第15話 星に願いを

春の夜長が終わり、初夏の訪れを告げる風が越後湯沢の街を優しく包んでいた。るんちゃんは、「気まぐれ卵」の店を閉めた後、久しぶりにひとりでのんびりと過ごす時間を持っていた。夜空には星がきらめき、静かな時間が流れていた。


この日、るんちゃんは特別なことを計画していた。地元の小学校で教えた温泉卵のレシピが子供たちに好評だったことから、彼らと一緒に「星空観測会」を開くことにした。目的は、自然の美しさと食の大切さを子供たちに伝えること。


観測会は、町の少し離れた丘で行われた。るんちゃんは、手作りの温泉卵と共に、地元の野菜や果物を使ったスナックを準備して、子供たちとその家族を迎えた。夕暮れ時、みんなで丘を登りながら、るんちゃんは自然に囲まれることの幸せを話した。


「星には、昔から人々が願い事をする習慣があるんだよ。今夜はみんなで星に願い事をしてみない?」るんちゃんの提案に、子供たちはワクワクしながら星空を見上げた。


夜空が完全に暗くなると、星々が輝きを増し、子供たちは一斉に願い事を始めた。るんちゃんも静かに星に願いを込めた。彼女の願いは、この町とその人々がこれからもずっと幸せであり続けることだった。


観測会が終わり、子供たちは星の話や宇宙の不思議についてもっと知りたいと興奮していた。るんちゃんは、彼らの好奇心が新しい何かを学び続ける原動力になることを願いながら、彼らを送り出した。


帰り道、るんちゃんは満天の星を背にして、自分がこの町でやってきたこと、これからやろうとしていることに、改めて意義を感じていた。星空の下で交わされた約束と願いが、彼女の心に新たな光を灯し続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る