第2幕 リムネッタ
「また、明日…」
ぽつり、と少女はつぶやく。あっという間の出来事だった。長い真紅の髪を持つ快活な子…ルシアと別れて、リムネッタはしばらくその場に佇んでいた。ルシアを初めて見た瞬間…紅の長い髪に、ぱっちりとした目、きゅっと結ばれた口元…一瞬、その姿が女騎士・ヘレナと重なり、リムネッタは驚きで言葉を失ったのだった。
「また、明日…」
もう一度つぶやいて、その言葉の意味を確かめる。また会えるんだと思った時、ふわふわとした不思議な感覚がリムネッタの胸に少しずつ湧き上がってくるのを感じた。
「……」
少しの間、霧が晴れていくような感覚に身を委ねる。少しずつ現れていく感情が喜びだと気付いた時には、煌々とした一番星が東の空に輝いていた。
「…ただいま…」
町外れの大きな豪邸の扉を開け、リムネッタはゆっくりと入っていく。
「まぁ、リムネッタ様、どこへ行っていらしたんですか!?」
入り口から入ったリムネッタを、四十過ぎの使用人がすぐ見つけてリムネッタの元に駆け寄る。
「少し…お散歩」
リムネッタは、そのまま部屋へ戻ろうとする。
「そんな、一人で散歩だなんて…お待ちください、リムネッタ様…!」
引き止める使用人の声が聞こえた気がしたが、リムネッタはそのまま部屋へと向かったのだった。
ばさっと自分の身をベッドに投げ入れる。腕を額に当てると、少し熱っぽい気がした。
「ルシア…」
今日、初めて会った子だ。そもそも、今までは外にもあまり出たことが無かった。知り合いの同年代の少年少女は、パーティで顔を合わせるごくごく限られた人たちだけだった。
「明日も、会えるんだ…」
ただ、軽く自己紹介しただけの少女。初めて見る少女。それでも、甘いまどろみの世界に意識が落ちるまで、その少女の姿がまぶたの裏に焼きついて離れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます