくの手にしているタバコを見た。

電子タバコ。


「これは・・・」

ぼくはいいかけてやめる。

あいまいにほほえむ。


「どうしてここにいるの?」

ぼくはきいた。おろかな問いではないか?

それともあれはメルちゃんのセリフだったか?


おもいだせない。

かのじょの声も顔も。

くそっ。

頭のなかがグチャグチャだ。

こんなんじゃしあわせになれない。


「名前は?」

メルちゃんがきいた。


「ナイト」

とっさに答えてしまう。

そして後悔した。タバコをにぎりしめる。

ひどく後悔した。


「ナイト・・・」


心がズタズタだ。これは比喩じゃない。

(じゃあなんなんだ?)


「あはは」

メルちゃんはわらった。

かのじょの表情・声のトーンはつめたかった。


鉄のようだ、とぼくはおもった。

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