第23怪
次の日、京子は学校に来た。当たり前の日常が始まる。この日、美玲たちは決意した。不登校になっていたルルカの学校の書類、それを渡す
「ここか、ルルカさんのお母さんの家」
「表向きここが住所なだけで、ルルカ本人はいないかも知れませんよ」
美玲と京子はアパートを訪ねるが誰も応対しなかった。
「やっぱり無理だったかな、本人に話を聞けるのが一番良かったけど」
「仕方ないですよ。妹の私だって全然話していないんですから」
美玲と京子はポストに書類だけ差し込んでアパートを後にした。二人が居なくなるのを見計らい、アパートの裏から人影が出てくる。ルルカだった。
「まさかアイツら、勘付いてる?」
その日の夜、美玲はルルカについて考え込んでいた。その為だろうか、前世の記憶がより鮮明に思い出させられる。
詩乃は梓馬の恋心に気づいていた。ただ知らないふりをして過ごす。何故なら詩乃は袂紳の妻になることが決まっているからだ。詩乃自身も望んでいた。そしてある日、梓馬は言ってしまう。
「私じゃ駄目だったのか……」
詩乃は困惑した。
「私は袂紳様をお慕いしています」
予想通りの答えに梓馬は笑った。
「あぁ、分かっている。分かっているよ。困らせてしまってすまない」
そういってお互い見つめ合う。沈黙が続いた。沈黙を切り裂いたのは真っ暗な闇だった。突如として詩乃、梓馬の前に現れた闇の存在、闇の切れ目、空間に突然夜が舞い降りたようだった。一瞬で魔の物だと分かる。不老不死の仙薬であった詩乃はよく狙われていた為、今回もそうなのだと思っていた。
「詩乃! 振り返らず逃げっ……」
魔の物は詩乃を追いかけず、梓馬を闇の中に引き摺り込んだ。
「梓馬様!」
「私は大丈夫だ、お前は……早く、逃げろ!」
そして梓馬の言いつけ通り、振り返らずに逃げた。
梓馬と共に襲撃に遭ったことを詩乃は袂紳に話した。その日は夜も更け、明日また調べることに決まった。しかし、次の日には梓馬は元通りだった。
「昨日がどうかしたか?」
詩乃は安堵した。二人とも無事だったと。しかし、この日から思いがけない悲劇が、あの惨劇が起こったのだ。
美玲はハッとして起き上がった。
(ルルカ、もしかして……いや、分からない。でも一つ分かった)
魔の物に襲われてから狂い始めたこと。
「これって……こんなのってあんまりでしょ」
美玲たちの認識では梓馬は、不老不死の仙薬に目が眩み、夫として邪魔だった袂紳を殺した。しかし詩乃は自害し、自身は完全な不老不死になることが出来ず今も生き延びている。そして完全な不老不死になる為、詩乃の生まれ変わりである美玲を狙っている。
(でも、違うかも……もし私の考えが合ってるなら、伝えなきゃ)
ーー共に今の時代に生まれ変わっているという、袂紳にーー
(でもその人が私みたいに前世の記憶があるかどうかまでは分からないんだよね)
翌日、美玲は学校で朝一番に部長を呼びつけた。
「と、言うわけで。私の推測が正しければ部長……いや、青崎純平くん。貴方こそが袂紳の生まれ変わりなのだ!」
ズバリと美玲が追求する。ヒューっと冷たい風が吹き、沈黙が流れる。
「ズバリその根拠は?」
「記憶の中での袂紳様と純平くんがそっくり! そして青崎の苗字であること」
「だけ?」
「だけ」
やはりまた冷たい風が吹く。美玲は最悪な結果を想像する。
(『全部知りません、勘違いです』ってなったら私は赤っ恥者だよ)
そんな美玲を見て部長は笑う。そして一言。
「そういうの信じたいお年頃だからね。さすが中学二年生!」
「違うって! 中二病じゃないし、本当だからね!」
美玲は恥ずかしくなり、捨て台詞のように推測を伝える。
「ようは梓馬様は何かに乗っ取られてる可能性があって『
そう伝えて美玲は全速力で校舎に戻っていく。その様子を見て部長は笑っていた。
「真っ正面から馬鹿なオカルト話みたいなの言いにくるかよ! あーあ、バレてら」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます